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米津玄師「KICKBACK」は若者のアンセム

チェンソーマン!チェンソーマン!

私はチェンソーマンが好きだ。
アニメ化が決まったときは本当に嬉しかった。
しかも製作委員会方式でなく、MAPPAと集英社の制作ということで
規制もないし自由な表現がなされるとのことだ。

OPやばくない?

めっちゃ良かった。今までにないカオスっぷりで、新しいもの好きの私の感性に超ヒットした。
映像はMAPPAだし。劇場版じゃん。
しかし何より曲がいい。ストーリーの解像度高すぎる。
米津玄師も好きだし、King Gnuも好きな私には最高だった。
リピート確定。ずっと聞いていた。

あれ、なんか歌詞チェンソーマンの内容だけじゃなくない?

以下歌詞

1番
努力未来ABEAUTIFULSTAR
ランドリー今日はがら空きでラッキーデイ
かったりい油汚れもこれでバイバイ
誰だ誰だ頭の中呼びかける声は
あれが欲しいこれが欲しいと歌っている
幸せになりたい 楽して生きていたい
この手に掴みたい あなたのその胸の中

ハッピーで埋め尽くしてレストインピースまで行こうぜ
いつか見た地獄もいいところ 愛をばら撒いて
アイラブユー貶してくれ 全部奪ってくれマイハニー
努力未来 A BEAUTIFUL STAR
なんか忘れちゃってんだ

2番
4443で外れる炭酸水
ハングリーこじらせて吐きそうな人生
「止まない雨はない」より先にその傘をくれよ
あれが欲しい これが欲しい すべて欲しい ただ虚しい
幸せになりたい楽して生きていたい
全部滅茶苦茶にしたい 何もかも消し去りたい
あなたのその胸の中

ラッキーで埋め尽くしてレストインピースまで行こうぜ
良い子だけ迎える天国じゃ どうも生きらんない
アイラブユー貶して奪って笑ってくれマイハニー
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR
なんか忘れちゃってんだ

ハッピーラッキーこんにちはベイビー
(ハッピーラッキーこんにちはベイビー)
良い子でいたい そりゃつまらない
(あなたの未来 そりゃつまらない)
ハッピーラッキーこんにちはベイビーソースイート
(ハッピーラッキーこんにちはベイビーソースイート)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR
なんかすごいいい感じ

あれ、これ今の若者たちの歌やん

MVで露骨に

特に語るはMVの内容
基本の流れとしては、筋トレに励む米津玄師の前に現れるイケメン(常田大希)が颯爽と米津玄師を上回るムーブをかましていく、という内容だ。

それに対抗して努力を重ねていき、一時的に上回ったりするのだが、イケメンはそれを全く意に介さない。(しかも上回ってもハリボテ)

いきなり荒野を駆け出してみたり、叫んでみたり、車に轢かれたり、なんやかんやあって、またトレーニングルームへ戻ってくる。

最後米津玄師がイケメンに語りかけるシーンで監視カメラの映像に切り替わるのだが、そこにいるのは一人空間に語りかける米津玄師。

という全体的にカオスな雰囲気なPVだが、最後はホラーテイストで終わる。

虚空に語りかける

チェンソーマンの主題歌で、チェンソーマンのストーリーや主人公の境遇にもマッチした素晴らしい曲。米津玄師と常田大希のタッグということで、期待を裏切らない最高の出来栄えと言えるだろう。

以下考察

努力未来 A BEAUTIFUL STAR

↑のワンフレーズ、曲中で何度も繰り返される。じつはこれ1997年のモーニング娘。の楽曲歌詞をサンプリングされている。努力が未来をつくり、美しい星となることを是とした中々にマッチョな内容だ。
チェンソーマンが1997年を舞台にしていることから選ばれたと言われているが、当時の時代背景を如実に表す歌詞といえる。

今回のKICKBACKに関しては、その歌詞が全く別の方向に向いていることがわかる。2022年現在ではこれが当てはまらないのだ。
努力しても何をしても未来がない、若者たちの絶望的な現状を皮肉っているように聞こえる。
MVでは米津玄師が筋トレに励んでいる、がかなりハードワークをしている様に見える。無理な努力をしているようにしか見えない。

1番

ランドリー今日はがら空きでラッキーデイ
今日は=いつも混んでいる。社会的ポストに空きがないため順番待ちをしている状態。少しずつ空きが増えてきていた(団塊世代の引退)
かったりい油汚れもこれでバイバイ
かったりい油汚れ=古い風習、伝統・バイアス。
それらとバイバイするのだろう。

誰だ誰だ頭の中呼びかける声は
これは育つ過程で浴びてきた洗脳の結果だと思う。
成長や成功を期待され、無意識に植え付けられた欲望を原動力にして育てられた人たちの悲しい悲鳴だ。
誰から呼びかけられているか分からないというのがミソ。社会がそう言っているから、どこからともなく聞こえてくる、というのがよく分かる秀逸な歌詞。
あれが欲しいこれが欲しいと歌っている
自分が欲しいわけでもない。
誰かが呼びかけている。欲しがっているけど、何がほしいのか分からない。
これ普通に怖くない?

