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出産文土器を見に行きました(ついでに金生遺跡) 〜北杜市考古資料館Part2〜
前回から間が開きましたが続きです。
出産文土器発見!
展示室の奥にありました。今回の目的の土器。
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上から見るとまぁこの地方ではよく見る顔がついている顔面把手付土器。
が正面から見ると…。
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ちなみにこの裏にもお顔が出ているので、計3つの顔が付いていることになります。
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間違いなく出産がモチーフだと思いますが、親も子も同じ顔というのが面白いですね。
女神や豊穣を願うというような宗教的な表現なのか、人間を表現したものなのかは分かりませんが、ちょっと感動すら覚える土器です。
この土器を最初に知ったのはネット上の写真だったのですが、その時にも軽く感動しました。
何というか、当時の人たちの願いみたいなものが伝わってくるというか。
ちなみにこの土器の兄弟みたいなものもありました。
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もしこれが出産前の状態を表しているのだとしたら、胴部の文様の違いから、何らかのストーリーや状況説明的なものが表現されているのかも知れません。
縄文時代は文字を使っていなかったようなので、抽象的な文様で表していたのか、もしくは具体的には表現しない決まりみたいなのもがあったのか。
などなど、頭の中の妄想が膨らんでいきます。
さて、出産文土器を舐めるように眺めた後、チビーナスを見つけました。
ちびーなす
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こちらの資料館では、一番人気なのかな?
思っていたより黒い。
このケース内。周りも個性的でした。
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ちびーなすの斜め後ろ(向かって右)は”ドッスン”を彷彿とさせる佇まい。
(ドッスン:マリオシリーズに出てくる落ちてくるキャラです。)
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ちびーなすをメインキャラクターに、戦隊モノのアニメでも作れそうな面々。
割と受けそうだと思うのは私だけでしょうか。
ところで、ちびーなすを見た時にちょっとした違和感を覚えました。
後で調べてみたら、私が写真などで事前に見ていたものは右手が欠損してる状態のものだったようです。
ドリフの「♪ババンババンバンバン♪」のポーズでようだというイメージでこの土偶を覚えていたので、出てきた違和感のようです。
素晴らしい土器たち
他にも、ここ北杜市考古資料館には、見応えのある土器群がありました。
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蛙、蛇、人体?をモチーフにした土器が目白押し。
これほどの土器がここにある事を知らずに訪れたので、驚きました。
こういう思っても見なかった素晴らしい遺物に出会えるのも、考古館巡りの楽しさですね。
紹介しているとキリが無いので、一つだけ面白いと思った土器の写真を上げておきます。
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口縁部に顔面装飾がある土器は、他の考古館含めて色々ありましたが、外向きでこんなファニーなお顔は初めて見たかもしれません。
ちなみに他の土器にもそれらしい物が。
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左上の土器と、真ん中の土器の口縁部の装飾は、さっきの顔の違った表現なのかもしれません。
そうすると、
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このような土器の把手部分も何らかの顔面表現なのかな。
サンショウウオ?
結構な長居を経て、1Fへ戻る。(こちらの考古館は縄文時代以外にも弥生や戦国時代の展示物も沢山あります。)
入館した時には気が付かなかったのですが、1Fにも土器類が展示されていました。
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名称は「ヘビ紋様装飾付土器」との事なのですが、私の目には蛇というよりサンショウウオに見える。
この辺りの土器の動物文様というと蛇やカエルが代表的ですが、実はそれ以外の動物も描かれているのかも。
これまでも、図像学や神話的な解釈の本を読み漁ってきましたが、正直納得できない部分も結構あります。
結論ありきだな、と思うことも多々。
私は所詮素人なので、これはサンショウウオだと考えておきます笑。
金生遺跡
電車の都合もあり、長坂駅へと向かいます。
そのルート上から少し逸れたくらいのところに金生遺跡があるので、ちょっと寄り道をしました。
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この遺跡、住居や石棒を中心とした配石遺構が再現されています。
名がある遺跡でも行ってみたら標識だけ、みたいなちょっと残念な遺跡も多い中、
整備されているのは地元の熱意みたいなものも感じます。
ところで、ネット上の写真には再現住居が3軒立っているものがありますが、現在は1軒だけです。
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この遺跡はロケーションが素晴らしい。
八ヶ岳、南アルプス(特に甲斐駒ヶ岳)、富士山、秩父方面の山々が一望できます。羨ましい。
よく考えることなのですが、縄文時代は山岳信仰は無かったのかな?
阿久遺跡のように蓼科山を拝していたと推測されているものや、夏至に関連すると思われる配石遺構なんかがあったり。
そういうものが土器土偶の表現にはなっていないのかな?
などなど。
次から次へと現れる妄想に心奪われながら、帰途につきました。
縄文沼はしばらく続きそうです。