思い出を綴る1/初対面
先日私の相棒が旅立った。享年16歳と10カ月。
これほどかと思うほど悲しみが押し寄せて来る日も来る日も彼のことを思い出しては涙がこみ上げる。私ももう良い年である。彼との日々が少しでも鮮明なうちにここに書き留めておこう思う。
若いことからアレルギー持ちであった彼はお腹は毛が抜け肌色をしていたが、柔らかい黒い毛とグリーンの瞳が美しいイケメンだ。ある医者に言わせると、エジプシャンの血を引いているのではとのことだ。
彼が私の家に来たのは、2007年9月。出産ラッシュの8月に生まれたと推測している。
私の家は田畑が数キロ先まで見渡せる自然豊かな場所にあるのだが、その日同居人が犬の散歩から帰ると土手に何かを置いて立ち去る人影を見たと言う。夜になりどうにも気になって同居人に声をかけ、私たちは、彼女が見たという土手に向かった。
車のライトで照らして目を凝らし10分ほど探すも何かが動く様子はなかった。生き物ではなかったのではと自分たちを納得させてその場を立ち去ろうとした時、探していたのとは反対側の斜面から細い泣き声が聞こえた。手に持っていた懐中電灯を声のする方向に向けると手のひらほどにも満たない小さな彼がこちらに向かって来るのが見えた。まだ覚えたてなのかふらつきながら懸命に歩く彼の後ろからは、さらに一人二人と兄弟が続く。私は3人を両手で抱えるように抱き上げ、車に乗りこんだ。
余談であるが家までの車中、兄弟たちが少し震えてジッとしている中、彼だけは豪快と手足を動かし私の手をすり抜け腿の上に落下。さらにぐんぐん進み足下へぽとり。とにかく出会った時から豪快な性格をしていたと思う。