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”老いる”こと。
うちには、3年半前にアダプトしたコーディというシニア犬がいる。
里親募集では8歳という触れ込みだったが、アダプト後、動物病院でX線検査をした際、「この骨の状態だと、もっと歳でしょうね。」と言われた。
つまり、年齢詐称犬である。
でも、現実として、10歳を越えた犬は引き取り手がぐんと減る。その上、当時、コーディは、皮膚病で顔以外の毛は禿げ状態。過去に事故に遭ったと思われ、軽いびっこ持ち。どう考えても、貰い手が殺到しそうにはない。
きっと、コーディをボランティアでケアした獣医師が、苦肉の策で、「この幼い顔は8歳だ。」とでもこじつけ、カルテに8歳と書いたに違いない。
というわけで、我が家にきた時点で、多分、10歳越えのシニア犬だったと思われる。
騙されたと怒りを感じるかって?
いやいや、全然。だって、英語で言う”ホワイトライ(良い嘘)”でしょ。実際、自分だって、10歳以上の犬をアダプトする心の準備があったかと言うとそんなことはない。騙されたお陰で、私たちはコーディに出逢えたわけで、どちらかといえば、感謝の気持ちの方が強いぐらいである。
我が家に来てから、コーディはどんどん若返った。皮膚病も治り、絹の様な美しい毛が生えてきた。嬉しかった。コーディも、嬉しそうに笑う日が増えた。でも、
我が家にきて2周年が過ぎた頃、コーディのびっこが酷くなった。
我が家にきて3周年が来る前に、コーディの背中は丸くなった。
最近、狭いところに入って、出れなくなることが増えた。
コーディって、幾つなんだろう?と思う。
コーディの前に飼っていたロングヘアーチワワのミルキーは、13歳と10ヶ月で病気が原因で、天国へ旅立っていった。最後の最後まで足腰はしっかりしており、痴呆もなかった。
多分ヨーキーとシュナウザーのミックスと言われているコーディは、ミルキーより一回り大きいけど、小型犬。同じ様に歳を取るとすると、きっと、ミルキーの年齢を越えているのかな、と想像する。そして、それはミルキーは、本格的に老いる前に逝ってしまったことを意味する。
コーディは、老いるぐらいまで長生きしてくれているんだ。
そう思うと、老犬のお世話ができる喜びを感じる。そして、コーディを通じて、”老い”と向き合う時間が増えた。
新型コロナ禍になり、4月に予定していた日本里帰りが中止となった。1年に一回は顔を見せていた母親には、いつ会えるんだろう。
新型コロナウィルスは、高齢者がかかると重症化するケースが高いと言われ、高齢者を守る為、”会わない”方法が奨励されている。私も、電話で母に、「お母さんを守る為なんだから。」と、むやみに人に会わない様に伝えた。近所に住む孫達にも、高齢者施設の係員にも、不要不急以外は接触しない事と強く言った。
そんな日々が4ヶ月を過ぎた頃、ビデオ電話越しの母の様子に違和感を感じた。
コーディの行動に違和感を感じた時と同じ違和感だ。
獣医さんに、コーディの最近の行動を相談した際、「それは痴呆なのか、痴呆の始まりかもしれませんね。」と言われた。そして、「痴呆は一度、発症すると治ることはありません。でも、進行を遅らす事はできるとも言われています。」とも。
痴呆の進行を遅らす方法、鍵。
それは、”外界からの刺激”だそうだ。
NYCロックダウン以降、コーディの散歩の回数、時間は格段減った。
犬にも新型コロナが感染するかもと思い、他の犬のおしっこの匂いを嗅がせない様にした。
シニア犬コーディの為、コーディの命を守る為。
でも、果たして、それは本当にコーディの命を守っている行為なのであろうか?
命の意味が、寿命(長さ)だけなら、確かに”YES”かもしれない。でも、”命”は長さだけじゃないよね。そこには、”魂”があるのだから。
Quality of life (生活の質)
私は自分が、がんになり、この言葉の意味を、頻繁に、考える様になった。
コーディのクオリティオブライフは何だろう?
コーディのお散歩時間を増やそう。お友達のおしっこの匂いを嗅がそう。でも、おしっこを舐めるのは注意しよう。帰宅したら、足の裏と体全体を拭こう。たくさん、触って、たくさん、話しかけよう。
コーディが生きてる時間を豊かにしよう。終わりがくるまで。終わりが来るのだから。
老母のクォリティオブライフは何だろう?
母には、週1回のビデオ電話だけじゃなく、LINEのチャットを教えよう。3蜜は避けて、でも、天気が良ければ熱中症に気をつけての外出を勧めよう。手洗い、うがい、マメにしてね、と伝えよう。そして、
必ず、逢いに行くから、それまで元気で、呆けんなよと、刺激的な言葉を何度も送ろう。