本の紹介「熊田千佳慕の言葉 私は虫である」
熊田千佳慕(ちかぼ)は、ファーブル昆虫記の挿絵をはじめとして虫や草花の絵を98歳で亡くなる直前まで描き続けた画家です。
私は、10年くらい前にNHKのBS放送の番組で熊田千佳慕を初めて知りました。2009年に98歳で亡くなられているので、おそらく亡くなる少し前の映像だったのだろうと思います。
映像の中で熊田千佳慕は自宅の庭に腹這いになって長い時間、昆虫を観察し、そして精密な絵を描いていました。下の絵は、熊田千佳慕が描いた絵です(本の表紙と展覧会のポスター)。
この本「熊田千佳慕の言葉 私は虫である」は、熊田千佳慕の言葉と写真と絵からなる本です。160ページほどの本ですが、文字が大きく写真と絵が多いので2時間ほどで読み終わってしまいます。しかし、その言葉が素晴らしいのです。一例として「ゆとり」について書かれた文章を紹介します。
わざわざ休日を作ったり、遊びの時間を作ったりすることが「ゆとり」であると思うのは大きな間違いである。
生活の中の小さなゆとり。
身のまわりにあるものに愛を感じ、美しさを感じ楽しいひとときを持ち、生活の中に豊かな感性を持つことが本当のゆとりである。
現在騒がれている学校や社会のゆとりは、只、単なる休む時間であり遊ぶ時間である。精神的なものを伴っていない。
他にも、暮らしのこと、生きること、仕事のこと、描くこと、愛、自然、虫、命等についての素朴で素晴らしい言葉の数々。それらの言葉が、人生においての大切なことを気づかせてくれます。
自然を愛し自然を観察し絵を描く、それを毎日、毎日、90歳を過ぎても続ける。それでも飽きることなくそれを続け、自然から学ぶ。
虫や花たちは今日を悔やんだり、明日を思い悩んだりせず、今この瞬間だけを懸命に生きている。
自然は美しいから美しいのではなく、愛するからこそ美しいのだ。
もっともっと千佳慕の言葉を紹介したいのですが、最後にもう1つだけ紹介します。尚、「私は虫である」の意味は本の中にあります。
愛にめぐまれた時は、その喜びを心にいっぱい詰めこんでおきましょう。
不幸がおとずれた時は、その喜びを少しずつ取り出してなぐさめましょう。
(付)巻頭にカラーの絵が12枚、カラーの写真が2枚ありますが、本文中の絵と写真は全て白黒です。
花と同様に虫もきれいです。私の撮った虫の写真を何枚か紹介します。愛を持って見れば、美しく見えるかも!?
①カラスアゲハ
②自宅の庭で羽化したキアゲハ
妻が栽培していたパセリをたくさん食べて育ち、ローズマリーの枝でさなぎになり、羽化したキアゲハ。羽化したばかりなので羽根の色がきれいです。幼虫の頃から見ていたせいか、羽化した時は本当にきれいだと思いました。
③羽根のきれいなチョウトンボ(絶滅危惧II類)
④キイロテントウ(右下にいます)