【就活】新卒入社すべきなのは大手企業とベンチャー企業、どっち?
大学生は学期末試験を終えれば約2ヶ月の夏休みに突入する。
例年であれば試験終わり(下手すれば試験前)にバイトのシフトとの兼ね合いを見ながら遊びの予定をどんどんスケジュール帳に書き込む。
が、特に大学3年生の夏休みは「就活」がちらつくようになる。
6月1日にサマーインターンの情報が解禁されたのを皮切りに、いよいよ就活を他人事とは思えなくなる段階に突入する。
そして、8月に入ると多くの企業が1day、5dayといった短期間で行われるサマーインターンを本格的に実施するようになる。
この機会を最大限利用することで今後の就活での軸・指針や、自分の興味関心が何なのか確認したい学生は多いはずだ。
きっと、今日もどこかで多くの大学3年生が「カジュアルな格好でお越しください。スーツでなくて構いません」の文言に頭を悩ませ、慣れない革靴で靴擦れを作りながら炎天下を奔走しているだろう。
今回のブログは、そんな就活生なら読んで損はしない内容となっている。
※この記事は2018年8月にはてなブログで公開した記事を移管したものです。
就活生くろぎが一番悩んだのは「大手」か「ベンチャー」か問題
私も去年の今頃から就職先をどこにしようか考え始めていたのだが、そんな時にある一つの悩みにぶち当たった。
「大手とベンチャーってどっちを狙うべきなんだ?」
私は高校生の時からぼんやりと仕事にしたいこと・なりたい職業という方向性が決まっていたため、職種に関して悩むことは実はそんなになかった。
ただし、いわゆる「大手企業」に入社することを目指した方が良いのか、「ベンチャー企業」で働く選択肢も有力視した方が良いのかは、ずっとうやむやにしてきた部分だった。
大学に入学してから、日頃から将来のことを考えていたわけではなかったが「一応早稲田に通っているんだし、大手企業に勤められるならそれを目指したほうが将来安泰だろうな〜」とは思っていた。
それに則って就活の軸を決めようとすれば「ベンチャー」という選択肢は初めからアウトオブ眼中で、なんの疑いもなく「大手」を目指していたはずだ。
なんせ大学受験の時も「誰もが知っている有名な大学に通えるってカッコ良いし楽しそう」という単純な理由で早稲田を第一志望にしていたくらいだ。
誰もが知っている組織に属することによって得られる一定の肩書き、安心感、ブランド力……
おそらく私の根底には「大手」が正義という考えが少なからずあるように感じる。
では、そんな私がなぜベンチャーも視野に入れていたのか?
それは、ベンチャーで実際に働いてみると思いのほか楽しく、間違いなく成長できる環境が揃っていると実感したからだ。
長期インターンの経験でベンチャー企業も視野に入るようになった
私にとっての初のインターンはサマーインターンではなかった。時系列で並べてみると
・大学2年の4月~11月
→二次元×インテリアを手がける会社で企画とライター
・大学2年の3月~現在
→web集客コンサルを行っている会社でコンテンツエディター
・大学3年の9月~現在
→オウンドメディア支援の会社でwebライター
といった具合に、大学2年生の時から就活を終えた現在までベンチャー企業の長期インターンに参加している。
長期インターンに参加しようと思ったのは「ライターとしての実務経験を積みたかった」からだ。
文章を読んだり書くことが昔から好きで、ライターとして生計を立てていくかどうかは全く考えていなかったが、気軽にいろんな仕事に挑戦できるのは学生の特権だと考えていた。だから、ライターもやってみよっかな〜といった具合で募集を探し始めたのだ。
しかし、アルバイトではライターの募集はない。や、あることにはあるのだが、それが私の考えている「ライター」の仕事だとは全く思えなかったのだ。
一方、ベンチャーの長期インターンであれば、まさに自分が思い描くようなライターの募集が多くあった。正直、ベンチャーそのものに興味があったわけではなかったが仕事の内容に惹かれて長期インターンに参加することになった。
結果としてこの長期インターンでの経験は、自身の価値観に想像以上の影響を及ぼした。
