黒川精一/ サンマーク出版代表

サンマーク出版の代表、兼、編集者。2年連続を含む3冊のミリオンセラー。最新担当作は大﨑洋さんの『居場所。』。本をつくったり、講座をプロデュースしたり、「ぺんたと小春」を育てたりしています。「Meet the words」読者が自分を支える言葉と出会えるように。

黒川精一/ サンマーク出版代表

サンマーク出版の代表、兼、編集者。2年連続を含む3冊のミリオンセラー。最新担当作は大﨑洋さんの『居場所。』。本をつくったり、講座をプロデュースしたり、「ぺんたと小春」を育てたりしています。「Meet the words」読者が自分を支える言葉と出会えるように。

最近の記事

映画『哀れなるものたち』〜男が狂うベラの正体(ネタバレ)

映画『哀れなるものたち』は、橋から身を投げ自殺したベラ・バクスター(エマ・ストーン)の脳に、天才外科医のゴッドウィン・バクスター(ウォレム・デフォー)が赤ちゃんの脳を移植して生まれ変わらせ、彼女が少しずつ成長しながら世界を旅するという...筋書きを書こうとするとなんとも奇妙な映画だ。 ヨルゴス・ランティモス監督のことも、美術のことも、衣装のことも、カメラワークのことも、モノクロとカラーの使い方のことも、音のことも、書きたいことはいっぱいあるのだけど、そこは高名な映画評論家の

    • 映画『PERFECT DAYS』〜主人公・平山の幸せとは⁉︎(ネタバレ)

      ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司さん主演の『PERFECT DAYS』を観ました。どうしても書いておきたくてnoteを開きました。ネタバレです。 * 主人公の平山は東京下町の「押上」にある、歩くと床が軋む古アパートで一人暮らしをしている。まだ薄暗い朝、二階で寝ていた彼は近所のおばちゃんが箒で外を掃除するシャッ、シャッという音で目覚め、せんべい布団を畳むと一階におりていって歯を磨き、髭を小さなハサミでちょちょっと整える。 二階にもどって苗木たちに霧吹きで水をやり、背中に

      • サンマーク出版は編集者を募集します

        サンマーク出版は「書籍編集者」を一般募集させて頂くことになりました。じつに4年ぶりです。 僕たちは総勢50名ほどの出版社で、書籍編集者は約15名。大きな集団ではありませんが、これまでに8冊のミリオンセラーを輩出し、国外での累計部数は3000万部に迫っています。ビジネス書や自己啓発書、実用書をメインにした出版社のなかでは、ほかに類のない実績のはずです。 編集者にとって、会社を選ぶポイントは2つあるように思います。 ひとつ目は、待遇面はどうか、という点。 どんなにがんばっ

        • ミリオンセラーを阻む3つの呪い

          いまもミリオンセラーは多くの書籍編集者の夢。「どうすればその夢を叶えることができますか?」というご質問を、著者や編集者から幾度となく受けてきた。 言うまでもなく、本の良し悪しは部数で決まるものではないし、少部数であっても素晴らしい本はたくさんある。 みんなそんなことは当然わかりながら、それでも100万部の夢を追いかけて本を書いたり作ったりしている人は多い。 ぼくが代表をしているサンマーク出版は、これまでにミリオンセラーを8冊出していて、そのチャレンジスピリットを忘れない

          「企画書」は本当に必要なのか⁉︎

          長年、出版社にいるとたくさんの人から、本の「企画書の書き方」について相談される。 ・タイトルは重要ですか? ・どんな順番で書けばいいですか? ・プロフィールは前ですか?後ろですか? ・何枚までなら読んでもらえますか? つい先日も、ある出版プロデューサーさんに「本をだしたい人たちに企画書の書き方をアドバイスしてもらえませんか?」とご相談を頂いた。そこで、あることに気づいてしまった。 「そう言えばこの10年間、本気で書いた企画書はたった1枚しかない....」 企画書をまっ

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          企画に必要な「5つの問い」について

          長年、本をつくる仕事をしていると、素晴らしい著者の方々と知り合う機会が増えます。素晴らしい著者の知り合いは、素晴らしい著者であることが多く、つくづく仕事というのは「紹介」したりされたりすることで成り立っているなあと感じます。 今日は、そんなすごい著者たちと向き合って、「一体どんな本をつくろうか...」と思い悩んだときに、ぼくが指針にしていることを書きます。 いまも一冊、企画や構造を考えている本があります。 その著者さんには、何度か取材をさせていただき、その内容をどうやっ

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          本を広めるために僕らがやっていること

          きょうは、出版社はどうやって本を広めているの?というお話です。言ってしまうと「本ごとにちがう」わけですが、とはいえ、出版社ごとに特徴があるので、今回はサンマーク出版のベーシックなプロセスをお伝えします。 本を広める該当プレイヤーは主に3チームあります。 1.編集部  2.営業部  3.PR戦略室 本の発売3ヶ月ほど前になると、それぞれのチームの連携が始まります。 ◎すべては「発売3ヶ月前」から始まる「編集部」には、本の担当編集者とその上司である編集長がいます。 発売3ヶ

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          アメリカの出版市場と「夢」への挑戦

          サンマーク出版は50名ほどの少数精鋭ながら、海外でビッグヒットを飛ばしていることで知られています。 こんまりさんの『人生がときめく 片づけの魔法』、故・稲盛和夫先生の『生き方』、そして川口俊和さんの『コーヒーが冷めないうちに』などは、世界の出版市場で注目されてきました。 先日、ロンドンのブックフェアから帰ってきたばかりのある出版社の方とお会いした際、彼にこんなことを言われました。 「向こうのバイヤーさんたちは口々に、『コーヒーが冷めないうちに』のような日本の小説はないの

