※写真は松本城から見た北アルプス方面の夕景
暑い夏でも青い空やモコモコした夏の白い雲、綺麗なオレンジ色の朝焼けや夕焼けを見ると気持ちが落ち着きます。
最近、空好きな人が増えてきた気がしますので空の話(青空、朝焼け・夕焼け、白い雲等)をします。知っている人には当たり前の話ですが、知らない人には少し難しいかもしれません。
宇宙は暗いのに地球の空が明るく青いのはなぜでしょうか?太陽と地球を宇宙から見ると、光っている太陽と青い地球とたくさんの星が見えますが、それらの背景はほぼ暗闇です。宇宙空間と地球の空の違いは空気の有無です。地球の昼間は太陽光が空気や微細な塵にあたって散乱することで明るくなるのですが、宇宙空間は空気が無く真空なので太陽光線が通っても暗いままです。
太陽光線が地球の大気圏に入ると空気(窒素や酸素等)に当たって光が散乱するのですが、この場合の散乱には次のような法則があります。
光の波長に比べて十分に小さい粒子による光の散乱は波長が短いほど強い。
ここで、可視光線の波長は約0.4μm〜0.8μmで窒素分子の大きさはその千分の1くらいと十分に小さいので、この法則に従って散乱します。また、波長は青が短く赤が長くなっています。従って、空の上の方では青い光がたくさん散乱しており空が青く見えています。
※補足説明
可視光線よりも短い波長は紫外線、長い波長は赤外線です。
上記の法則はイギリスの物理学者レイリーさんが発見したのでレイリー散乱と言います。
では、昼間の青空と朝夕の赤い朝焼け、夕焼けの違いは何でしょうか?大気圏の厚さは約100kmです。地球の直径12,700kmに比べると非常に薄い層です。ここで、正午頃の太陽光はこの100kmほどの大気層をほぼ垂直に通って地表面に到達します。しかし、朝や夕方は横から光が来ます。薄い大気層を横方向に長い距離を進むことになります(スイカの皮を竹串で皮に垂直に刺す場合と浅い角度で斜め横から刺す場合、スイカの赤い実に達するまでに通る皮の距離の違いをイメージすると良いと思います)。
朝と夕方は太陽光が横から大気層の長い距離を通過する際、波長の短い光から順に散乱して行きます。そして最後に波長の長いオレンジや赤が散乱して朝焼け、夕焼けになります。また、光は水蒸気によっても散乱しますので、大気中の水蒸気量が多いほど朝焼け、夕焼けは赤く見えます。
最後に白い雲の話。雲は微小な氷粒・水滴が集まったものです。この氷粒・水滴の半径は1μm〜100μm程度です。雲の粒は可視光線の波長よりも大きいということに気づくと思います。この場合は、先程のレイリーさんの散乱法則には従わず、ミー散乱という別の法則に従います。
ミー散乱(ドイツの物理学者ミーさんが発見)
光の波長と同程度以上の粒子による光の散乱は波長に依らず全ての波長の光が同程度に散乱される。
つまり、雲の粒は全ての光を同程度に散乱させるので真っ白に見えるわけです。きれいな雲はこんな法則で真っ白に見えるのです。但し、雲の上に別の雲があったり、厚い雲の場合は太陽光がしっかり当たらないので灰色に見えます。
(おまけ)なぜ雲は地面に落ちて来ないのか?
雲の氷粒や水滴も重力が働きますので落下します。一般に落下速度は粒が大きいほど速くなります(詳細は物理の話なので省略)。上下方向に風が無い場合、半径10μmの水滴は1.2cm/秒(=72cm/分=43.2m/時)の速度で落下します。しかし、一般に雲ができる領域は上昇気流が吹いています。軽い雲の氷粒・水滴は下からの風で容易に上に流されてしまいます。また、仮に上昇気流がない場合でも微小な氷粒・水滴は落下する途中で温度が上昇し蒸発してしまいます。つまり、雲が消えるということです。
従って、雲が地面に落ちてくることはありません。
ちなみに雲の中で氷粒・水滴の直径が0.1mm以上になると雨として落ちて来ます。
以上