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コロナウイルスに対抗する血漿分画製剤開発の国際的な提携が進められています

世界各国の血漿分画製剤に強みをもつ企業の提携を通じCOVID-19による重篤な合併症治療薬となり得るノーブランドの抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の開発が前進しています。

いよいよという感じです。
4月末にnoteを書いたのですが、血漿分画製剤(グロブリン製剤)がコロナウイルスによる症状に効果があることを期待しています。
その詳細は以下のリンクからどうぞ。


さて、前進し始めたコロナウイルス感染患者の血漿からグロブリン(抗体)を精製するこの製剤への取組みはほぼ世界規模で進められていて、
本日2020年5月9日の時点で9か国から10社が参加しています。

この世界的な血漿分画製剤開発への参加企業は以下になります。
@以下は本社所在地、()は参加が明らかになった日

武田薬品工業@日本(2020/4/6)
CSLベーリング@アメリカ(2020/4/6)
Biotest AG@ドイツ(2020/4/6)
Bio Products Laboratory@イギリス(2020/4/6)
LFB@フランス(2020/4/6)
Octapharma@スイス(2020/4/6)
ADMA Biologics@アメリカ(2020/5/8)
BioPharma@ウクライナ(2020/5/8)
GC Pharma@韓国(2020/5/8)
Sanquin@オランダ(2020/5/8)

上記参加企業名は武田薬品工業のプレスリリースより抜粋
https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2020/20200406-8147/
https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2020/20200508-8152/


個人的にこの血漿分画製剤には思い入れがあるのと、こうしたこれまで経験していない未知のウイルス感染への防御に関しては、様々な抗体を含むポリクロ―ナル抗体製剤は非常に有用だと考えるので記事をまとめています。

<モノクロ―ナル抗体とポリクロ―ナル抗体の違いのおさらい>

モノクローナル抗体
ピンポイント攻撃できる一種類の抗体のみからなる単一(モノ)ツールであり、病態における標的が明確である場合にクリアカットな効果を発揮しますが、標的が不明確である場合には効力を発揮できません。

ポリクロ―ナル抗体絨毯爆撃できる多くの抗体からなる複合(ポリ)ツールであり、ピンポイント攻撃はほぼ不可能であるものの、標的が不明確であって多くの抗体を含むため何かしらの効果を発揮することができます。

コロナ患者血液を用いた血漿分画製剤がコロナウイルス感染患者に理論上有効だと思いますが、通常の健常人の献血由来の血漿分画製剤、正確にはグロブリン製剤もコロナウイルスによる諸症状に対して有効なのではないかと思っています。

日本ではまだ症例がないとのことですが、英国、米国、フランス、イタリア、スペインなどの欧米各国において、川崎病に類似した症状を呈する小児例が相次いで報告され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が指摘されています。

<川崎病>
 1967年に発見された乳幼児が罹患する全身性の血管炎症候群。発熱、両側眼球結膜の充血、口唇・口腔所見(口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤)、発疹、四肢末端の変化(手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑、指先からの膜様落屑)、非化膿性頸部リンパ節腫脹の6つが主要症状とされ、5症状以上を呈する場合に川崎病と診断される。
 その原因はいまだに明らかになっておらず、細菌あるいはウイルス感染、スーパー抗原(一部の細菌やウイルスが産生する極めて強力なT細胞活性化蛋白質で、多量の炎症性サイトカインを放出させる)、自己抗原などを原因とする様々な説がある。

この川崎病の話を記載した理由は、この記事の主題のグロブリン製剤のほとんどが川崎病を適応症としているからです。
ポリクロ―ナルであるとはある意味多様性を内包しているため、未知のものに対して対応できる可能性を秘めているとも言えるので、臨床試験の結果を期待して注視していこうと思っています。

今回のコロナウイルスの経験を踏まえて、緊急かつ危機的な状況下における様々な医薬品や医療機器の開発が進められる国際的な枠組みや国内法の整備も進めて欲しいなと思います。

今回の各社合同の取組みは、世界的危機に対しての行動として素晴らしい活動だと思います。この裏で動いている人たちの話をいつか聞いてみたいものです。


一応、以下にこれまでの流れに即した記事をまとめておきます。
武田薬品の対コロナウイルス医薬品開発に関する記事は以下です。
新しいものが上に来るように並べてあります。

