3行日記(Bycyclette、脱走、銀杏選手権)
十一月十七日(金)、雨のち晴れ。
昼、大きなマンションの一階に店舗がいくつか集まっている。左から、自転車屋、はんこ兼印刷屋、八百屋、呉服屋、インドカレー屋。自転車の店は地元の住民を相手にする一見どこにでもありそうな店に見えるが、名前が清水自転車ならぬ、La Bycyclette Shimizuだった。洋食店やパン屋では店名をフランス語にしているところをたまに見かけるが、自転車屋は初めて見た。その矜持はどんなところにあるのだろうか。疎水沿いの桜の葉がすっかり色づき落ちかけている。落ちる直前は、ほとんどの葉っぱの先が真下を向いていることに気づいた。風でからからと揺れていた。
夕方、一乗寺の卓球教室の壁に張り紙がある。猫を探しています! はなちゃん、三毛猫の女の子、六月に修学院の家から脱走したらしい。どんな情報でもご連絡ください。
夜、クリームシチュー、柿。きょうは第二回銀杏選手権が開かれた。殻のついた銀杏を茶封筒に入れてレンジにかけると、ポンッ!と破裂して、殻と薄皮が破れてなかから黄色い実が顔をだし、食べやすくなるのだが、粘り強いものは破裂せずに持ちこたえる。一回戦、六百ワットで一ラウンド一分の闘いがはじまった。ポン!ポン!ポン!次々と脱落者が現れた。茶封筒を開けると、次々とほくほくした実がでてきた。塩をつけて食べる。一回戦を勝ち抜いた精鋭は九粒だった。満を持して再び茶封筒に包まれて、いざ決戦の舞台へ。二回戦は先ほどよりも長い一ラウンド一分半だ。スタートのボタンが押された。ポンッ!一粒脱落、ポンッ、ポッ、ポン!立て続けにさらに三粒が脱落。最終的に二粒が耐え忍び、グランドチャンピオン大会への切符を手にした。