ラビリンス〜魔王の迷宮〜アドベンチャーゲームで遊ぶ vol.3 “STONE WALLS”
「いざ冒険の旅へ!」
はじめに
今回からいよいよ冒険の旅に出発です。
これ以降の物語はゴブリンキングであるくろぽちの完全オリジナルストーリーとなります。なんと開けてびっくり、この本の各ページにびっしりと書かれているのは物語ではなく、場面の状況と地図と各種データだけだったのです。各ページの物語はそれらを下地としてゴブリンキングが作り上げて語っていくという性質の本でした。だからもしどなたかがこの本を購入して同じ場面に辿り着いても同じ物語にはならないでしょう。何度遊んでも、同じ場面に辿り着いても、決して同じ冒険にはならないということの正体はここにあったんですね。
よって、これ以降の物語は本の情報を土台にくろぽちキングの言葉で綴られたオリジナル創作物になります。だからこれからの物語がそのまま本に書かれている冒険だとは思わないで下さい。本の情報だけでなく映画の記憶をエッセンスにしたくろぽち版の冒険としてお楽しみ下さいね。
さてさて、まずは冒険者2人が出会って共に旅をするという流れを作らないといけないようですが…。
それでは
『ラビリンス〜ポンタとレディペッパの冒険〜』
はじまりはじまり。
第1層 STONE WALLS
気がつくと、ラビリンスを見下ろす丘の上に立っていました。眼下には高くそびえ立つ強固な石の壁に周囲を囲まれた巨大なラビリンスの姿が広がっています。
ゴブリンキングに奪われた大切な物を取り戻す為にはあの網の目のように入り組んだ不可能に思えるほどの広大な迷路を抜けて迷路の中心にあるゴブリンシティへと辿り着かなければなりません。制限時間は13時間。
迷っている暇はありません。諦めるか、迷宮へ入って行くか。
答えはひとつです。
「さあ行くのよ、足さん」
THE GATEKEEPERS 門番
坂を降りていくとラビリンスを取り囲む高い石の壁の前に着きました。
見える範囲の壁のどこにも扉は見当たりません。その代わりに、右側の壁のそばには太い角と鋭い牙の生えた巨大な生き物が座り込んでおりました。長い体毛は苔に覆われてところどころ緑がかっています。
そしてその左隣の壁には老人のような顔をした小男が座ってパイプをふかしていました。ドワーフです。一仕事終えて休んでいるのでしょう。
壁の前の広場には石で作られた長方形の貯水地があり、水が満ちていました。
それ以外、ここには何もありません。
さあ、どうしますか?
古の騎士レディペッパは奪われた大切な米俵を返して貰いにラビリンスへやって来ました。
「お米ならまた買って来るから」と主人は言いましたが、米一粒にも7人の神様がいるというではありませんか。一粒たりとも無駄にできません。全てペッパのお腹に入るべきです。しかも米俵です。何故あるのかわかりませんが普段は家にあるものではないのでペッパにとっては夢のような宝物でした。スーパーで買ってくるいつもの袋に入ったお米とは訳が違うのです。諦めるわけにはいきません。どうあっても返して貰わねばなりません。
そうしてラビリンスに来たものの探してみてもインターフォンらしき物がなく、ノックをする扉もなく、レディペッパは困ってしまいました。
壁のそばに何やら知らない生き物がいますが人見知りのペッパに話しかける勇気などありません。
同じ頃、ひとりの人間がラビリンスにやって来ました。名前はポンタです。
彼女は間違って廃品回収に出してしまった大切な家族のアルバムを取り返しに来たのです。廃品回収業者に聞いたところ、ゴブリンキングが引き取って行ったと言うではありませんか。大切な家族の写真がゴブリンキングの手にあるなんて落ち着きませんし、何よりも一生懸命アルバムを作ってくれた父親を悲しませるわけにはいきません。勇気を出してこの広大な迷宮へと入る決心をしたのでした。
そうして辿り着いた壁の前には見慣れない大きな獣と、ドワーフと、黒い犬がおりました。
レディペッパは主人と同じ種族の人間がやって来たので声をかけてみました。
「何してるの」
「ゴブリンキングに会いに来たの」
ポンタも見慣れた犬の姿のペッパに声をかけられてホッとして返事をしました。
「ペッパも。でもインターフォンがないんだよ」
「インターフォンはないと思う。一緒に入り口を探してみようか」
こうして2人は共に扉を探してゴブリンキングに会いに行く事にしたのでした。
ポンタも面倒事は出来るだけ避けたいタイプの人間でした。そこにいる角の生えた生き物とドワーフにはなるべく話しかけたくないと思いました。
「壁を手でなぞりながら入り口を探そうと思う」
彼女の行動は映画『ラビリンス〜魔王の迷宮〜』を観ていたら納得の行動だと思います。目で見える物が全てではないのです。しかしこれで見つかる保証はありません。壁もどこまでも続いており、果てが見えません。
レディペッパは入り口を探していたら疲れて喉が渇いてきたので一旦広場まで戻って貯水池の水を飲もうと覗き込みました。
「ねえ、何か落ちてるよ」
もちろん拾うか拾わないかは選択次第です。
ポンタとレディペッパは拾うことにしました。
サイコロを振ります。
ポンタは白い旗を入手した!