幸せになりたい楽して生きたい

大見出しにしてしまった。

まぁ、これよね。人間の本音。
人間基本的に「無能で怠惰」だと思っているので、これはもう仕方ない。

しかし、思うんです。幸せってなんだろうと。
この世の中幸せを求めすぎではありませんか?
幸せになりたいって、幸せをなんか到達点みたいに表現しているようにみえるけども、幸せなんでただの状態でしかないじゃない?

もしかし洗脳されてる?

これに気づいた瞬間後頭部を殴られた気分だった。
そう。幸せになることや、楽して生きていくことが目標であるようにマインドセットされているのだ。
簡単な目標設定に見えて、内容が抽象的。
なので目標にするためにたくさんの事柄を定義する必要がある。
しかしながら抽象的なままたくさんの人の目標となりえている。
幸せや楽であることが「いいこと」であると信じ込んでいるのだ。

小さい頃から親に「幸せになりなさい」と言われ続ければそうなるだろう。
世の中の人は多くがそんな感じに育てれらている。

これ洗脳じゃんね

MVではイケメン登場

重量バーベルを片手で上げていきます。
これには米津玄師ショック。ここから自分のための努力でなく、打ち勝つ為の努力へ変化していきます。
そう、内ではなく外へ。比較することがモチベーションになっていきます。
しかも、どれだけ努力しても上には上がいる。
ネット社会で育った人たちは上位の人達の存在を幼い頃から見ています。
純粋にそれを模倣し、レベルアップに励める人たちにはいい環境ではありますが、全員がそういうわけではありません。
才能という言葉に縛られ、絶望を味わってしまう人は結構多いのではないでしょうか。

ちなみに
チェンソーマンの主人公デンジはマジでこんな感じのスタンスなので、チェンソーマン的にはパーフェクトです

この手に掴みたいあなたのその胸の中
あなたの心の中にいられればいい、という感情かもしれない。
歪んだ愛を受けた人が承認欲求を高めた結果、そういう感情に行き着くのは何らおかしくはないと思う。

サビ

ハッピーで埋め尽くしてレストインピースまで行こうぜ
いつか見た地獄もいいところ愛をばら撒いて
アイラビュー貶してくれ全部奪ってくれマイハニー
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR *3

もうこれね、これまでの流れ見ればわかると思うけど
とにかく幸せに生きてレストインピース(死者の冥福)まで行こうぜ。
っていう現代人の目標をまんま語ってるのね。
どれだけ劣悪な環境にいても、自分の努力でどうにかしよう。
努力が足りない、愛が足りない、って言われる続けている状態を嘲っているように思う。
そんな自分を笑ってほしいし、救ってほしい、愛しいしと
若者たちの悲鳴が聴こえてくるようだ。
MVでもプロテインを吐きながら無理を繰り返す映像が続く

なんか忘れちゃってんだ

なんか忘れちゃったムキムキ米津

コラじゃないよ。注意されたら消すかな。
色んなところでネタにされてる米津玄師ムキムキモード
いろんな情報を付与されて迷走してしまった人を端的に表していて最高。
当初はどうありたかったのかわからなくなっている。
現代人、みんなこれでしょ

~間奏~

ムキムキになってイケメンに並びサンドバッグを殴りつけ、派手に吹き飛ばすも、イケメンは全く気にしない。無視。

2番

4443で外れる炭酸水
ハングリーこじらせて吐きそうな人生

もうこれね、なんかもう同意しかない。
この「4443」はMV冒頭の自販機についているスロットなんだけど
途中までいいように見せて、最後でダメになるのよ。
そんで、炭酸水は空腹を隠すアイテム。
結局空腹であることには変わらないし、なにか満たされない人生を感じている。

MVではムキムキ腕がハリボテであることがわかる。
ルームランナーでも張り合うが、無視される。
なんか虚しい。相手してくれ、俺頑張ったんだよ

「止まない雨はない」より先にその傘をくれよ
あれが欲しい これが欲しい すべて欲しい ただ虚しい

綺麗事を言う上の世代に対するカウンターでしょこれ
耐えていればいつかいいことがある。みたいなさ
現実全くそんなことはなくて、行動した人が世の中を渡っていける
その行動指針を少しでも分けてくれ、ていう風に読み取った

