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「良い作品」とは何か-FEAT CONTEST 2024を終えて-
お久しぶりです。
KUROGO株式会社代表取締役の工藤です。
以前の投稿からかなり時間が空いてしまいました。
前回お知らせで言及したクリエイターのためのプラットフォーム「FEAT」はたくさんの方々のご尽力があり順調に素晴らしいインフラになっていきそうです。
本当にありがとうございます。
さて、今回は昨年10月より開催されたコンテスト「FEAT CONTEST 2024」を終えて感じたことや気づいたことを書いていこうかなと思います。
FEAT CONTESTとは?
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FEAT CONTEST 2024は、FEATが主催する(合成音声を含む)歌モノ楽曲を対象としたコンテストです。
「楽曲」や「クリエーター同士の化学反応度合い」など様々な基準から
特別審査員/特別褒賞審査員が審査し、入賞者の方には豪華賞金や褒賞を付与させていただきました。
様々なご支援があり、おかげさまでたくさんの褒賞をご用意させていただくことができました。褒賞をいただきました企業様、レーベル様、アーティスト様には心より御礼申し上げます。
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多くのご尽力もあり、初めての開催にも関わらず、応募総数:210以上、参加クリエイター数:推定500人以上と、とても大きなイベントになりました。
代表として企画の運営をしていく中で、褒賞をいただいた方々とのお話や作品の審査を通じて色々な体験をさせていただきました。
コンテストを通じて感じたこと
このコンテストを主催して個人的に感じたことを主に3つに分けてお話ししていこうかなと思います。
コラボ前提となると、レベルが「非常に高い」
今回のコンテストでは、FEATでコラボした作品が対象でした。コラボ前提という条件が付いたことで、作品のクオリティが非常に高かった印象があります。開催する前は、このようなコンテストはある程度「この辺の人たちが獲るんだろうなぁ」的な予測がしやすいと正直思っていました。しかし、実際はどの作品も作品としてのクオリティとしては本当に横並びであったといいますか、「甲乙つけ難い」作品ばかりで、審査に非常に苦労しました。
コラボが必須となることで、個人では出せなかった世界観や音、一人だけでは気づかなかったポイントなどが補完されるため、作品としての見え方がガラッと変わったかと思います。私がFEATを作って生み出したかったムーブメントが、そこにはありました。
クリエイティブの混ざり合いは本当にすごいこと
先述した通り、コラボで個人の制作の範囲を大きく超え、新しい一面を見せてくれるような作品が多かった印象があります。自分色を残しつつも、他のメンバーの方が創り出すクリエイティブと混ざり合って、聴く人を魅了している作品ばかりでした。海外ではコラボ文化は盛んで、よく共作が行われている印象がありましたが、日本ではまだそこまで主流ではなかった背景(ボカデュオなどのコラボイベントは存在している)から考えると、国内でこういったムーブメントはかなりすごいことだと思います。こうしたイベントや文化を発展させていけば、今後FEATから世界で戦えるような、すごいものが生まれるんじゃないかとワクワクしました。
個々が持っているクリエイティブを集結させて、新しいものを生み出していく流れは、今後のこの産業のテーマであると思います。その中で、事務所やレーベルが間に立つのではなく、クリエイター同士が自由に組み合って本気で作品を作る動きを生み出せたというのは、インディペンデント業界においても微弱ながらも一歩進めることができたのではないかと自負しております。
ジャイアントキリングが起きた
今回のコンテストでは、「作品主義」を徹底的に掲げていたため、楽曲の再生数やいいね数など、外部的な要因は一切排除して審査に臨みました。
運営による初めの審査(1st STAGE)以降は、各褒賞をいただいた企業様やレーベル様、アーティスト様に完全にお任せする形で進行しました。
ランキング化などもしていなかったので、本当に「作品だけで殴り合う」ようなコンテストになったかと思います。
そんな中で、何万人もフォロワーがいるようなアーティスト様が落選し、数字的にはこれから伸びていくような新世代のアーティスト様が選ばれていたケースがありました。もちろん、多くのフォロワーがいらっしゃるアーティスト様が賞を獲得しているケースもありました。審査をする人や聴いている人を感動させることができれば、登録者や経歴は関係ないことを体現できたと思うとともに、これが当たり前であるべきだと強く感じました。
賞レースを運営する身としての大前提
これまで、個人として感じたことや思ったことを述べてきましたが、今回のコンテストを運営する身として、すなわち主催する代表として「これは大事だったな」と感じたことを書いていきたいと思います。
運営側の徹底的な目線と造詣
運営側の指針やエンターテインメントに対する造詣が強固たるものではないと、コンテストは信頼できるものにならないと強く感じました。
