身に着ける?身に付ける?どっちが正解?
朝のコピー短歌(2019.11.29)
身につける 知識・衣服は着けるはず
付けるも正解 いつからだろう
「つける」にはいろんな漢字がある。
基本となるのは「付ける」。
多くつかわれているのが「付ける」。
ただ、知識教養などを見につける場合は、ずっと「身に着ける」だと思っていたし、そう書いてきたし、そう赤字を入れてきた。
昨日、とある企業の社内報を文字校正していて、
ふと、ほんとうにこれでいいのかと調べ直してみたら、
なんと、最近は「付ける」も多く使われていて、
学習指導要綱でも「身に付ける」としているとか。
そんな話は聞いていない!(笑)
早速手元にある辞書のなかでも、以外と新しめのものを引っ張す。
「新明解国語辞典 第六版(2004年2月10日 第五刷)」の解説——ご存じの方も多いと思うが、この辞書の解説はちょっとユニーク——によると、
つ・ける【付ける】(他下一)
① 何かを他から移してきたり生じさせたりして、そこに存在させる。
「胸にブローチを——/レンズにフィルターを——/手袋を——/屋根の上に覆いを——/△元気(力)を——薬/△作法(早起きの習慣)を身に——/ウメが花(実)を——/家計簿を——/」
② その人を助ける役割を担うものとして身近に置く。
「病人に付き添いを——/被告人に国選弁護人を——/部下を付けて海外に出張させる」
③ そのものの1部としてそこに加える。
「住宅手当(予算)を——/巻末に索引を——」
④ 必要な操作をすることによって、意図した通りの状態にする。
「マッチでストーブに火を——/電気(ガス・クーラー・テレビ)を——/電話で彼に連絡を——」
⑤ 数値や名称などとの間に対応関係が認められる状態にする。
「△値段(成績)を——/生まれた子供に名前を——」
⑥ 責任のある地位や立場にふさわしい人を置く。
「新人女優を主役に——/民間人を大臣の座に——/三着に付けてゴールインする」
⑦ 見失わないようにあとを追う。
「あとを付けたが、うまくまかれた/犯人を——」
⑧ [連歌・俳諧で]前の句に不測不離の関係を持つ句を詠む。
表記
① の「手袋をつける」は「着ける」とも書く。④の一部は「点ける」とも書く。⑥は、「地位につける」は「就ける」、「王位につける」は「即ける」とも書く。
「広辞苑 第五版」——最新版は第七版——もひいてみると、
約一段半も書かれている「つける」の項目の最後にこう書いてある。
到着・着席・着用などの場合に「着」、就任・就労などでは「就」、即位には「即」を使う。
なんと、ここでも、もともと「着」の字が使われている場所とか衣類にかかわる言葉にかぎって「つける」でも「着ける」を使うと規定している。
知識教養、技術などはいつから「着ける」から「付ける」になったのだろうか。
まだ、どちらが正しいというわけでもなく、
ちょうど変わっていく途中のようなところもありそうで。
そういうときはひらがなで書くにかぎる(笑)。
今回、調べてみて、辞書も何年かごとに新しいものに買いかえた方がよさそうだ。
もちろんパソコンのATOKの辞書機能も。
学生時代につかった辞書を
いつまでも思い出といっしょにめくっている場合ではない。
こんなことを書いていて、ふと竹内まりやの歌の歌詞を思い出した。
「September」
作詞は松本隆さん、作曲は林哲司さん。
♪借りていたディクショナリー明日返すわ
ラブという言葉だけ 切り抜いた跡
それがグッド・バイ グッド・バイ〜♪
いま思えば、ストーカーっぽくもありちょっと恐いけど、
イタズラ心というか、もし気づいたら・・・という仕込み具合はなんとも秀逸。
こんなこと、もうたぶん、誰もしないんだろうなあ(笑)。