くんずられた遊び
あれは、小学校の音楽の授業だったとおもう。初めてアコースティックギターを習った時の曲は「禁じられた遊び」だった。
まったくギター初心者のわたしでも、横に寝かせたギターをお琴のように指でつま弾いて曲というものが弾けたことで、おおいに感動した覚えがある。
また「禁じられた遊び」の忘れられない記憶としてもう一つ。
所さんの「笑ってコラえて~ダーツの旅~」の一場面で、田舎町の漁師のおじさんが、趣味のアコギを披露するのだが、「洋画音楽のくんずられた遊び」というシーンが頭から離れない。
「くんずられた遊び」て!!!
ジャージ姿のおじさんが、しなやかな指先で奏でてゆくさまが煌めくような映画のワンシーンのようで美しい。
あまりのギャップに鮮明に記憶に残った。
禁じられた遊びといえば、私たち夫婦の間にも「くんずられた遊び」が存在する。
というのも、とんちゃん(夫のあだ名)は重度のワーカーホリックで、寝ても覚めても仕事、仕事の人。
それゆえに夫婦間のコミュニケーションが希薄になる。
それがどれくらい希薄かというと、
「あのね、ちょっと、変わったんだけど、どこかわかる?」とわたしが訊くと
「おっ!わかるよ、服買ったんでしょ。似合うじゃんー」
調子よくいうが、
「えっと、この服は今シーズンで3周目なんだけど・・・」となる。
とんちゃんは、妻の3か月ぶりのヘアカットに気づかない不届きものであり、ひどいおしゃれオンチである。
わかっているが、3か月ぶりだよ、3か月・・・もう、納豆のパックのフィルムが手に張り付いた上に、箸でパックを貫通して、なんならタレ袋がのびて開けられずにキッチンバサミで、切り込みいれて思いっきりハサミと指について残り半分こぼしたくらいガッカリの底へつき落される。
そんな調子なので、積極的コミュニケーションを取らないと事務的な連絡しかとらない日々が永遠に続き、わたしは夫であるとんちゃんに人見知りをしてしまう。
そこで考えた。
夫婦生活を円滑に過ごすために適度にコミュニケーションを取ることにした。
♪ スキンシップを図る
まずとんちゃんのスウェットの上から一発で乳首を仕留める「お豆どこだシューティング」をする。
だいたい当てられるので、ゴルゴ13に負けない狙撃手だと自負している。
わたしのクーロマメヨメAK5960の指でロックオン。
すると、とんちゃんは、近づくムズムズをどこまでよけずに我慢できるかのお互い真剣勝負のチキンランになる。
他には、晩ごはん時のプロジェクトX田口トモロヲ風での会話。
「とんは藁包納豆の申し子とよばれた」
「とんの納豆つくりは困難をきわめた」
「納豆のかき混ぜすぎで、パックには穴が開いた」
「掻き回す箸が強すぎたのだ」
「納豆の糸が穴からひく」
「あきは、台ふきんでテーブルをふいた」
「あきは言う、泡立てすぎだ。そこまでのクオリティは求めてない」
「納豆を待っているあいだ炊き立てのご飯はさめた」
こんなどうしようもない会話とくんずられた遊びで、私たち夫婦はGWに13年目を迎える。