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【随筆/まくらのそうし】 天魚(アメゴ)

 漁業権さえ買っておけば、川でアメゴも釣れるのである。

 アメゴというのは、関東で言うヤマメのようなものであり、美味い川魚の一つである。

 これがとても臆病で、人の気配がすればまるで釣れないというものであるが、至極簡単だったのは、夕立の中の釣り。

 雨が降れば虫が落ち、ミミズが落ちると知っているのか、アメゴの警戒心も特に緩み、よく釣れるようである。

 清流と言えば、アユというもので、それも川に潜れば見かけるが、釣るには特別な仕掛けが要るので、することもなく、一度友釣りの針が掛かり、おとりアユを手に入れたというだけである。

 釣りというのは、好きという人は本当に好きで、好きなだけならいいものの、組合が育てたその稚アユ、放したその日に百、二百、これは大漁大漁と、釣ってしまうのだから仕方がない。

 大きくなるまで、増えるまで、待てないものかと思いはするが、待てれば川も豊かだろう。

 魚程度、湧いて出ると思っているのか、アメゴも山まで釣りに来るなら、こちらの釣り竿は倉庫の隅、来ない出番を待っている。

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黒澤伊織@小説
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