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新興宗教にハマらなかった経緯6
《急ブレーキと進路変更》
夏休みの終わり頃から、カルチャーセンターでは「合宿」の話が出始めた。
「ここに通っているみんなで3泊2日の合宿をするの。
研修所は久我山のとっても素敵な洋館なのよ〜。」
菅野さんはそう言っていたが、私は気が進まなかった。
3泊2日かあ、いつも課題に追われているんだけどな。
というわけだったので、タイミングが合わずズレにズレ、合宿は10月に入ることになった。
秋も徐々に深まりつつある頃、いよいよ来週、合宿だ。
久我山駅から近いのかな?
「久我山 研修所 洋館」で、インターネットのキーワード検索にかけてみた。
「!?」
検索結果の何番目かに「カルト被害者の会」なる団体のホームページが出てきた。
今までも宗教なのかなって思うこともあったし、時折調べて来たのに。
どうしてこのタイミングで検索が引っかかったの?
慌ててキーワードに「手相」を加えてリサーチしていく。
やはり、とある新興宗教の勧誘をされていることが判明した。
駅前で手相観やアンケート集めをして人を選び、それからビデオセンターに通わせる。私が通って来た道そのままだった。
勧誘の最後のステップが3日間の合宿になる。
合宿半ばで宗教ということが明かされ、入会するかを決めることになるが、その時には洗脳状態が仕上がっているのだという。
その宗教の教義も調べた。
「あなたとあなたのご先祖様、遡って人類は、乱れた男女関係を持ってしまった“原罪”があるから清めねばならない。」
「教祖が選んだ信者同士で結婚をし“原罪”のない子を産み、未来永劫、無罪の命を繋いでいく。」
などが特に印象深かった。
(というかめちゃくちゃ怖かった)
カルトだと揶揄する被害者、穏便に脱会した元信者、現行の熱心な信者、検索できる限り記事を調べた。
数ヶ月学んで来た甲斐あって宗教に偏見を持たないように調べたけど・・・いやいや、ちょっとこれは・・・!!?
菅野さんが男女関係に厳しく、昔は垢抜けていた容姿が野暮ったくなった理由が、よくわかった。
ああ、7ヶ月も通ったのだから、やっぱりショックだな・・・
やめるにあたり、一応、菅野さんに電話をかけた。
7ヶ月もお世話になったのだ。
せめて誠実にありたい。
「はいはい、なあに?」
「あの、久我山の研修所のことインターネットで検索したんです。
そしたら、ここの活動って宗教だったんですね・・・」
「・・・!」
「通うのやめます。」
「違うの、違うの!だって宗教を何も教えてなかったでしょ?」
「いえ、そうなんですけど、合宿でそうするんですよね。」
「インターネットの情報は不確かでしょ、嘘ばかりかもしれないでしょ。
きっと誤解があるから話しましょう!!」
「いえ・・・すいません。もう切りますね。」
なんて後味悪い。ちょっと罪悪感・・・。
でも、絶対にこれ以上関わるわけにいかない。
そのあとすぐに一回だけ、電話が折り返しかかって来たけど、無視した。
しつこく付きまとわられる事は一切なかった。
こうして、私の「宗教勧誘騒動」は完全に終了した。
その後の後日談としては、数ヶ月後に私を勧誘した白田さんと駅前で会った。
お互い静かに会釈をして去った。
本当に可愛い人だった。今、幸せだといいんだけど。
この出来事で身につけたものがある。
図らずもこの出来事で、胡散臭いものには、とても敏感になった。
同時に、豊かな体験をしたんだと感じている。
7ヶ月かけて目に見えない世界を受け入れる下地を入念に整えることができ、絶妙なタイミングで急ブレーキがかかって進路変更した。
危なっかしくて間一髪だけど、振り返ってみると導かれて守られていたように思えてならない。
私のスピリチュアルの道は、はじまったばかり。