片道切符

人生で初めて買った片道切符で、この地方都市を出て、東京なんていう、なんでもあってなんにもないなんて言われる冷たい街に住むことになった。

こんな町、昔は嫌いだった。噂話に監視されるようなよくある田舎で、その割に都会ぶって主要駅の周りだけは仰々しく飾り立てていた。多分、私はこの町では落ちこぼれで、今後の話題作りのためだけに行った同窓会も、まるで小人になったような気持ちで、人様に踏みつけられないようにひっそりとオレンジを齧った。
仲間外れにあった中学校も、足繁く通った精神科も、半分トんだコールセンターも、騙された変な男の家も、全部この町にあるから、この町がもっと嫌いになった。
でも、人生は非常なもので、上京へのカウントダウンが始まる頃には、なんだか思い出だらけの場所になってしまっていた。母と一緒に、我が家の愛猫を貰ってきた保護施設、友人と、意識を朦朧とさせながら朝まで語り合った居酒屋、彼氏と行った謎のショッピングセンター、冷や汗をかきながら絞り出したお金を握りしめて通った古着屋。

こんなに愛しい町だったなら、東京になんて出なかったのに。懐かしさか、後悔か、私にはまだ分からない。

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