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          人生を、味わい尽くす方法

          今日は『ビリギャル』の坪田信貴さんに、高樹町の住宅街にひっそりあるフレンチの名店『レフェルヴェソンス』に連れていって頂きました。ミシュランで三つ星を獲得し、アジアレストラン・ベスト50にも入る日本最高のレストランのひとつ。 コースのみで、季節ごとのメニューを楽しませてもらえるようなのですが、どの季節に行っても必ず出てくるスペシャリテの定点が「カブ料理」です。シンプルに言うとカブを焼いただけなんですよ。とはいえ、4時間かけて丁寧に火を入れる調理法を13年間続けているという逸品

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          吉本興業・大﨑洋会長の退社と『居場所。』

          吉本興業の大﨑洋会長が、2023年6月29日をもって退社されるというニュースが流れました。大学を出てから吉本興業ひと筋の大﨑さん。ダウンタウンを見出し、松本さん、浜田さんと共に歩んだその日々はいかなるものだったのでしょうか。 ぼくが大﨑さんのご著書『居場所。』の編集担当をさせて頂くことが決まったのが、いまから約2年ほど前です。その後、のべ60時間以上の取材をさせて頂き、2年がかりで本が完成しました。 『居場所。』は、「ここじゃないどこか」を探し求めて孤独な日々を過ごしてい

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          「持ち場を離れる」と見えてくるもの

          川をつくる この5月から、サンマーク出版に武政秀明さんがジョインしてくれました。武政さんはつい先日まで、東洋経済オンラインの編集部長を務めていた方で、月間3億PVの離れ業をやってのけた同媒体の立役者です。 武政さんとは、来春のローンチを目指して「サンマーク オンライン(仮)」の立ち上げを行うことになります。もともと出版社にはたくさんのコンテンツがあり、その一つ一つを読者と「橋」をかけるためにローカル戦をしているわけですが、そこにオンラインメディアという「川」をつくることに

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          編集者たちに伝えたいこと

          よしもとの会長・大﨑洋さんの著書『居場所。』を出して3週間がたった。このnoteを書いている4/2現在で5万部。発売直後から多くの方に読んで頂き、うれしい感想をたくさんもらった。 3月に所属する出版社の代表になったことで、いろいろな人に「これが編集者として最後の担当本ですね」と言われた。その度に僕が「これからも本をつくろうと思います」と言うと、相手はすこし驚いた様子で「社長になっても本をつくるんですか⁉︎」と返してくる。 たしかに、僕が呑気にこんなことを言っていられるのは

          編集者たちに伝えたいこと

          ぼくの居場所について

          吉本興業会長の大﨑洋さんの『居場所。』という本を作った。大﨑さんの幼少期から今までの人生を長い長い時間取材させてもらい、2年近くかけて完成した一冊だ。 大﨑さんは若き日のダウンタウンさんを見い出し、世に出す場をつくり、その後もずっとサポートしてきた人。 一方で、「芸能界のドン」とか、数年前の闇営業問題の印象などもあいまって「フィクサー」みたいなイメージもあるのだと思う。 実際の大﨑さんはというと、とても気さくで、あったかくて、優しい人。本をつくる過程で長い時間ご一緒させ

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          どうすれば「新入社員研修」は楽しくなるのか⁉︎

          この春、サンマーク出版には5人の新入社員の方々が入社してくれます。女性が4人、男性が1人。毎年のように中途採用はしていましたが、新卒採用は久しぶりなので、その「あり方」「やり方」をゼロから編集してみようと思い、あれやこれやと考えはじめました。 新人研修と言うと、マナーの勉強をさせられたり、営業の怖いイズムを叩きこまれたり、意味不明なワークをやらされたり、本当に嫌だったなあ・・・という記憶があります(僕が受けたのは、はるか昔ですけれど)。 何が嫌だったかというと「やる気のス

          どうすれば「新入社員研修」は楽しくなるのか⁉︎

          この著者と、どんな本を作ればいいの?

          本の編集者の仕事をしていると、日々、いろいろな企画が持ち込まれてくる。ぼくは生活実用書やビジネス書を中心に活動してきた編集者なので、企画書を送ってくださる著者(になりたい方々)も、それらの分野で活躍されている人が多い。 ぼくは今、マネジメント的な仕事も多いので、1年で2冊程度しかつくれない。だから、どうしてもお断りする案件が多いし、おもしろそうな場合でも後輩編集者たちに相談したりしている。そんな自分の状況をある著者さんに話すと、 「じゃあ、黒川さんはどんな人なら、一緒に本

          この著者と、どんな本を作ればいいの?

          本の企画の、はじめの一歩

          本の企画を考えるということは、人々は本に何を求めているのかを考えることでもある。これだけ多くのメディアやSNS、娯楽があるなかで、わざわざお金を出して「本を買う」のは一体なんのためだろう。 「そんなのは人それぞれ」という声も聞こえてきそうで、確かに、人は素敵な物語に触れたいし、情報を知りたいし、やり方を覚えたいし、教養を身に付けたいし、その目的な様々だ。 人々が本を買う理由なんて「一概には言えない」「ひとことでは言い表せない」、そんな言い訳めいた感情が浮かんでいたある日、

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