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大瑠璃

 ぴぴぺーぽー、ぴぃ――と鳴く鳥が、新緑の頃、やってくるのは知っていた。文字では抑揚を伝えるのは難しいが、どうにも特徴的なリズムなので、姿形は見えねども、そのおかしな鳴き声そのままに「今年も、ぴぴぺーぽー、ぴぃが来たねえ」などと、言っていたのだ。

 それがオオルリだった。最近の図鑑にはQRコードがついており、子供がそこで見つけてきたのだ。

 と、同時に蘇ったのが、数年前の記憶だった。

 庭にぽつんと見つけた、真っ青な物体。子供が玩具でも放り出したのかと思い、近づくと、どうやら鳥の形をしている。けれど、物体は微動だにせず、やはり自然のものとは思えない、プラスチックのような青なので、鳥の玩具などあったかと首を捻りながら、さらに近づいたところ、ぱっとそれは飛び立った。

 あれが「ぴぴぺーぽー、ぴぃ」の正体だったのだ。東南アジアからの長旅を終え、辿り着いた日本の山で歌う青。

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黒澤伊織@小説
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