私は2000年代以降の洋楽+ダンスミュージック文化にルーツがあるだけでなく、エンタメを広く体験するようにしていた背景があります。また、弊社取締役はアニソン文化や同人音楽、クラブミュージックにルーツがあり、事業部長はクラブミュージックや音ゲー曲にルーツを持っていました。それだけでなく、弊社は他ジャンルにおいてもある程度の理解がありました。もちろん運営の審査メンバー全員が現役のアーティストでもあるということもありますが、つまりは楽曲を聴く上での「土台」のようなものがかなりしっかりしていたのではないかと思います。そのため、「この作品は昔のこの楽曲のオマージュなのだな…!」や「この作品はジャンルにおいてはこういった立ち位置の作品であるだろう」といったように、作品の深いところまで考察を重ねて審査するようにしていました。このような土台は、作品を応募していただき、審査する立場である上ではマストであるな…と痛感しました。
作品主義
FEATをはじめに考案した時から、様々な意見やアイデアを取り入れ、「みんなで成長していくプラットフォーム」というような形を目指して進んできました。
その中で、徹底しようとしてきたのが「作品主義」です。FEATのスカウトやサーチ機能で見ることができるように、名前欄の下にポートフォリオをすぐ確認できるようになっているかと思います。これによって、ネームバリューだけでなく、作品にすぐアクセスできるようにしております。そのほかにも、「この人は有名だからこの人に依頼しよう!」というような思考回路にせず、「この作品すごい!ぜひこの人に依頼したい!」と思っていただけるよう、様々な工夫が施されています。
この姿勢は、コンテストでも貫きました。もし運営が、有名な人ばかりが大きな賞を獲るような流れを作っていて、それに伴って受賞者の方々が大きく告知してくれたら、それはそれでサービスの認知や登録者が増えるなど、それなりにメリットは多かったと思います。しかし、そういった動きを企業が行なってしまうと、この業界がつまらなくなってしまうと思います。作品を見ずにフォロワー数で判断し、そこそこのものを作り、それが当たり前になる世界は本当につまらないと思いますし、何より新しい世代のクリエイターが育たなくなると思います。少子化が進み、クリエイター人口も国内では減っていく可能性が高い今、若くてこれから伸びゆく方達のためにも、今の世代の企業は作品主義を絶対に貫き、次世代のクリエイターの方へどんどんチャンスを作ることが大切であると思います。
「良い作品」とは何か
では、今回の経験をもとに、本題の「良い作品」とは何かについて、お話できればと思います。
良い作品=相性の良いもの
いきなり否定する形になりますが、FEATのユーザーガイドラインにも示しました通り好き嫌いはあれど作品自体に「良い/悪い」という概念は存在しないということを前提としてお話します。
(もちろん差別等を助長するものだったり、社会的逸脱性の高いものには疑義を呈しますが)
売れている作品が正解ではないし、選ばれた作品が良くて選ばれなかった作品が悪いというものではない。あるのは好みだけであると強く思います。
今回のコンテストでも、各賞に選ばれた作品は、各褒賞が提示した審査ラインと「最も相性が良かった」という見方ができます。
極端な例ですが、高度なミキシングの技術が組み込まれていて、音作りも完璧なロックの曲を作ってもヒップホップ系のコンテストやコンペに応募すればほぼ間違いなく落選するでしょう。これは落選した楽曲のクオリティが足りないというようなことではなく、シンプルに相性が悪いのです。
ここから、良い作品=「相性の良い」ものではないかという答えが生まれました。
作品=人によって見え方が変わる宝石
ここまで書いてみると、そもそも音楽含めた作品は人によって見え方が変わる宝石のようなものではないかと思います。
少し捻くれた性格の私とっては、売れる作品は作品がすごいというよりはマーケティング手段がすごいという見方をしています。そう考えると、「コンテストやコンペで落選した曲、リリースしたが伸びない曲は『出し方や見せる相手、広め方、タイミング』が悪かっただけで、作品は決して悪くない」という結論に至りました。だから、もしこのnoteをお読みのアーティスト様で、ご自分の作品を他人からダメ出しされたり、コンペに落選したり、コンテストに入選漏れした方は、自分の作品を責めないでほしいです。相性の良いリスナー様や依頼元が現れれば、全てが変わるはずです。
コンテストを通じて見えたFEAT事業の今後
FEATを起点に、接点のなかったクリエイター同士が簡単に共作できれば、違う自分を見つけることができるだけでなく、さまざまな「見せ方」を考えることができると信じています。そして今回のコンテストのような、とんでもない作品がたくさん生まれる世界になれば、日本は世界一の音楽産業になれるのではないかと思いました。
FEATに行けば「何かが必ず生まれる」ような、ワクワクする場にしたいです。モノを売りたい/買いたい=Amazonであるように、制作したい→FEATというような世界を目指していきます。
そして、今はいつ誰が跳ねるかわからない時代です。大企業やレーベルがゴリ押ししてスターダムにのし上げるような時代ではありません。
だからこそ、リスナーの方や、クリエイターに発注する企業様は、彼らが持つフォロワーなどの「数値」ではなく「作品そのもの」に注目してほしいと思います。「自分だけが知っているアーティスト」というような、「見つける」楽しさを知ってほしいです。これらのちょっとした動きが、必ずクリエイターの大きな力となり、ひいては業界全体の発展につながると信じています。
私たちも、こうした作品をどんどん紹介していきたいと思います。
今後とも、FEATを含めKUROGO株式会社を応援していただけたら幸いです。
KUROGO株式会社代表取締役
工藤 吟