アメニティ泥棒、今回の成果。
ごきげんよう。
俺はアメニティ泥棒だ。
アメニティ泥棒というのはホテルや旅館などの宿泊施設に行った際、そこに置いてある『ご自由にお取りくださいアメニティ』を根こそぎ持ち帰ってくる人間のことを指す。
俺はアメニティ泥棒の家系に生まれ、幼き頃からアメニティ泥棒として育てられた。
言わばアメニティ泥棒3世なのだ。
今回の獲物はホテルバリアン。
噂によれば、ここのアメニティは普通のラブホと比べてかなり豊富らしい。
これは胸が躍るぜ。
まずは堂々とフロントから潜入する。
アメニティ泥棒は人から白い目で見られることも多いがギリギリ犯罪ではないので隠れる必要はない。
チェックインを済まし、部屋に行く前にまずはフロントから持っていけるものを確認する。
流石はバリアン。
噂通り、お宝の山だ。
まず目の前に広がっていたのはドリンクバー。
全て無料な上にジュースだけではなく、タピオカやワイン等も飲めるようだ。
アメニティ泥棒と名乗ってはいるが、なにもアメニティだけを盗る訳ではない。
無料で取れるものは根こそぎ持っていくのが俺の流儀なのである。
まずは白ワインをいただくことにした。
そこから左へ行くと、今度はスイーツだ。
これも無料で盗り放題である。
こんなセキュリティでは俺の様なアメニティ泥棒が大勢推し押せればひとたまりも無いだろうな。
キウイ杏仁、キャラメルケーキ、マンゴーアブリコケーキ、ごぼうサラダ、ポテトサラダをいただいた。
もう持ちきれなくなったので、一旦部屋に置きに行くことにしよう。
そして風呂を溜めている間に、もう一度フロントへ戻ってきた。
次の獲物は軽食コーナー。
パンが袋に入って置いてあった。
これは嬉しい。家でも食べられるぞ。
クロワッサン、北海道ミルク、レーズンパンの3種だ。
とりあえず一つずつ手に持った。
その横にはラブホ特有の入浴剤コーナーがあった。
入浴剤とバスソルトも持ち帰れなくはないが、俺の家はユニットバスなので湯船を貯める事はない。
ここは部屋のお風呂に入れる分だけにしておいた。
さらにぐるっと回ると今度はアメニティコーナーだ。
部屋に必要なアメニティは備え付けられているが、こちらは使う人はどうぞという感じの物のようだ。
アイマスク、ヘアオイル×2、ヨーグルトパック、オールインワンオイル、ワックス、美容クリームをいただいた。
また両手に持ちきれなくなったので部屋に戻る。
お風呂が溜まったので、部屋のアメニティを物色する前にまずは色々と済ませた。
色々とヤッた後、時計を見るともうチェックアウトまで残り40分程だった。
これはまずい。
まだ持ってきたスイーツやパンを食べていなかったので食べてみる。
正直あまり期待していなかったが、普通に美味しい。
特にパンはかなりふわふわで俺好みだ。
スイーツと飲み物を取りにもう一往復しよう。
今度はタピオカバナナミルクを作ってみることにした。
タピオカブームはいつの間にか終焉を迎えていたのでタピオカを飲んだのは久しぶりだが、味は変わらず美味しかった。
また十数年後には流行るのだろうか。
部屋に戻り、タバコを吸いながら甘味を楽しんでいると、かなり時間が迫ってきた。
そろそろ本気を出すとしよう。
まずは洗面所へ向かう。
やはり洗面所にはかなりのアメニティが置いてあった。
化粧水みたいなスキンケア系のやつが4点、マウスウォッシュと使い捨て歯ブラシが2つずつ、髭剃りとシェービンクリーム、綿棒、クレンジングシート、ヘアバンド、ヘアゴム、使い捨てのヘアブラシやコンタクト保存液&ケースまであった。
かなり豪華な上に、質も良い。
アメニティ泥棒歴の長い俺からしても、特に歯ブラシはかなり良い。
安いホテルだと歯磨き粉が歯ブラシ自体に練り込まれているタイプのものも多いが、これはちゃんと小さい歯磨き粉が付いているタイプのやつだ。
俺は不敵な笑みを浮かべながら、すべてカバンに詰め込む。
冷蔵庫に入っている水も忘れてはいけない。
下に無料のドリンクバーがあるとはいえ、やはり無料の水は置いてあるようだ。
ペットボトル2本をカバンに詰め込む。
ホテルの部屋は大体暖かいお茶を入れられるようになっている。
アメニティ泥棒初心者には忘れられがちだが、そこに紅茶やカフェラテ、コーヒーなどの素が置いてあるので必ず持っていこう。
バリアンオリジナルティーが3つ、お茶とコーヒーの素を2つ、ミルクカフェラテとキャラメルマキアートの素があった。
コーヒーはあまり飲まないが、家に友達が来た時にでも振る舞ってみるとしよう。
全てカバンに詰めこんだ。
かなりカバンがパンパンになった。
もう持っていけるものはないかと最終確認をしていると、見落としに気づいた。
そう、ここはラブホテルなのだ。
ベッドの横にあった箱からゴムを見つけた。
ゴムは自分で持ってきていたので見落とすところであった。
それもカバンに入れると、あとはチェックアウトだけだ。
チェックアウト間際、フロントでまたパンを3つほどカバンに入れて任務完了だ。
バリアンはアメニティ泥棒からすると格好の獲物だった。
今回の成果はかなりのものだ。
アメニティ類は
アイマスク、ヘアオイル×2、ヨーグルトパック、オールインワンオイル、ワックス、美容クリーム、スキンケア系のやつ×4、マウスウォッシュ×2、使い捨て歯ブラシ×2、髭剃り、シェービンクリーム、綿棒、クレンジングシート、ヘアバンド、ヘアゴム、使い捨てのヘアブラシ、コンタクト保存液&ケース、バリアンオリジナルティー×3、お茶とコーヒーの素×2、ミルクカフェラテの素、キャラメルマキアートの素、コンドーム
で、計31点。
食べ物類は
白ワイン、デトックスウォーター、タピオカバナナミルク、キウイ杏仁、キャラメルケーキ、マンゴーアブリコケーキ、ごぼうサラダ、ポテトサラダ、北海道ミルクパン×4、クロワッサン、レーズンパン
で、計14点。
合計45点も無料で得ることに成功した。
反省点は、フロントのアメニティを一回しか取りにいかなかったところだ。
両手が塞がって何往復もするのが面倒になってしまったが、一流のアメニティ泥棒になるためには手間を惜しんでいてはいけないだろう。
まだまだ、祖父の様な一流のアメニティ泥棒にはほど遠いようだ。
絶対に世界一のアメニティ泥棒になってやる。
そう胸に誓い、また新たなホテルへと脚を進める。
俺の伝説はまだ始まったばかりなのであった。
おしまい。