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ラーメン屋のリアル!ワンオペラーメン店の裏側を徹底取材
物価上昇や電気代の高騰などにより窮地に立たされているラーメン業界。有名店ですら廃業を余儀なくされる状況である。
神奈川県相模原市にあるラーメン店「相南家」は、開業から15年、1人で店を切り盛りしているいわゆる「ワンオペ」営業を続けているラーメン屋だ。
寸胴から炊き上げる店主のこだわりが詰まった家系ラーメンを求め、連日常連客を中心に親しまれている。
しかしながら「今は店を維持するだけで精一杯です」と店主の佐伯氏(以下佐伯氏)は苦言をもらす。物価高の影響に加え、店主の目が届かないところで心無い行動をするお客もいるようだ。
そこで今回は、ワンオペ営業で頑張っている相南家の店主である佐伯氏に、ラーメン屋の現状と裏側について取材をしてきた。
プロボクサーから転身!廃業が続く物件でラーメン屋をスタート
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店主の佐伯氏は、日本ランカー1位の経験を持つ元プロボクサーだ。現役当時は元WBA世界ミドル級王者竹原慎二氏とのスパーリングをしたこともある実力者。
しかしボクサーの命でもある目の病気、いわゆる白内障を患いボクシング人生に幕を閉じた。
そんな落ち込む彼を救ってくれたのがラーメンだったという。
「ラーメンを食べているうちにいつか自分の店を持ちたいと思ったんです」そう決心した佐伯氏は、家系ラーメン屋に飛び込み修行を重ね、念願となる「相南家」をオープンさせた。
「物件を探しているとき、ちょうど元ラーメン屋の物件を見つけたんです」「これなら設備費も抑えられると思い即決しましたね」と佐伯氏は語る。
しかしながら、すでに3件のラーメン屋が潰れている居抜き物件だったこともあり、立地条件など不安を感じるスタートになった。
迷惑客にも悩まされ閉店後は泣きながらどんぶりを洗う日々
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経営は決して順調ではなく、開業から1年は閑古鳥が鳴いている日々だったという。
「味には自信があるのにお客さんはまったくきませんでした」「このままお客様がこなかったらどうしようと、閉店後は泣きながらどんぶりを洗っていましたね」と佐伯氏は語る。
さらに頭を悩ますのが迷惑客の存在だ。
「1人で切り盛りしていると卓上調味料を容器ごとどんぶりに入れられてたり、酔ったお客さんが食事中のお客さんに絡んだりしたこともありましたね。注意すると店内で土下座するんですよ。周りのお客様もいたのでなんともいえない空気でしたね」
「うちはカウンター席しかないので、席をずれてもらうお願いをすることもあります。ですが中には嫌な顔をする方もいて...。多くのお客様に座ってほしかったのですが、結局ランチタイムに1時間以上居座っていましたね」売り上げが低迷している中、迷惑客の苦悩に悩まされていたという。
お客さんが増えるにつれて値上げがしにくい状態に
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相南家のラーメンといえば、寸胴から丁寧に煮出したスープにある。豚骨の旨みだけを引き出したスープはまろやかでキレがあり、麺に程よく絡む佐伯氏渾身の一杯だ。
「スープの味を安定させるために、お客さんの入り具合をみて火加減や豚骨の量を調整しているんです」と佐伯氏のこだわりが感じられる。
開業から2年経つとラーメンの味を求め次第に固定客がつくように。多いときは外までお客が並ぶこともあるとのこと。中には片道2時間かけて訪れるファンができる店まで成長した。
「多くのお客様にラーメンを食べてもらうようになり、頑張ってきた甲斐を感じます」「しかしラーメンを作るには材料費と光熱費がかかるので、昨今の原材料の高騰で値上げせざる得ないんです」と佐伯氏は苦しい胸中を語る。
「以前、心苦しいですが50円値上げしたんです。すると券売機の前でくるっとUターンして帰ってしまった常連さんもいましたね」と複雑な心境を明かした。
その経験から値上げに踏み切るのが怖くなり、周囲のラーメン屋の動向を見ながら値上げを検討している日々を送っているという。
値上げを敢行すると客層が変化する
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しかし値上げをした一方思わぬ効果を生み出したと佐伯氏は語る
「相南家は開店当初から少しずつ値上げをしてきました。すると徐々に迷惑客が減ったんです」「一方で常連さんだけが残っていて、文句どころから満足して帰ってくれます」
経営が厳しいラーメン業界において、ラーメン屋のほとんどは値上げしたくてもできない状態にある。しかし安く手軽に食べられるラーメンから、手間と材料費がかかる高級品にすることで、ラーメンを食べにくる客層は濃いファンだけになったようだ。
とはいえ、佐伯氏は「今は店を維持するので精一杯で、正直さらに値上げをしないとやっていけません」「でも値上げをするとお客様が減ってしまう気がして怖いです」「うちの店は決して立地が良いといえませんし、周囲のラーメン屋も次々廃業していて。それを見ていると他人事ではない気がするんです」と、お客を思う気持ちと現実の複雑な心境を語っていた。
開業15年でもワンオペにこだらわないといけない理由
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飲食店の廃業が続く物件からスタートした相南家だが、ワンオペ営業ながら15周年を迎えた。
しかしながら、苦しいラーメン業界を生き抜くにはワンオペ営業せざる得ない状況にあるようだ。
「15年間ワンオペなのは従業員を雇う余裕がないことはもちろんですが、ラーメン屋の仕事はかなりきついのでなりたいと思う人がいないんと思うんです」「真夏の厨房は46度になりますし、拘束時間も長い。おまけに給料はそこまで高くないので」
「広い店に移転すれば、お客様がたくさん入るので従業員も雇えるかもしれません。理想的な経営ですが現状は苦しいので現実的ではありませんよね」
スープ作りやラーメンの調理は本人の経験が必須だ。しかしながら、接客や片付けまでこなすことに苦労していることは間違いないだろう。ワンオペ営業にこだわるというより、そうせざる得ない状況にあるようだ。
周囲の廃業が続く最中でラーメン1杯にかける思いとは
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「実際のところ現状維持で精一杯です。苦しい経営は今後も続くと思うのでどう耐え抜くのかを考えていますね」
「それと今はラーメン1杯800円にしているのですが、この中には家賃や材料費、光熱費やお客様の駐車場代も含まれています」
「儲けもほとんどありませんし、とにかく手間暇がかかります。たかが800円ですが実はいろいろな思いが入っているんです」
「今後も美味しいラーメンを届けていきたいので、ラーメン1杯にかかる費用や手間を少しでも意識してくれると嬉しいですね」と語っていた。
常連客を中心に支えられ15年。次々と廃業する物件で相南家が長年続けてこれたのは、ラーメン1杯にかける思いとお客様への感謝の気持ちといえるだろう。
ただし生き残るにはメニューの値上げは避けられない。個人経営のラーメン屋は今後も苦戦を強いられると思われる。
詳細情報
【相南家】
住所:神奈川県相模原市南区東林間5-17-15
アクセス:小田急江ノ島線「東林間」駅より徒歩5分
駐車場:2台有り(ローソン100の向い)
営業時間:11:00~14:00 19:00~22:00
定休日:月曜日、火曜日
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