3行日記(鍵がない、ブツの交換、時刻表の魔術師)
十二月十四日(木)、晴れのち小雨。
昼、わけあって家のなかに入れなくなってしまった。妻に事情を説明し、これから鍵をとりに行くねと連絡。すぐさま電車に乗って向かおうとした。だが、改札を通ろうとしたときに気づく。鍵だけじゃない、イコカも財布もない……。そういえば、と鞄のなかをまさぐり、奥に眠っていた紙幣を掘りおこして切符を購入。電車に飛び乗った。駅に●分に着くから待ちあわせしようね、と妻に連絡し、鍵を持ってきてもらうことにした。だが、メッセージを送信してから気づく。あ! 乗り換えるべき駅を通り過ぎているではないか。プチパニック。慌てて妻にメッセージを送り事情を説明すると、近くの駅まで持ってきてくれるという。ありがたくお願いし、目的の駅まで引き返した。妻が乗った電車が七分着でホームに入ってくる。一両目のドアが開く。妻が差し出したブツ(鍵)を受け取り、私からもブツ(お礼のエクレア)を渡してそそくさと交換。私は受け取った瞬間に同じく七分発の別の特急に乗り込み、妻は反対のホームに走り八分発の電車で職場に戻った。最寄り駅に十一分着。十五分からの会議に滑り込みセーフだった。電車を駆使したトリック。時刻表の魔術師。アリバイ成立。完全犯罪。帰宅した妻が一言。やらかすときは派手にやらかすな。
夜、鍋、洋梨。お礼に妻が少しでも好きなものをと、普通の鍋の趣向を変えて、キムチ鍋に。さらに練り物はうずらの玉子が入ったものにした。チャックの散歩、小雨がぱらついてきたので、ガード下を往復した。きょうはありがとう。助け合っていこうね。