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こうして日常を取り戻していく
7月18日、J1リーグが再開した。
ワールドカップによる約2ヶ月の中断期間。多くのサポーターたちはワールドカップを楽しみつつも、この時を心待ちにしていた。
サンフレッチェ広島の試合前には西日本7月豪雨で亡くなられた方へ黙祷が捧げられた。いつもなら両チームのサポーターから熱を帯びた声援が響くピッチに、30秒の沈黙が訪れた。
選手、集まったサポーター、遠くから中継を見る人。哀悼の意を捧げる人も、自分自身を奮起させる人も、勇気を与えようと誓う人も。それぞれの立場でそれぞれに想う、特別な時間。それを見て今回起きた被害の大きさを改めて実感した。
豪雨被害の直後、サンフレッチェ広島はホームで行う天皇杯の試合を延期した。同様に広島東洋カープも阪神3連戦を中止にしている。
スポーツの興行をやっている場合ではなかった。交通網は寸断され、物資の供給もおぼつかない。選手自身も「野球・サッカーの試合をしている場合なのか」「それが被災された方に必要なのか」と苦悩したと聞く。
それでも豪雨から約1週間が経ち、大きな傷跡は残りながらも徐々に復興に向けて動き始めた。その中で昨日の試合は行われた。試合前には募金活動が行われ、試合後にはチーム全員が「がんばろう 広島」のシャツを着てメッセージを届けた。
プロスポーツの試合が行われたところで、街の瓦礫がなくなる訳でも、崩れた道路が直る訳でもない。しかし、広島の人たちにとってサンフレやカープの試合を観て、「勝った負けた」と、「今日のここは良かった良くなかった」と語らうことが日常。駅前でタクシーに乗れば「今日はいけんねぇ」と開口一番に試合状況を伝えてくるのが日常なんだと。
土砂が撤去できていない地域もいまだに数多くあり、交通網が完全に復旧するには1年以上の歳月がかかると言われている。日常を取り戻すのは遠く未来の話で、失ってしまったものには取り戻せないものも多くある。それでも好きなスポーツを観て、歓びや悔しさを感じ、人と人が話し、繋がっている姿は、力強く見えた。
「観ている人に勇気を与えられて良かった」と文字だけで読むにはありきたりに見える言葉も、実際に昨日の試合を観ていると「大丈夫」という勇気を授けられた気持ちになる。
広島という街に人々から愛されるプロスポーツがあって良かった。そして全ての人が心から楽しめる日が1日でも早く訪れてほしいと思う。
再興を願う、再開の一戦だった。
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