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3行日記 #201(銀行の妖精、めばちこ、しけり番長)

七月五日(金)、晴れ

最高気温が三十五度を超えた、暑い。

また日記をさぼっていたので、最近の詰め合わせで。

夜にチャックの散歩に向かうときに、最近、よく見かける男がいる。その男はいつも、商店街の入口にある某銀行の入口の階段に座っている。少し休んでいる、という感じではなく、少なくとも一時間は座り続けているように見える。帰宅する前に一息つく、サードプレイスというやつか。最初に見たとき、その男は緑色のTシャツを着ていた。その色が、目の前にある銀行のキーカラーだったので、私と妻はその男を、銀行の妖精が具象化した姿ではないかと考えた。何度かその男を見かけたあと、今週のなかばに同じ場所を通ると、その階段に誰かが座っていたのだが、なにか様子がおかしい。いつも座っている男は、痩せ型の華奢な男だったのだが、その日、座っていたのは、現場での仕事を終えたばかりのような筋肉隆々の男だったのだ。いかつくなってる、と妻が言う。妻はその姿を、妖精の変化した姿だと受け取ったようだ。その男を見やりながら通り過ぎ、チャックの散歩を終えて再び前を通ると、今度は、いつもの痩せ型の姿に戻っていた。どうやら、薬の効き目が切れたらしい。

夜、昨日の残りのカレー、とうもろこしを初めて茹でた。皮を一枚残しておくのがポイントらしい。塩味が効いていた。ごはんを食べていると、妻が私の顔を覗き込んでくる。そういえば、右目のまぶたが重いような違和感があった。鏡を見てみると、うっすら赤く染まりほんのり腫れていた。これがメバチコというやつだろうか。お菓子置き場で妻ががさごそやっている。あぁ!と叫び声。とっさに、湿気た南部せんべいが見つかったのだと勘づいた。妻の顔が強ばる。しけたらもとに戻らないよ。熱帯夜がつづき寝不足気味なので、チャックの散歩は休ませてもらった。これからドキュメント72時間、待機。

#3行日記

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