「ただの布だよね?どうすりゃいいのよ」
じゃあペッパも挑戦してみましょうか。
6フィートの木製ポールを入手した!
「これでなんとかして壁登れるかな?」
調べてみたら6フィートは1.829メートルとのことでした。壁はもっと高いはずなので棒高跳びみたいなことをしてもきっと無理です。
拾ったゴミを前にしばし困惑するふたり。
「ああなるほど。これ白い旗とポールで、完全に旗だったんだね」
「ほんとだ!」
サイコロの偶然の組み合わせで出来た完成形にゴブリンキングもびっくりよ。
誰かがここに捨てた旗だったようです。
「とりあえず持って行こうか。ポールは大きいから私が持った方がいいよね」
「じゃあペッパはその白い旗をマントみたいにしよ」
とりあえず装備しました。
が、まだ入り口は見つかっていません。
「もう少し手でなぞりながら探してみる」
粘るねぇ…。
この人見知りペアはどうあっても目の前にわかりやすくいる角のある獣やドワーフに話しかける気がないようです。迷っても人に道を聞けないタイプ。こんなんでこの先ラビリンス内でやっていけるのでしょうか。迷いまくると思いますが。
「あれ?ねえ、ここんところボコってなってない?」
はい、バレました。秘密の扉です。
本来ならばドワーフたちと会話してそれぞれが隠している扉を見つけるはずなのですが、この扉は彼らの隠している扉を選ばなかった場合にのみ教えて貰える秘密の扉でした。それをこの人見知りたちは自力で見つけやがりました。ここで発見させるかどうかはゴブリンキング次第ですが、見つけちゃったのなら仕方ありません。通ることを許可しましょう。
こうしてふたりは扉を開けて、様々な生き物が蠢くラビリンスの内部へと入っていきました。
ラビリンスの第一層STONE WALLS編の始まりです。
つづく
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ゴブリンキングの日記
まさか本に具体的な物語が書いてないとは思わなかった…。
用意されている舞台を冒険者にどう伝えるか全くの自由な上に解決方法も書かれてないからゴブリンキングにもどうしていいのかわからないなんて!
舞台に配置されたドワーフたちに一切話しかけようとしないふたりをドキドキしながら見守る時間よ…。話しかけてさえくれれば彼らの言葉で誘導出来たのに、そのチャンスすら与えられない。
ペッパは性格的に絶対に怪しい生き物には話しかけないと思ったからあの動きで仕方ないとして、人間ポンタまで同じタイプだったとは。なかなか話しかけないものだからドワーフたちに誘導を期待するのは無理。あと何かあるとしたら貯水池?と思ったけど、ペッパに貯水池の水を飲ませてアイテムを発見させたものの入手したアイテムが何の役にも立たなくて、もう「ラビリンスに入れませんでした。ちゃんちゃん」で終わるかと思った。
壁を越えさせる方法やドアを見つけさせる方法が書いてないのでゴブリンキングも「どうやってラビリンス内に入って貰えばいいの…」と悩む始末。ストーリーテラーなのに物語の先が読めないって斬新ね。
サイコロが決めた貯水池からのアイテム同士の組み合わせでポンタが違和感なく立派な旗の姿を作りあげた時は楽しかった。きっとこういう発想力、想像力がこのゲームの楽しみのひとつでありテーマなんだろうと思う。
まあとにかくなんとか地図を見てボコっとした扉を見つけてくれて良かった。
昨年のクリスマスプレゼントに貰った「古びた風の面白い紙」に何を描こうかとずっと考えていたけれど、今回の地図とか描くのにぴったりじゃない?消しゴムがかけられない紙なので下書きなしで描かなくちゃいけないのが辛いけど、ラビリンスの冒険のお供にぴったりなので今後も場面説明や地図に使おうと思う。