2021年4月3日(土)

武田薬品工業は2日、米CSLベーリングなどと開発する新型コロナウイルス感染症の治療薬の臨床試験(治験)について設定した目標を達成できなかったと発表した。回復した患者の血液由来の成分からつくる血液製剤になり、重症化リスクのある患者向けで治療効果が期待されていた。


2020年12月23日(水)

武田薬品工業などが開発を進める新型コロナウイルス感染症治療薬の最終段階の臨床試験(治験)が23日までに日本で始まった。回復した患者の血液から「抗体」を取り出してつくる血液製剤で、免疫力を高める効果が期待される。治験は世界規模で進めており、一部の治験結果は2021年3月末までに出る見通しだ。


2020年10月9日(金)

武田薬品工業は9日、世界の製薬13社で開発する新型コロナウイルス感染症治療薬について、最終段階の臨床試験(治験)を始めたと発表した。新型コロナ感染症から回復した患者の血液成分を使う血液製剤で、治験は米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が主導する。結果は年内にも出る見通しだ。


2020年7月10日(金)

武田薬品工業で国内の医療用医薬品事業トップを務める岩崎真人取締役は10日、日本経済新聞社の取材に応じた。開発中の新型コロナウイルス感染症の治療薬について、7~8月に日本を含むグローバルで臨床試験(治験)に入る方針を示した。日本での承認の見通しは「明言できないが今年度内は厳しい」としており、2021年度の実用化を目指す。
武田は新型コロナ感染症から回復した患者から採取した血液由来の成分でつくる治療薬を開発している。19年に買収したアイルランド製薬大手シャイアーが持つ技術を活用する。開発の軸足は米国に置き、治験は日米欧で実施する。


2020年5月14日(木)

<治験開始が1か月遅くなっているものの進捗している>
武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は14日、日本経済新聞社の取材に応じ、開発している新型コロナウイルス感染症の治療薬(血漿分画製剤)について「(進捗次第では)年内にも患者に使ってもらえる」と述べ、早期の実用化に意欲を示した。臨床試験(治験)に使う薬の生産を始めており、7月にも米国や欧州、日本で治験に入る。ワクチン開発のプロジェクトに関わる方針も明らかにした。
 治験に使う薬は武田の米ジョージア州の工場で製造。また治験は米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が協力する。武田はコロナ治療薬開発の軸足を米国に置くが、「米国には研究開発を支援するメカニズムが備わっている」とした。また、治験については「結果は9月ごろに出る。(欧米などで)迅速申請制度が使えれば年内にも患者に使ってもらえる。日本政府とも話し合っている」と述べた。


2020年5月8日(金)

武田薬品工業は8日、米CSLベーリングなどと開発中の新型コロナウイルス感染症の治療薬に関し、6月にも臨床試験(治験)を始めると発表した。治療薬はヒトの血液由来のもので武田とCSLベーリングはこの分野の世界大手だ。開発プロジェクトには新たに4社の製薬会社が参加し、血液収集など開発を加速する。


2020年4月6日(月)

武田薬品工業は6日、開発中の新型コロナウイルスの治療薬に関し、米製薬会社のCSLベーリングを含む6社との提携を発表。武田とCSLベーリングはこの分野の世界大手。両社が組むことで血液の収集など開発を加速させる。
提携にはこのほか英国やドイツ、スイスなどの製薬会社が参加。いずれもヒトの血液を採取し、治療薬をつくる「血漿(けっしょう)分画製剤」を得意とする。それぞれヒトの血液を集める拠点を持っており、連携して治療薬開発を進める。


2020年3月4日(水)

新型コロナウイルスに対する治療薬を開発すると発表した。新規開発を表明したのは大手製薬の中で武田薬品が初めてとなる。
新型コロナから回復した患者の血液を活用し、免疫機能を高める治療薬をつくる。すでに米国やアジア、欧州の規制当局と調整を進めているという。早期に治験を始める計画で、9カ月から18カ月程度で治験を終える計画だ。
また新薬開発のほか、すでに販売済みの製品や開発候補品の中に新型コロナに有効性があるものがないか探索する。


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黒坂宗久(黒坂図書館 館長)
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