四季-移ろいゆく季節の中の変わらぬ狂愛- 第3.5話(裏)
第3.5話(裏) 季節の変わり目
とあるワイドショウの収録後
〈#$%&~<>に関する考察〉
「教授、狂人が隠し切れてないです。なんですか、アレ」
「仕方ないだろう。こんなにも楽しい結論になったんだぞ? 殺人鬼が、二人とも別の殺人鬼に殺される…! 殺人鬼は勿論狂気に侵されていると思うが、その殺人鬼を殺した殺人鬼はさらなる狂人だと思わないかね」
「例えば、その殺された人たちの遺族とか?」
「そうであったとしても、殺人者を殺すことはさらなる狂気の上塗りだと考えるが、だが、この犯人はそういうものではない。彼ら二人が殺した、詰まるところの被害者は全く関係がないことが明らかになっている。と云うことは、彼らの遺族である可能性はごく低い。二人を同時に殺す必要などないのだから。殺人とは狂気だ。そして感情だ。人間が人間たる感情や、人間が動物たる感情ーーであるはずだ」
「はず、と云うことは違う、と云うことですね?」
「ふふ」と希築教授は笑う。それはYesを示すのだろう。
「どうせ教授がこんなに嬉しがっているんだから、どうしようもない犯人なんでしょう。…でも、教授。バラバラ殺人犯と食人鬼を研究対象にできなくて、こう…残念なんじゃないですか?」
いつもであれば、研究対象にできる人間を失ったら悔しがるものだが。
この二人を殺した犯人の方に興味を持っているのは分かるのだが、希築教授はどうも、この犯人に目星がついているように思える。
「さて、美咲くん。私は犯人を捕まえに行ってくるよ」
「えぇ? なんですかその探偵みたいなセリフ。教授らしくないなぁ。犯罪者なんて脳味噌を解剖して楽しむくらいしか価値がないって云ってたじゃないですか」
まさか正義のためではあるまい、と思うことすら美咲はしない。
希築教授に、正義などと云う概念は存在しないのだから。