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ホウレン草の恋人
今日は天気はどうでしょうね。
心配ごとは置いときましょうね。
コーヒーを淹れましたので。
つれづれに。
ふと20年前、何をしていたかなと、思い出そうとしてみています。
あんまりがんばっちゃうと息苦しくなっちゃうので(笑)
コーヒー飲む間ていどで。
ええと。
ちょうど、ズルズルと友人を頼って東京に来たころでしょうか。
仕事を手伝いながら、どうにか暮らし始めた
寝ぐらのアパートから、起き抜けで顔も洗わず
着っぱなしのトレーナーとジーパンで
フラフラと目覚まし代わりに外に出て
歩き回った散歩帰りの知らない通りの
ふと眼についたスーパーに入ったのです。
それがね、あなた。
そこはムーディーなライティングの、
いわゆる高級スーパーでございましたの。
もう初体験でございました。
野菜売り場のキャベツが私の知らない人みたいな価格。
なんだろう、朝、教室に入ったら
クラスメイト全員ドレスアップしてた、みたいな。
店内は空いていましたので
もう手ぶらで出られなくなり(笑)
唯一、友達になれそうな値段のホウレン草をカゴに入れ
冷や汗でぶわっとしながら
お会計を済ませ外に出た私の手には
英字新聞を着せてもらった1束のホウレン草。
明るい日差しの通りに無事に戻り、
ホッとしつつも何だかこう、
フワフワとした高揚感に包まれてですね。
そのままの気分でホウレン草の花束を抱いて
寝ぐらのアパートに帰り、
そっと、そうっと流しに寝かせて
ボーッとした良い気分で米を炊き、
丁重に味噌汁に入れて
机代わりの段ボールの上で食べました。
一度きりの思い出。
とても良い気分になれる思い出。
今日もただ、
無事に過ごせますように。
あなたにも。
では、また。