3行日記(往来、足取り軽く、時報)
十一月十四日(火)、晴れ。
夕方、喫茶店で窓辺の席に座る。正面には商店街を行き交う人が見える。たくさんの人の往来にまじって、一匹の中型犬が、トコトコと足取り軽く歩いてゆく。紐にはつながれておらず、飼い主の姿もない。柱の足元でひょいと片足をあげて小便をしている。そこへ、中年男性が駆け寄っていく。ああ、あの人が飼い主かな、と様子を見ていると、犬に駆け寄って頭をなでているだけで紐をつなぐ気配はない。すると、さらに遅れておばあちゃんが早足で近づいてきた。どうやら、おばあちゃんが飼い主で、勝手に先に行ってしまった犬に追いつけなくなったところに、男性が手を貸して犬を引き止めておいた、そんな具合みたいだ。犬はおばあちゃんの紐につながれて去っていった。
夜、生姜焼き、わらび餅。チャックの散歩、北の駅をぐるりと回って南北に長いコースだった。居間の目立つところに鳩時計が掛けられた。ポッポー、ポッポー、と一時間おきに鳴るたびに、びくっとする。しばらくは慣れそうにない。
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