四季-移ろいゆく季節の中の変わらぬ狂愛- 第2.5話(表)
第2.5話(表) 季節の変わり目
とあるワイドショウ
〈食人鬼に関する考察〉
帝都で起こった身の毛もよだつ食人事件について続報が入りました。
2028年6月21日に発見された白骨死体ですが、調査の結果、人が食いちぎった後があったそうです。
また、部位によっては煮込み、焼きなど調理された形跡もあったとのことです。
この時勢に、食人とは、考えにくいですが、犬や熊などの野生動物に襲われた可能性は限りなく低く、人間が調理した可能性が非常に高いとのことです。
現在、調査は続けられていますが犯人は未だ捕まっていません。
本日も、癲狂院に勤める希築 千乍教授に来ていただきました。
先月に引き続き、よろしくお願いします
「はい、よろしくお願いいたします」
一月と少しでまたこのような猟奇殺人が起こることは、日本皇国では至極珍しいと思うのですが、5月に身元が判明したバラバラ殺人と同じ犯人なのでしょうか。
または、似たような犯人なのでしょうか。
「確かに、日本皇国で猟奇殺人事件がこんなにも短期に起こることは非常に稀ですね。犯人は、多くの専門家が云うように同一犯ではない、と私も考えます。ただーー少数派ですが、バラバラ殺人の犯人と、この食人事件の犯人は、動機が似ている、と私も感じます」
と、云うと…?
「いえ、学者としてこんなことは云いたく無いのですが…現在確証自体はありません。ですが、バラバラ殺人犯と、食人犯。両方とも、憎いがために殺したわけではない、と感じるのです。今回の犯人にしても、食べることが目的とあまり思えないのです」
食べることが目的ではない…?
「ちょっと言い方は微妙ですが、美味しく食べるためではないと云いますか。食人の文化自体は、各所にあります。ですから、人間が人間を食べる時美味しいと感じる部位についてはほぼ結論が出ています。この犯人は、その美味しい部位を積極的に食べている感じはありません。もし、憎い相手を殺し、ついでだから食べよう、としたらそれこそ美味しい部位を食すでしょう。そうでないとすれば、きっとこれは美味しく食べることが目的の食人ではないと思います」
では、貧困から…?
「それにしては、ちゃんと調理されているのが気になります。煮込みなんて電気代がかかりますからね。焼くなら、そこらへんでライターを拾って枯れ木を集めればできますから」
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