いずれの会社も社員数が非常に少ないため、インターン生だろうとバンバン仕事を任されるし、給料をもらって仕事をする以上、”商品”として通用する記事を納品する必要があった。
社員も多くの業務を抱えているため、インターン生に対してつきっきりで指導をしてくれることもないので基本的には自力で調べ、問題を解決していく必要があった。
さらに、オウンドメディア支援の会社では記事執筆以外にも、クライアントのサイトに掲載されているコンテンツをSEO、そしてCV獲得の観点から大幅にメンテナンスするという、ほとんど知識がなく、こちらが想定していなかった業務を2ヶ月に渡って担当することもあった。
正直、キツいし割に合わないな、と思ったことは一度や二度ではなかった。
それでも今日まで継続しているのは、業務がキツい分社会に出てから通用する実力を学生のうちから培うことができるし、自分が得意だと思っていたライティング力の弱点を知り、そこを克服することで以前よりも良い文章が書けるようになったことを実感しているからだ。
人それぞれだとは思うが、私にとっては「自力で食らいついて業務をこなしていく」スタイルがぴったりだったのだと思う。
さらに、ベンチャーで働くことの魅力もインターンを通じて知ることもできた。長期インターンに参加するまで、ベンチャーに就職するメリットがあまり思い浮かばなかったし、むしろ不安要素ばかり思い浮かんでいた。
この先何十年も経営が続く安定性に欠けているのではないか、福利厚生は大手に比べれば劣ってしまうのではないか、社員数が少ないとどうしても激務になってしまうのではないか……
後ほど詳しく書くが、これらの要素は確かに完全に否定することはできない。
が、それ以上に「やる気があれば若いうちからどんどん成長することができ、多少リスキーだったとしても挑戦したいことがあればそれに挑戦できる」土壌があるのがベンチャーの特徴であり、そこがすごく魅力的だと気付いたのだ。
特に、「すぐに家庭に入って専業主婦になりたい」というよりも「自分のスキルを発揮して活躍できるような職場でバリバリ働きたい」と考えている私にとってはベンチャー企業のような環境の方が、理想的な働きができるんじゃないかと思うようになったのだ。
自分一人で答えが出ないなら「就活の先輩」に話を聞こうじゃないか
とはいえ、だ。
「インターンだから『ベンチャーもいいじゃん』って思えているだけかもしれない。新卒で入社する会社として考えるならやっぱりもう少し慎重に考えた方が良いのではないか……」
という保守的くろぎもまだ健在だった。
大学3年の6月。サマーインターン申し込みが解禁になった頃、私はひたすら大手とベンチャーを天秤にかけ、どちらを会社選びの軸にしようか悩んでいた。
「新卒入社は一回しか使えない強力なカードだから、出来るだけ大手に入った方が良い。ベンチャーはその後の転職先として考えた方が良い」
「今のご時世、大手に行ったからといって安定しているとは限らない」
「大手、ベンチャーよりも業界全体の動向の方が大事だ。斜陽産業の大手に行ったって先は知れてる」
「早稲田なら幅広い選択肢から選べるんだから自分にあった会社に行くのが一番良い」
「ベンチャーって楽しそうだけどめっちゃ大変そう」
……
このような旨のことをインターン先の上司、親、友人と様々な立場の人から言われ、ますます私は答えを導き出すことができなくなった。
結局、就職したことのない学生があれこれ心配して考えたってわからない部分はあるのだから、直感で良いと思った会社を志望しちゃっていいんじゃないかとは思いつつ、就職が人生における大きな岐路の一つであることには間違いない。
日々就活にまつわるネットの記事をいたずらに読み続け、その度にまたふりだしから考え始める……堂々巡りでしかない時間はどんどん経過していった。
そして、ある日。
このまま一人で悩んでいては答えは出ない、こうなったらプロに話を聞こう。
すでに就活・就職を経験しており、あわよくば人事としてたくさんの人を見てきた方にこの悩みをぶつければ、解決の糸口をつかむことができるのではないかと気づいたのだ。
思い立ったが吉日、私はそのようなサービスがないか検索したところ即ヒットした。それがMatcherと呼ばれるOB訪問サービスだった。
