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#005 お客様からの“隠れ場所”になる旅客機の「ギャレー」の存在

お客様相手の接客業が学ぶべきは航空業界だと思います

普段から例えば接客業のお店のカウンターとか役所の窓口とかを見ていると、お客様と接するスタッフが常時待機しているような場所って、持ち場を離れずに一時的に引っ込めるスペースがすぐ近くにある構造だといいのになぁ…と思うことがあります。

そこが直接お客様から見えないレイアウトならドアがなくても良くて、普段は通路だろうが荷物置き場だろうが椅子や机がなくても構わなくて、広さもホント狭くて大丈夫なんです。

例えば、接客中に起きた問題を上司や他のスタッフに相談したりする時に、何度もお客様を待たせて事務所とかを往復したりする事があると思いますが、それがお客様から直接見えたり会話が聞き取れる場所だと、相手に「コイツ大丈夫なんか?」みたいな不信感を与えてしまったり、クレームなどの場合は不必要に刺激を与えてしまって怒らせるリスクもあるはずなんですね。

そしてそういう場所で働くスタッフも人間だから、時には疲れたり嫌な思いをする事だってあるし、そこがいつお見えになるかわからないお客様のために待機しておく必要もあったりする場所だったりしたら、常に笑顔を保っているのはもっと大変だと思うんです。

そういう時に持ち場を離れなくてもすぐ近くに一時的に引っ込んで、(誰にも見えないように)あくびや背伸びをしたり、ちょっとだけ鏡に向かって嫌な顔をしてストレスを発散したりとか、理不尽なクレームを受けて落ち込んでいる時に他のスタッフが「ドンマイ!」なんてちょっと声をかけたりしてあげられる場所があれば、次のお客様には気持ちを切り替えてまた笑顔で対応できたりするんじゃないかな…なんて思うんです。

実はコレ、搭乗時に機内でいつも気持ち良く接して下さる航空会社の「キャビンアテンダント(CA)」の皆さんが、カーテン1枚で客席側と仕切れる「ギャレー(調理スペース)」を上手く活用している使い方のひとつなんですよね。

そういう接客業にお客様からの視線を一時的に避けられるスタッフだけのスペースがあるだけで、お客様への接客レベルの向上だけでなくスタッフの仕事のやりやすさとかチームワークとか、メンタルヘルスとかの働きやすさの面でも、いろんな事がスムーズになるような気がするんです…。

完璧な人格者のスタッフなんてそんなにいるもんじゃないですよね…

実はコレを切実に感じているのが、最近都城市の中心市街地にできた例のホテルのフロントカウンターの構造なんです。

オープンスペースのロビーのど真ん中にあるフロントカウンター(楽天トラベルのサイトより)

実はオープン後から楽天トラベルのクチコミにもフロントの対応やスタッフの接客態度への厳しい指摘とかが続いているんですが、その理由のひとつが完全なオープンスペースのロビーのど真ん中にある、低いカウンターだけの島状のフロントの構造だと思うんですね。

チェックイン用の端末なども横並びではなくL字形(画像でお客様側に荷物置きの木製の台がある位置)に配置されているので、接客中の手元とかも横の別のお客様から丸見え。
これではベテランスタッフが隣の新人の様子をうかがいながら対応したり、お客様に見えないように横からメモを渡してアドバイスしたりといったサポートもできないんですね。

そしてお客様の対応がなく椅子に座って待機している間でも、正面のエントランスや通路側だけでなく、真横や真後ろのロビーやレストランから常時丸見えなので、お客様の視線から隠れようがない構造…。

これではちょっとした私的な会話や仕草のひとつでもお客様の目についてしまうし、自分の視界に入らない方向から常に見られているというのは結構辛いですよね…。

楽天トラベルなどの口コミにはチェックインに時間がかかりすぎるというコメントも多いのですが、一般的なホテルのフロントのように事務所などが真後ろや近くにあるわけでもないので、他のスタッフが混雑状況を察して応援に入れたりサポートを呼びに行けるような動線配置でない点も、マイナス評価につながっているかもしれませんね。

まぁ実際にお泊りになったお客様からの指摘が多い点については、オープニングスタッフの募集時にホテル業界経験者の応募を当てにしすぎたばかりに、採用後の人材の育成や接客教育が全然できていないという点が一番大きいとは思います。

ただ、まるでバブル期のオフィスビルのロビーの受付を思い出させるようなこの丸見えのスペースで、常に嫌な顔ひとつ見せずに笑顔を絶やさずに接客を続けられるスタッフがもしいたとしたら相当な人格者だと思うんです。

仮にそういうスタッフがいても雇用しているホテルには貴重な人材で手放さないだろうから、離職した業界経験者から探してもまずいないと思うし、仮に新人をそういうレベルまで育て上げるのならキャビンアテンダントとか旅館の女将やホステス並みに徹底した接客教育のシステムが必要でしょうね。

仮にお客様の前では嫌な顔ひとつ出さない優秀なスタッフが育ったとしても、この構造のフロントに立っているのは相当気疲れするでしょうから、ホテルの顔の“人財”として働き続けてもらうには、待遇はもちろんメンタル面などの充実したサポートなど必要になりますよね。

このホテルのフロントにも、ロビーの解放感を損なわない程度でかつ椅子に座ると視線から隠れられる程度の少し高さのあるバックスクリーンとかで、ちょっと隠れられるスペースがあったら、もう少しいい接客評価になったんじゃないかなぁ…と感じています。

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