「知っておきたいあの話vol.2」を終えて〜日本の医療の不思議〜
隣のアノ人ってどんな仕事をしているの?という素朴な疑問から始まったこの企画。急遽一人開催になったものの、無事2回目の開催も終えることができました。
今回30枚のチケットが完売(5席追加も完売)、当日参加者が32名と9割以上の参加率でした。参加して下さって本当にありがたかったです。
参加して下さった皆様、ありがとうございました!
<登壇者のご紹介>
某外資系戦略コンサルティングファームでヘルスケア部門のコンサルタントとして勤務している肥塚さんに日本の医療についてお話頂きます。
今回は日本の医療の特徴、特に世界的にも珍しいヘルスケアシステムの基礎知識をおさらいしながら、アフターコロナに起こりうる事象の見立てにも触れます。登壇者の肥塚さんは、国、自治体、保険者、病院、製薬企業等、ヘルスケア分野で様々な角度からコンサルティングを行ってきた経験があります。自分達が住んでいる国の特徴を改めて知り、これまでの『当たり前』を見つめ直す機会になるかと思います。
今回のイベント概要は以下のイベントサイトに詳しくありますので、ご覧になって貰えると嬉しいです!
今回の発表内容もShunさん(以下のtweet参照)が素晴らしいまとめをすぐにTweetして頂いていたので、今回も内容を再び流用させて貰います。
今回もShunさんマジにありがとうございます!
− 日本人が当たり前のように享受している国民皆保険制度が実装されている先進国はどれだけあるの...?というクイズから始まりましたが、アメリカ以外の先進国はほとんど達成しているのですね。
− 税方式のイギリスが国民皆保険制度を導入したのが1946年で戦後すぐというのも驚きで、日本は社会保険方式では一番乗りの1961年
− 米国は保険でカバーされていない人口が4-5000万人で低所得者が医療にアクセスするハードルが非常に高い
− 税方式の英国やカナダは医療機関が公営で国民の自己負担はゼロ。ただしかかりつけ医がゲートキーパーとなり闇雲に医療資源を消費しないように医療機関で医療を受ける人数は絞っているトリアージ制度
− 日本の良いところは、捻挫とか歯槽膿漏とか病気といえないものまでも保険適応されているところ
− 日本の医療の課題は民営であるが故に・・・
・多くの患者の診療報酬をもらいたい、そんな競争原理が働くため、同一地域内で過剰な医療設備(MRI等)を抱えてしまう。重複診療や長期的な入院なども課題。
・国が診療報酬を決めているので、その中で経営を成り立たせるために医療従事者にしわ寄せが...
− 民間で経営されているが故に、有事の際に(今回のコロナのような)国や自治体の権限によってうまく維持・機能させるための戦略的な施策が打てないのもまた課題。
− 日本の医療のこれから
・今までの当たり前(対面診療神話など)は壊されていくのではないか
・初診オンライン診療が可能になった
・Apple Watch等で収集されるヘルスケアデータの帰属は誰のもの?
・医療情報が有効活用される形に変化していくだろう
さて、今回はご紹介できるスライドはタイトルスライドのみですが、
こんなスライドから始まりました!
発表内容の概要は、先ほどのShunさんにのTweetが詳しいのでそこはお任せするとして、私が一番ぐっと来たのは、冒頭の部分と最後のスライドにあった言葉です。
ヘルスケアシステムとは、「健康を守るための社会的な仕組み」である
ヘルスプロモーションとは、「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし、改善することができるようにするプロセス」
日本独特のヘルスケアシステムの維持には進化が不可欠であり、個人は自らの健康とそれにまつわる情報を守る社会になる
日本の医療システム全体に課題があることは明白なので、それを是正することは理論上可能であり、打ち手もあり、実施も可能であることが理解できた点がとても大きかったです。
ヘルスケアシステムという制度設計とヘルスプロモーションという個人の健康意識という観点で、時代に合わせてマクロとミクロの両面から弛まぬ改革が必要なのだなと分かりました。
現代にあっては、AIや深層学習といったIT全般の技術を利用して医療行為のさらなる効率化と同時に、個人が自身の医療情報をしっかりと把握し、管理する世界がやってきそうだなというのも見えました。
今後この分野についてのアンテナが私の中に立ったので、今後のマクロな動向もミクロな動向もウォッチしてきたいなと思っています。
さて、最後に医療情報とITはとても相性が良い分野だと思っています。そんな折に、2020年10月19日(今回の講座の前日)にGoogleの特許が記事になっています。
この特許では、カルテ情報からデータ抽出し、そのデータを解釈して、患者診断や健康リスクに関する初見を提示する「未来の健康予測システム」についての特許であるとのことです。
単純にこの記事を読んで思うのは、日本の医師不足を補うために医師の負担を軽減しつつ、医療の質を上げるためのこうしたツール開発は不可欠だと言うことですね。新しい流れになりつつあるのは確かだと思っています。
ただ、講座当日にGoogleが米国独禁法違反で提訴されたとあり、新しいツールの開発や利用の流れに影響がないといいのですが。。。
以下のような内容があるのが少し気になりますが、裁判は数年に及ぶこともあるので、様子見しかいまのところないかもしれません。。。
訴訟が決着するまでは数年単位の長い時間がかかる可能性がある。グーグルが敗訴したり和解したりすれば、事業の見直しや事業分割を求められる恐れもある。
ITとPharmaの関わりについて、2018年と2019年の時点で記事を書いていますので、興味があればお読みください。(以下の記事は2019年のもの)
最後に、アンケート内容をお届けして終わります。
<アンケートでのご意見・ご感想からのご紹介(抜粋)>
*当日の23時現在11人からの回答があり、そこから抜粋しています。
・学びが多いイベントでした。予約をして受診まで5日待たなければならないカナダに衝撃を受けました。医療費無料は良い制度だと思っていましたがそのような事実があったのだと知りました。各国の比較の表はとてもわかりやすかったです。少子高齢化による医療費の財政圧迫や医師不足など、難しい問題を抱えている日本ですがデータの活用などでどのように変わっていくのか興味深いです。
・今回のお話、とても面白かったです!また皆様からの質問がいろいろ鋭くて刺激的だと思いました。肥塚さんの経歴や専門分野からの知見が非常に面白い一方で、今後の展開となると「ここからは私見が多くなります」という、その部分の発送や議論の自由度も面白かったです。
・日本の医療制度を他国と比べることで、知っているようで知らなかったことがたくさんあると気付きました。日本に住んでいることで恵まれている部分も、課題も多くあることを改めて認識しました。
・知らないことを知る機会、それがライブで参加出来、その分野で最前線のかたのお話を聞けて、質問も出来る。本当に大満足でした。
参加して下さった方々、ありがとうござました!
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次回の「知っておきたいあの話vol.2」は、11月25日水曜日20時から!
実はまだ登壇者との調整をしていて、詳しい内容を公開できていないのですが、金融関連の話になります。これも私が知りたい話です、ご期待下さい!
参加される方は上記リンクよりお申込下さいませ!
実は既に5名申込があるというのが凄い!(主催者談)
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