画像引用:Matcher公式サイト
このサービスを使えば自分の大学のOB・OGでなくとも気になる方にアポの希望を出すことができ、見事マッチングが成立したら実際に会ってお話出来るのだ。
このサービスの宣伝をするためにこのブログを書いているわけではないので詳しい使い方は割愛するが、就活をしていく中で誰かに相談したい!と思った時はこのようなサービスを活用するのも一つの手だろう。便利な世の中に感謝。
私はこのサービスに登録して早速相談したい人を探すことにした。
私の立場や気持ちを理解してくれそうな背景を持っている人がいいなと思い、
⑴早慶レベルの大学を卒業している人
⑵大手とベンチャーの両方を経験したことがある、もしくはいずれかを志望していたが最終的には違う道を選んだ人(大手志望だったがベンチャーにorベンチャー志望だったが大手に)
⑶人事としてたくさんの人を見てきた経験がある
の3点を満たしている方を探した。特に2点目の要素に関しては必須条件だった。やはり、両方の形態に触れたことのある人でなければ中立の視点に立った話を聞くことは難しいと考えたからだ。
しかし、これだけいくつも条件を設けたらヒットする人が少ないんじゃないか、本当に私が求めるような方と会ってお話出来るのかかなり半信半疑だったが、とある方のプロフィールで目が止まった。
慶應卒
人材開発室所属(いわゆる人事)
就活時は「超大手・超安定志向」で第一志望である某金融の内定を勝ち取ったにも関わらず、4年の夏に内定を辞退し、当時受けていた会社の中で最も規模が小さく、ベンチャーだった現在の勤務先に入社。2017年時点で勤務10年目
年間5000人以上の学生と会い、就活相談に乗っている実績あり
「大手かベンチャーで悩んでいる方、自己分析のお手伝いをします」
この人に相談するしかねえ。
あまりにもドンピシャでビビってしまった。私はこういう方からお話を伺いたかったのだ。間髪入れずにマッチング希望を送ると、ほどなくして相手がマッチング希望を承認したという通知が届いた。
マッチングが成立したらあとはチャット機能を使いスケジュール調整を行う。こちらもスムーズに決まり、ついに数日後、私は「大手VSベンチャー」問題に決着をつけることとなるのだ。
ちなみに、私が「プロに相談しよう!」と決めたのは7月末、実際に人事の方と会うことになったのは8月上旬だった。夏、真っ盛り。私の就活はこの時からようやく動き出したように思える。
「超大手・超安定志向」だったベンチャー勤務の人事に会ってきた
※記事執筆にあたり予め小嶋さんから承諾を得ています。
8月某日。私は東京駅で降り、とあるビルに向かっていた。グーグルマップの案内通りに歩くと、ものすごい超高層ビルが目の前に現れた。
そう、人事の方との対談は相手の勤務先である会社の応接室で行う約束になっていたのだ。
「面接ではないですし、気楽に就活について話す場ですので私服で結構ですよ」と言われていたので素直に私服を着てきたが、(これはあまりにも場違いではないか……)と恐縮してしまった。
事前に伝えられていた通り、待合室で待機していたのだが、この待合室もひと味違った。星空をイメージしているであろう空間で、壁も天井もめちゃくちゃキラキラしててオシャレだった。なんなんだこの会社。
しばらくすると、一人の男性が現れた。
「お待たせしました、黒木さんですね?初めまして、小嶋と申します」
ここでついに私は人事の方と対面を果たした。
今回、私の「大手VSベンチャー」問題を考えるにあたり、たくさんのヒントを与えてくれたのが主に経営コンサルティング事業を手がけるレイス株式会社のバックオフィス、人材開発室のシニアスタッフである小嶋勇輝さんだった。
ベンチャー企業の人事は目は笑っていない、胡散臭い笑顔を浮かべがちという偏見を持っているのだが、小嶋さんはそのような怪しさが一切なかった。この方相手なら落ち着いて話すことができそうだという印象を受けた。
応接室に通され、いよいよ私が聞きたいこと、知りたいことをぶつける瞬間が訪れた。
私は予め聞きたいことを考えてきていた。
⑴大手とベンチャーは働く上でどういった点が大きく違うのか
⑵元々大手を志望していたのになぜベンチャーに入社しようと決めたのか
