治療モダリティ多様化時代の到来が本格化
2019年2月20日
厚生労働省の薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会で、日本では歴史的とも言える承認があった。
個人的には、かなり興奮してしまいました!ついに、来たかこの時がと。
CAR-Tと遺伝子治療薬が承認されたんです!
<歴史的な2品目の概要>
1)ノバルティスファーマが承認申請していた
国内初のCAR-T(キムリア)が細胞医薬品として承認
2)阪大発ベンチャーのアンジェスが承認申請していた、
国内初の遺伝子治療薬(コラテジェン)が「条件及び期限付き」で承認
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<モダリティとは>
これら2品目の承認がなぜ歴史的なのかと言うと、新しい治療技術(モダリティ)が使われている点にある。CAR(キメラ抗原受容体)治療と遺伝子治療は本邦初のモダリティ。
これまでの代表的なモダリティとしては、
・飲み薬に代表される低分子医薬品
・抗体やタンパク質製剤などの生物製剤
・iPS細胞や幹細胞などによる再生医療・細胞治療
核酸医薬、ペプチドなどの中分子医薬品などがある。
2018年6月6日 ライフサイエンス委員会 創薬研究戦略作業部会(第12回)
ここで紹介された「多様化する創薬」でもモダリティに言及されている
全体像を知るには分かりやすい資料なのでご興味があればどうぞ〜
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n2068_02.pdf
新しい治療技術を用いることによって、これまで治療が困難だった疾患に
対して効果を発揮するとの期待が大きい。
<キムリアとコラテジェンの技術概要>
キムリアは、血液がんの患者のT細胞上に血液がん細胞を認識(CD19を認識)するように特別に設計した受容体(キメラ抗原受容体:CAR)を強制的に発現した細胞治療薬である。その効果は非常に高いとされ、世界的に期待も高い。
コラテジェンは、遺伝子を運ぶベクター(プラスミド)に血管新生作用を持つHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子を組み込み、潰瘍の虚血部位に注射することで、細胞内で遺伝子が発現、血管新生が促され血流を確保する遺伝子治療薬である。遺伝子治療薬は「究極の医療」と期待されており、従来治療の難しかった病気を治すと期待されている。
<キムリアとコラテジェンの懸念点>
両医薬品の最大の懸念点は高額な医療費となる点である。特にキムリアは5千万円近くなる超高額医薬品です。
キムリアは免疫細胞を活用して白血病を治療する効果の高いバイオ新薬だ。新たな免疫療法「CAR―T(カーティ)細胞」を用いる。ノバルティスファーマが国内で初めて厚労省に承認申請した。5月にも保険適用される見通しだ。日本でも5千万円近い価格がつくとみられる。
厚労省は2018年10月の社会保障審議会医療保険部会で、キムリアの市場規模を100億~200億円程度とする予測を示した。過去には年間の販売額が1千億円を超えたC型肝炎薬もあり、キムリア単体で見れば、医療保険制度を揺るがすほどではない。それでも注目が集まるのは今後、高額なバイオ新薬が相次いで保険適用される可能性があるためだ。
コラテジェンは、
血管再生で承認されたのは、東証マザーズに上場するアンジェスが開発した「コラテジェン」。重症の動脈硬化で血管がつまった足に、新たな血管を作る遺伝子を注射して治療する。糖尿病患者などに多く、重症になると足の切断もある閉塞性動脈硬化症などが対象だ。患者は国内で年約15万人いるとされる。
正式承認を経て薬価は5月にも決まる。複数の関係者によると、治療費は1人200万~300万円になるよう設定されるとの見方がある。
患者は少数でも高い薬価が期待でき、各国政府も早期承認制度などで開発を後押ししている。従来15年ほどかかっていた新薬発売までの期間が、遺伝子治療薬なら数年に短縮でき、製薬企業のリスクを抑えると言われている。
ただ、薬価が高額のため社会保障費の増大につながり、財政を圧迫するとの懸念も指摘されている。
<最後に>
今後は、薬価の話題が中心になるとは思いますが、医師や患者さんにとっては治療の選択肢が増える良い機会です。
アカデミアや製薬各社が様々なサイエンスやテクノロジーを駆使し、これまで世の中になかった新しい治療技術が開発され、こうして世に出てくることは本当にすごいことだと思います。
もちろん、製薬各社は厳正な経済性評価などはしてはいますが、患者を救うことを念頭に置いていないと多くの時間や労力を費やして、上市までは頑張れないと思う。
アカデミアや製薬企業の皆さんには、これからもよろしくお願いしますと言いたい!
<参考までに過去の記事>
CAR-Tと遺伝子治療薬の記事の順で記載
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