【ネタバレ感想】さよなら、ティラノ
前二作を見たのなら、もちろんこの映画も見るしかない!
ということで、感想を書き留めていこうと思います。
以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。
この映画は、王道ストーリーのロードムービー、といった感じで、前二作とは作画もストーリーもかなり異なった印象の映画でした。
作中、とにかくキャラが楽しげに動き、表情も豊かで見ているだけでも楽しかったのですが、緊迫したシーンもたくさんあり、ハラハラドキドキしながら見ることができました。
ただの王道ストーリー、というわけではなく、主人公のプノンとティラノは、重い過去を抱えているもの同士で、旅の中で自分の内面と向き合って辛い過去を乗り越えていきます。そして、そのトラウマを乗り越えるきっかけとなったのは、お互いの存在でした。
プノンは最初、肉を食べないティラノに自分を守ってもらって、天国に辿り着こうとしていました。ですが、自分を守ってもらうための関係は、いつのまにか本当の友情へと移り変わっていきます。この関係性の描き方が本当に丁寧で、この映画を見終わるころには、プノンとティラノの関係性は見ている側にとっても、簡単に言葉では表せないような、かけがえのないものになっていたことと思います。
最後のシーンでは、自分を犠牲にプノンたちを守ったティラノと、ティラノとの別れを泣きながら悲しむプノンが描かれます。
旅の中で生まれた確かな友情、そして、どちらも大切な家族や友達を失くした痛みを味わっているからこそ、プノンのために命を懸け、ティラノとの別れを悲しむことができる。王道ながらも涙を誘うシーンでした。
ですが、自分はタイトルからティラノとの別れがあることは察しがついていたので、その先の展開に何かあるのではないかという雑念が頭を取り巻いてしまい、もちろん感動はしたのですが、このシーンで泣くことができず、そのままスタッフロールまでいってしまい、あれっ、何かあると思ってたら終わっちゃってた!となってしまいました(泣)
これは完全に自分のせいですね…他のレビューではこのシーンで泣いたという人がほとんどなのに…
いろんな先入観や憶測のせいで泣けるはずのシーンで泣くことができず、ちょっと後悔していたのですが、見終わってしばらくしてからじわじわと最後のシーンの良さが伝わってきて、もう一度軽く見返して、よりこの映画の理解を深めることができました。
友人ハートの仇討ちと、プノンたちを守るために命を懸けてゴルゴを道連れにしたティラノからは、もう二度と大切な友達を失いたくないという気持ちが伝わってきます。一方、ゴルゴによって母や弟をなくしたのに、さらにティラノまでも失ってしまったプノンの心境は、とても苦しかっただろうなと、最後のシーンから、二匹の思いを深く感じ取れました。
自分たちの天国を見つける、という夢は、ティラノが生きているうちに叶えることはできなかったものの、背びれの形見が、ハートからティラノへ、ティラノからプノンへと、血は繋がっていなくとも、生きた証がしっかりと受け継がれていて、ティラノの、どこにいても俺たちはずっとずっと一緒だ、という言葉から、ティラノはプノンの心の中で生き続けているんだなと思いました。
そして、ティラノの思いを胸に秘め、プノンは自分たちの天国を探しに旅立ちます。
言葉にできない良さがたくさん詰まった、儚くも温かい映画でした。