現代詩フォーラムに投稿した詩:9

【その女、不足につき】

木枯らしが冬を引き連れて
醜い獣を呼び覚ます

魚の腹は濡れた月
涙は水底真珠となりて
ころころ転がり心と成った
夜更けに泣いて震えてる

か細い枝に三日月刺して
滴る孤独の蜜舐める
虫の羽音が煩くて
ひたひた裸足で過ぎ去りし
亡霊達のひたむきな
置き手紙だけ咀嚼する

甘美な夢を常備して
真昼の月は氷漬け
静かに沈む言葉を割って
乾いた暖炉に点火した

孕んだ闇は重かろう
子どもの幻想描き抱き
逃げる素振りを潰す空白
ママゴト遊びの密月期間で
3秒間で三拍子
切り刻んだ約束の数
蝋燭さえも甘く馨った

木枯らしが声を凍結してゆく
獣は仄かに打ち震え
咆哮ひとつ身籠って
見事に鋭さ削ぎ落とす
(これも生きてゆく為さ)
獣は皮を嘗め尽くし
滑らかな皮膚を産み出した

美しい を冒涜する には
あまりに足りないものが多過ぎる。

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