おおまかにこの2つに絞ってお話を伺うことにした。いずれも「大手VSベンチャー」の答えを出す上でかなり有力なポイントになる。さっそく、一つ一つ聞いてみよう。
「ベンチャー」と一口に言っても成長フェーズによって全く性質が異なる
まずは 「大手とベンチャーは働く上でどういった点が大きく違うのか」について聞いてみると、これまでの話の前提を大きく崩すような言葉が小嶋さんの口から飛びでてきた。
「いじわるな質問をするんですが、そもそも大手企業との比較対象がベンチャー企業なのはどうしてですか?」
「そうですね……うーん、大手はもう会社として安定しているけど、ベンチャーはまだまだ成長途中で、数年後にどうなっているかまだ分かっていないっていう、不安定な部分があるっていうのが一番比較したくなる理由ですかね……あとは会社自体が有名か有名じゃないか、みたいな部分もちょっとあるかもしれないです」
予想外の問いかけで私はしどろもどろになってしまった。だが、確かに、このように改めて問いかけられると明確な答えは思いつかなかった。
「まず、ベンチャー企業と一口に言っても会社の成長フェーズによって安定性やビジネスモデルは大きく変わってくるんです。きっと、多くの就活生がベンチャー企業と聞いて思い浮かべるのはスタートアップの段階にいる会社のことだと思います」
そう、ベンチャー企業は設立されたばかりで新進気鋭の社員数人が毎日朝から晩まで働くような会社のことだけを指すのではない。
企業の成長フェーズは
・スタートアップ(創業期)
・成長期
・安定期
の3つに分けることができる。他にもV字回復期(業績低迷から回復するフェーズ)と呼ばれるものもあるが、ここでは割愛する。
スタートアップ:サービス認知を目指す。赤字状態が続き、資金難で倒産する会社が多い。
スタートアップの場合、最初の5年間が勝負だと言われており、常に倒産の危機と隣り合わせのような状態である。そのため、仕事とプライベートの垣根がないくらいがむしゃらに働くことになる。きっと「ベンチャーで働くのはきつそう」「経営が不安定」というイメージはここから来ているだろう。
ただし、この時期は自分たちの頑張りがそのまま結果を生み出している実感を一番得られる上に、構想していたサービスや事業が次第に形となっていく喜びが大きいため、強制されなくても自発的に一日中働いてしまうという表現の方がより正確だという。
さらに、このフェーズの会社は新卒採用を積極的に行なっていないことが多い。人員確保よりもビジネスモデルを確立し、そのサイクルを回していくことが最優先だからだ。
こだわりが強く、目の前の物事に執着して努力できる人、周囲から変わり者と言われるような人が最も活躍できるのはこのフェーズである。
成長期:軌道修正しながら事業を本格的に展開する。利益はまだ赤字or低収益。
ある程度企業や事業内容を認知されるようになり、ユーザーが増えてくるフェーズが成長期となる。ちなみに成長期に入ってしまえば倒産のリスクは大幅に下がる。
事業を成長させるために軌道修正を図っていくと同時に、人材確保と組織化が課題になる。
このフェーズではスピード感がかなり求められるので、物怖じせず周囲の人を巻き込んで挑戦する姿勢、創業者の理念に共感し、熱量持って働ける人が活躍できるだろう。
安定期:既存事業は安定し、拡大し続ける。新規事業の展開も視野に。ようやく黒字化する。
事業が継続的に成長し続けた結果、黒字を生み出すようになると会社はいよいよ安定期と呼ばれるフェーズにさしかかる。
安定期に入った会社は新規事業を展開したり、組織の管理部をさらに細分化する動きが見られるようになり、ここでようやく新卒採用を積極的に行うようになる。
ここまでくるとベンチャー企業と聞いてイメージするような規模感の会社から脱却していることが多い。いわゆるメガベンと呼ばれる会社はここに当てはまる。
このフェーズでは協調性がありチームで一つのゴールを目指すことが出来る人、コミュニケーション能力に長けている人が求められるようになる。
会社の規模や待遇が大手と同等のベンチャー企業も存在する。大手かベンチャーか、の区分は無意味
小嶋さんはこう続ける。
