カメラ
カメラを新しく買おうかと思っている。
今使っているカメラは友人から譲り受けたもので,Olympus PEN E-PL9である。マイクロフォーサーズのミラーレス一眼レフであり,コンパクトなボディで持ち運びやすく,バリアングルモニター,様々な撮影モード,Wi-Fiを用いたスマホとの接続など,一通りの欲しい機能が揃っている。特にこのコンパクトさはとても重宝していて,冬などはレンズさえ外して仕舞えばアウターのポケットにも収まるし,少し出かける程度の時にも持って行きやすいのでカメラに親しむという点でも良いかったと思う。
入手当初はボディと一緒に手に入れたパンケーキレンズをもっぱら使用していたが,レンズが故障してしまったことを機に,OLYMPUS製の別のズームレンズに移行した。しかしLUMIX 25mm F1.7を同時期に購入し,単焦点レンズの扱いやすさに馴染んでからはほとんどこのレンズしか使わなくなった。
単焦点レンズのメリットについてはNikonのこの記事に記されているが,個人的には「大きくボケた写真が撮れる」ことと「意識が変わる」という点がとても大きかったと思う。
一つ目については,スマホと比較すると感じやすい。大きくボケると遠近感もより際立つし,ピントの合ったものの質感もより鮮明に描かれているように感じる。
二つ目については,記事に記されているような,画角の中に何を収めるか,被写体をどのように見るかという点はもちろん,ズーム機能を手放した分,絞り,シャッタースピード,ISOといった他の設定に意識を向けることができるようになったという意味で大きかったと思う。逆にいえば,それまではズームイン・アウトを気にしてばかりで,他の部分については意識を向ける余裕がなかった。しかし,単焦点レンズでは,まず自身の位置や姿勢で概ね画角が確定する。その上でISOを調整し,絞りを調整し,シャッタースピードを確認するというようにして,設定を決めていく。こうしたプロセスが自ずから身についたのは単焦点レンズを使うようになったことの恩恵であったと思う。
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そしてカメラを使い始めて半年ほどした頃,祖父の家からMINOLTA SR-7を掘り出した。外観はそれほど悪くはなかったが,やはり50年以上前のカメラということもあり,シャッターが壊れており,修理に出す必要があった。
修理にかかった費用は20,000円ほどであり,金額的に見れば中古でオーバーホール済みのものを購入するのとほとんど変わらなかった。
修理に出している間,SR-7についていたAUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4だけが手元に残ったので,せっかくならとマウントアダプターを購入し,E-PL9に取り付けた。初めてのオールドレンズである。
AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4も単焦点レンズであったので,使い方は基本的にLUMIXのものと同じであったが,オールドレンズであるために絞りをボディ側で設定できない点と強制的にマニュアルフォーカスになるという点が違っていた。
そしてこれもまた,写真を学ぶいい機会になった。自分の手でピントを合わせなければならないために,被写体をさらによく見るようになり,ピーキング機能などには頼りながらではあったものの,素早くピントを合わせる力も鍛えることができた。
これをきっかけにオールドレンズにハマった結果,安くて手に入れやすいオールドレンズを収集するようになった。収集するといっても,LEICAやカール・ツァイスのような高価なものをコレクター的に収集するというよりは,オールドレンズで望遠レンズ,ズームレンズを探しつつ,気になった単焦点レンズを買い足すという感じである。
しかし,ここには難しさもあった。オールドレンズにはつきものであるが,コンディションの悪いものが多々あるということである。価格とコンディションはトレードオフであり,学生という身分上,あまり価格面での譲歩が難しかった。
その結果,行き着いたのは,ある程度修理する技術を身につけるというものであった。バルサム切れや傷についてはいまだに対処できないが,カビやチリ,軽度な汚れであれば分解清掃できるようになった。これにより,購買の手がジャンク品コーナーに向けられるようになった。
最終的に,PENTAX Takumar 58mm F2.4のジャンク品を手にいれて修理したことで一旦,オールドレンズ集めは一区切りついた。
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一方で,修理に出していたSR-7も帰ってきたため,こちらもE-PL9と並行して使うようになった。ちなみにE-PL9に取り付けて使っているメインのオールドレンズはPENTAX Takumar 58mm F2.4だが,これはAUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4をSR-7用にしているという事情もある。また,オールドレンズ集めの際にはマウントアダプターの追加購入を最小限にとどめ,SR-7での使用もできるようにミノルタのSRマウントのものを集めるようにしていた。
フィルムカメラを使うのは初めてであったが,E-PL9のマニュアルモードでAUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4を使っていたことで,手動で一つ一つ調整することにもそれほど難しさは感じなかった。
それよりもむしろ,フィルムの入れ替えというような初歩的なところの方が難しかったように思う。
それこそ使い始めはフィルムの入れる向きがわからなかったり,巻き取りボタンを
押し忘れてフィルムの取り出しに苦労したりもした。
フィルムカメラを使うようになって,一番変わったところと言えば,やはり写真への向き合い方だと思う。何しろ,フィルムカメラでは1枚の価値がデジタルカメラと比較すると圧倒的に高くなる(特に金額的に!)。また,撮った写真を確認して,設定を調節して……というようなこともできない。
そのため,天気やロケーションといった比較的マクロな条件に合わせてフィルムを決めて,撮る瞬間というミクロな条件に合わせて,映る像を想像しながら絞りとシャッタースピードを決めなければならない。その上,フィルムの枚数は限られているので,条件を変えてたくさん撮るということも出来ない。
必然的に,ISO,絞り,シャッタースピードへの意識が高まった。
特に使い初めの頃は,E-PL9で適当な設定で撮影して,その数値を参考にしてSR-7で撮影するというようなやや邪道な気もする取り方もしていた。
最近では比較的慣れてきて,そうした運用も少なくなったが,ミラーレスを使って撮影した写真についても,これらの設定をその場限りではなく,感覚的に記憶するようにはなったと思う。
また,E-PL9はEVFがないタイプのミラーレス一眼であるため,ファインダーを覗くという動作も,SR-7を通じて身につけた。(一応,E-PL9も外付けのEVFをつけることはできる)
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フィルムの端で撮影してしまったらしく,左端が強く感光している
さて,こうしたカメラライフをそれなりに満喫してきたが,ここにきて新調しようと思うのには,おそらく誰もが通るであろう動機がある。
フルサイズが欲しい。
付け加えるなら,ファインダーが欲しい。
といったところである。
別に込み入った理由も何もない。
好みとして,薄暮での撮影が多いので,暗所耐性が欲しい。
いいカメラを使ってみて,自分のスキルだとどのくらい表現できるのか試してみたい。
こうした理由からフルサイズを検討している。
とはいえ,相変わらずお金はないので中古を探している。
そんなわけで,カメラの話であった。