子どもの時間を思い出す味
子どもの頃、夏に喉を潤すものと言えば、麦茶か、たまに飲めるサイダーだった。
サイダーは、ペットボトルが主流の今と違って栓抜きで開ける瓶で、来客がある時や誕生日なと特別な日に飲むものだった。
だから冷蔵庫に冷やしてあるのを見つけると嬉しかったし、注ぐコップは決まってアデリアシリーズを使っていた。
当時使い慣れていたコップも今では我が家にも残っていなくて、「アデリアレトロ」として、シリーズが復刻され売られているのを知り、懐かしくて当時使っていたのと同じ柄のコップを最近ひとつ買い求めた。
最近、子どもの頃あったモノに、やたらと懐かしさを感じてしまう。
三ツ矢サイダーもまた然り…。
コンビニで復刻版を見かけると、シュワっとした、あの喉越しが懐かしくなって、つい飲みたくなる。
そうやって飲んでみても当時の味をハッキリと舌が覚えているわけではないのだけれど、ペットボトルの蓋を開けた時のプシュッと炭酸が弾ける音と、泡立つサイダーの香りと喉越しの爽やかさが、味覚では追体験しきれない思い出を、そっと連れてきてくれる。
サイダーは昔は近所の酒屋さんが1ケースを配達してくれていて、いつだったか配達のお兄さんの「王冠を地面に植えるとサイダーの木が生えるよ!」という他愛のない冗談を真に受けて、妹とワクワクしながら王冠を植えていたら、しばらくして母に見つかり「何しとうとね。」と、呆れて掘り返されたことも遠い日の夏の思い出の一つだ。
お酒は飲めないので、シュワっとした刺激が欲しい時には炭酸水で喉を潤す。
でもたまに甘いサイダーも飲みたくなって、シュワシュワの泡と共に子どもの時間を思い出してみたりしている。
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