「ベンチャー企業って、何を以ってベンチャーと呼べるのか、っていうのが結構曖昧なんじゃないかなと思います。
例えば、スタートアップや成長期に属するベンチャー企業を大手企業と比べた時、福利厚生や待遇の面で見るとどうしても劣っているというか、まだ体制が整っていないということは確かに多いです。
でも、安定期に入ったベンチャーを見ると社員数、業績、働き方、待遇、福利厚生……一般的に大手企業と呼ばれる会社のそれと遜色がないっていうことは珍しくないです。
現に、僕の働くレイスも言ってみれば安定期に入ったベンチャー企業です。設立年数的にもベンチャーという区分をされることが多いものの、社員数、売上高、取引実績、事業領域の広さのどれを見ても、一般的にベンチャーと聞いたときに想像するものよりも、きっと遥かにしっかりしているんじゃないかなと思います。」
私は頷いた。「確かにそうですね。考えてみると、今まで私がインターンで参加していた会社はどれもスタートアップに属していました。その会社での働き方のイメージしか持っていなかったんですが、安定期に入ったベンチャーはもはや大手志望者が望むような『安定性』を兼ね備えていることが多いんですね」
「そうなんです。とはいえ、安定期では新規事業を盛んに展開していこうとする動きがよく見られるようになるので、トライアンドエラーの日々で忙しいことには変わりないですね。(笑)
ただ、社員の組織化、業務の体系化といった会社としてやっていく上での基盤や社会的信頼をすでに固めている状態なので、業務以外の雑務だったり外部との交渉も全部やらなきゃ、と一人で全て抱え込みがちなスタートアップの忙しさとは無縁になります。」
「大手かベンチャーか」ではなく「どの成長フェーズか」が重要
「……と、こんな感じで安定期に入ったベンチャー企業はその後も成長を続け、いつの日か『大手』と呼ばれる側の会社になります。こう考えると、『大手』か『ベンチャー』かという見方にはあんまり意味はないんですね。そのかわりに『どの成長フェーズに位置している会社へ入社したいか』という視点で選択した方がより自分の望む働き方だったりキャリアに合った正確な選択ができると思います」
なるほど、これは一人では絶対に気づけない考え方だった。
そもそも「大手」「ベンチャー」という区分自体が曖昧であるのだから、そこだけで会社を比較することは困難なのだ。
そうではなく、『成長フェーズのどこにその会社が位置しているのか』を知ることの方が会社の今後の展望が見えてくるため、それに従って求められる人物像や能力、任されるであろう業務の質を推し量る手がかりとなる。
自分の求める働き方や役職、業務の裁量はその会社で実現できそうか考える時に参考にしてみるといいかもしれない。
大手とベンチャーでは働いて得られるものが異なる
小嶋さんは、これは一概には言えませんが、と前置きをした上で
「大手かベンチャーか、という見方にほとんど意味はないですが、大手とベンチャーでは働いた時に得られるスキルが違うのはあると思います」
と告げた。
「得られるスキル……じゃあ、そこが大手とベンチャーで大きく異なる点になりますかね?」
「そうですね、得られるスキルの違いは要するに会社での働き方が違うことを意味するので」
大手、ベンチャーの構図に意味はないと分かってはいるがあえてその二つを「得られるスキル」という点で比べてみると下記のような傾向が見られる。
大手企業:自分に与えられた役割を確実に全うし、円滑な組織運営を支えるスキル
簡単にまとめると、大手企業で得られるスキルは「組織全体の中で与えられた役割を全うする」スキルであり、それは企業の円滑な運営、確実な現状維持に役立つものだそうだ。また、大手企業は大規模なプロジェクトに参画することが多いため、若いうちから大きな金額が動く案件を担当することもあり、自分の仕事が世の中を変えているという感覚、リアルなビジネスを知る機会が多いのも魅力の一つだそう。ただし、これはメガベンでも同じようなことが言えるだろう。
ベンチャー:指示待ちはNG。自分で考え、責任を持ってやりきるスキル