でも結局上の世代の価値観は、只々欲望を是としているために、模倣してもうまくいかない。虚しさのみが募る…なんか満たされないんだよね

幸せになりたい楽して生きていたい
全部滅茶苦茶にしたい 何もかも消し去りたい
あなたのその胸の中

1番と同じ歌詞だが、MVでは歌い方が全く違う
オーケストラ風で、荘厳な雰囲気のなかゆったりとしたペースで歌われる。
全部滅茶苦茶にしたいし、何もかも消し去りたい
このフレーズは人間全体でなく、現在の若者達の心境。
どうあがいても邪魔されるし、どうすればいいのかわからない
そんななか取れる手段は破壊だろう。だって誰でもできるし

あなたのその胸の中
とシャウトした直後米津玄師轢かれます(笑)トラックに
これ最近の異世界ものが流行っていることに対する強い皮肉だよね
全部滅茶苦茶にしたくて何もかも消し去りたいけどそんな事できない
ならば異世界だ!理想郷だ!みたいなね
あれマジで現代の歪だし、そうなってしまうのも仕方ない社会ではあるよね

ラッキーで埋め尽くしてレストインピースまで行こうぜ

幸福ではなく、幸運になったのは価値観の変遷を感じる
幸せなんて自分でつかむもんじゃない、運でしかないと言っているように見える。すごい

良い子だけ迎える天国じゃ どうも生きらんない
良い子って言うのはすなわち、大人にとって都合の良い人ね
ただ言うことに従っている人だけが行ける天国は、意思が強い人にとって生きて行くのはどうも難しい。そういう人からしたらそれは天国ではないし、地獄にほかならんのよ。
大体上の世代の言うことだけ聞いていては面白いものも生まれないし、停滞するからね

最近はそれが少しずつ認知されてきたようにも感じる

アイラブユー貶して奪って笑ってくれマイハニー
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR
なんか忘れちゃってんだ
上記の解説を踏まえると、1番と全く意味合いが異なるように感じる。
絶望感は少しばかり薄まっている。
うまくいかない私を笑ってくれ、なんか忘れちゃっているけど
思い出しそうなんだ。みたいな希望がちょっと見える。

ハッピーラッキーこんにちはベイビー
(ハッピーラッキーこんにちはベイビー)
良い子でいたい そりゃつまらない
(あなたの未来 そりゃつまらない)

マジで天才

これ皮肉効きすぎてトビそうだった。まさか赤ちゃんを出してくるとは。
生きることは苦しみである、ということを語った偉い人がいたはずだ(笑)
苦しみの世界に飛び込んで行くのがわかっているのに、ハッピーだのラッキーだの嘯くのだ。
フロントでは「いい子でいたい」といって、裏では「あなたの未来」がつまらないと言っているのめっちゃいいよね。
そして↓
ハッピーラッキーこんにちはベイビーソースイート
(ハッピーラッキーこんにちはベイビーソースイート)
ソースイート(かわいいねぇ)という甘言で地獄へいざなう。
もうね、わかってらっしゃる。

締め

努力 未来 A BEAUTIFUL STAR
なんかすごいいい感じ

歌詞はこんな感じなんだが
MVでは結構闇深い行為が行われている。

パルクールやらなんやらを駆使して疾走する米津玄師だったが、徐々に走る人が増え、集団になっていく。
先頭を走る米津玄師だったが、じつは別人で中身は外人だった。(他意なし)
依然先頭を爆走する外人であったが、ゴール直前で休んでいた本物の米津玄師が横から体当りし、1位を横取りするのだ。

トレーニングルームへ戻ってきた米津玄師。
隣のルームランナーにはあのイケメン。
声をかける米津玄師からカメラが移動し、監視カメラ。
楽しそうに虚空に話しかける米津玄師…

現代人の弱さ

現代社会では、一貫して努力だのなんだの言っているが、最終的にゴール前で一位をかっさらえるようになっている。と暗に言ってるのだろう。

この1位を横取りすることを是としているのが若年層のマインドセットになってしまっているのではないだろうか?
幸せになりたい・楽して生きたい。わかるけど

日本人若年層は努力を忘れてしまったんだな。という悲しみ
一発逆転!だの、これをやれば成功!だの
安直な謳い文句が跋扈している。正直辟易する。
一発逆転や成功を収めている人は、運やタイミングが合致したのもあるけども、ちゃんとした基礎があるから上手く行ってると思う。
努力のベースがなかったらその上には何も建たないだろう。
簡単にひっくり返せるような人生を望んでしまっている悲しみ
更にはその指針を与えることができなかった上の世代に対する怒りと絶望が詰まっている。そう感じた。

最後のシーン

虚空に語りかける米津玄師。

虚像を追いかけ暴走し、正しい努力もできず、貶され、最終的には1位の座を暴力で強奪しようとする。
最終的にはへらへらと媚びへつらうような挙動しかできなくなってしまった若者達の姿を端的に表していて、空恐ろしいものを感じたのだった。

この歌は若者たちの叫び

もう30歳を越えたが、かなり共感している。
いま一度この歌を聞いてほしい。
ただのアニソンではありません。
米津玄師さん常田大希さん両名への感謝しかない。そう思いました。

終わり

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