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【エッセイ】 網戸の小蜘蛛

 一センチにも満たない、コガネグモの幼体が小さな網を張っている。大人たちと同じように、きちんと足をバッテンの形に揃えて、仲良く二匹、並んでいるのだ。

 これが馬鹿な二匹である。なぜなら、その巣は網戸に張られ、それもいつのまにその目をくぐり抜けたのか、網戸の内側にいるのである。ガラス戸と網戸に挟まれて、餌の虫など来るはずもない、その場所に。

 一体、いつになったら気づくものやら、気づけばきっと出てくだろう、まぁ、気づかないままそこで死んでも、人には関わりのないことだ――と見守る麗らかな日、なぜだろう、二匹のクモは日に日に大きく、元気に巣を張り続けているが、網戸には意味があるのだと信じ続ける人としては、ああまったく馬鹿で可哀想なクモたちよ、と、まるでその日、そのとき見つけたように、小さくつぶやくだけである。

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黒澤伊織@小説
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