3行日記 #177(押し葉、白と黒、ハイタッチ)
四月二十七日(土)、くもり
午前、某私立中学校のアフタースクールを手伝った。自分で染めた糸を使って織物を体験するワークショップで、先週の一回目に糸を染め、今日はできた糸を使って織る日だった。準備のために少し早めに教室で待っていると、やがて、この春に入学したばかりの一年生の女の子二人がやってきた。二人とも、手にビニール袋をさげている。何入ってるの、と訊くと、単子葉類です、という。見ると、青々とした稲のような草の頭が袋から飛び出している。単子葉類と双子葉類の押し葉をすれば、中間試験で四十点、追加されるという。ワークショップがはじまる。まず織物で使う糸をほぐしていると、みんな作業に夢中になり口数が少なくなった。簡易的な織り機に経糸を通して、その間に緯糸をくぐらせる。作業に慣れてくると、あとは単純作業のため、雑談する余裕もでてきた。話を聞いていると、ひとりは大阪から一時間以上かけて電車で通っているという。途中の地下鉄はぎゅうぎゅうの満員電車のときも多いという。私の中学時代と言えば、小学校からさほど距離の変わらない、田んぼの真ん中にあるようなところだったため、えらいちがうもんだなあ、と思った。二人とも、小学校の最後のほうはあまり学校に行くことが好きではなかったらしい。一年の間に担任が三回も変わり、授業中も私語が多く、学級崩壊していたらしい。今は楽しく学校に通えているらしい。よかったね。筆箱には、筆の先のような白い繊維がふさふさ拡がったアクセサリーがぶら下がっていた。
午後、一乗寺へ。いつもの喫茶店で読書。妄想。恵文社に寄る。夏葉社の新刊があった。
夕方、出町のほうへ歩いていると、少し先の駐車場から一台の車がこちらに近づいてくる。あることに気づき、運転手に声をかける。あのお、うしろ、開いてますよ。荷物を入れた後、ドアを締め忘れたようだ。
夜、妻の実家でいただく。鯛のムニエル、アスパラのベーコン巻き、焼かぼちゃ、豆腐、プリン、苺、パイン、キウイ。食べ終わったプリンの瓶をチャックに差し出すと、舌をのばして底のほうまできれいに舐めた。チャックの顔を見ていて気づいた。髭は右が白、左が黒だ。チャックの散歩、右へ、神社を歩いていると、樹の高いところから、ホッホウ、ホッホウ、と何かの鳴き声が聞こえた。なんだろう。アオバズクかなと思ってあとで調べてみると、アオバズクに間違いなさそうだった。今年は神社の樹にアオバズクが営巣するかもしれない。たのしみだ。東へ、ファミマを折れて、ぐるっと回って、JRの駅をかすめて、帰宅。帰りに、初めてお祖母ちゃんとハイタッチした。マリパを十ターン。妻にスターを奪われて、最後のボーナスポイントももらえず、三位に転落した。