一方、ベンチャーで得られるスキルは「自ら考え、責任感を背負った上で結果を出す」スキルだ。若いうちから裁量持って案件に取り組むことが多いため、いやでも鍛えられる傾向にある。「若いから」「まだ勉強不足だから」は言い訳にならず、常に責任を持って動かないといけないためプレッシャーがかかり、人によってはかなりキツく感じるがその分独立できる実力を身につけることができる。アイディアがあればそれを提案し、挑戦したいことに取り組みやすいのもベンチャーの特徴である。保守的な経営をする傾向にある大手企業ではなかなか見られないが、V字回復期への移行を狙う大手であればこのような革新的な姿勢で攻めることもある。
新卒で入った会社に、定年退職するまで勤める時代はとうの昔に終わっている
転職が当たり前になった今、「新卒で身につけたスキルを元にどのようなキャリアを描いていくのか」というところまで就活生の段階で視野に入れておけると、ブレない会社選択を行うことができるだろう。
いうまでもないが、どちらのスキルも社会人として必要なものだ。だからこそ、新卒入社のその先にある働き方まで考えることが大事なのだ。
自分は将来どのように活躍したいのか、そのために若いうちはどんな環境で働いておきたいか、と意識するのが良いかもしれない。
大手である某金融の内定を辞退し、ベンチャーに入社したのは「一緒に働く人」を重視したから
ここで、私はずっと気になっていたことを聞いた。
「小嶋さんって、元は大手志望だったんですよね?どうして内定を辞退したんですか?」
「そうですね、プロフィールにも記載していた通り、僕は超がつくほどの大手至上主義で、就活の時も大手以外はあり得ないのスタンスで受けていました。周囲の友人があそこを受けてるから自分も受けよう、みたいなノリもありました」
やりたいことがないからとりあえず大手に入れば潰しがきく、深い意味はないが大手を目指しておいた方が安心、親が大手しか許さない、知名度のない会社に行くのは不安……
大学3年の夏頃に大手を志望してそのようなことを言っていた人はたくさんいたし、大学4年になって本選考が始まった頃ですらそのような話をいろんなところで聞いていた。当時の私も小嶋さんの話を黙って聞き続けていた。
「それで、色んな企業から内定をもらっていたんですけど、最終的には第一志望として考えていたあの赤い金融から内定をもらったんです。まぎれもない大手ですし、入社する気満々でした。で、結構ウキウキした気持ちで内定者懇親会に行ったんです。
そしたら、愕然としました。そこにいた内定者はほぼ自分と同じ大学、同じ学部の人間で……全員、同じ人間に見えたんです。
金融という業界なので多種多様な人を採ったというよりも、『いかにも』っていう人しか採用していないなっていうのが一目瞭然だったんです。
何よりも、その場にいる人全員とフィーリングが全く合わなかったんです。この人たちとこれから先ずっと働かないといけないのか、と思うとゾッとしました。その瞬間、内定辞退が頭をよぎり、就活をやり直そうと思いました」
第一志望の企業から内定を得たにも関わらず、内定辞退したのは一緒に働く人とソリが合わないと感じたから、と語る小嶋さんの目はまっすぐ私を見ていた。
「それで、結局4年の7月まで就活を続けて8月に内定承諾書を出したのかな、当時は今なんかよりもずっと規模が小さくてバリバリベンチャー!って感じだったレイスへの入社を決めました。
もうこの時には大手とかベンチャーとかそういうのではなく、そこで働いている人たちはどんな人たちなのか、というのをかなり重視していました。
就活の時ってどうしてもその時やりたい仕事とか興味のある職種を軸にして会社を選ぶ人が多いんですが、実際働いてみたらやっぱり違うことがやりたくなってすぐに転職するとか、仕事は好きでも同僚や上司との相性が悪くて長く続かなかった、なんてことはざらにあるんです。
だから、"やりたい仕事"っていう軸での選択は案外脆いんです。
でも、一緒に働く仲間に恵まれてさえいれば、仮に望んでいない業務があったとしても協力してくれる仲間の手を借りて頑張ってこなそうという気持ちが生まれるし、元からやりたかった仕事を任せてもらったなら、その会社への満足度は限りなく高いはずなんです。
会社で働いていく中で一番不満に繋がりやすいのは業務内容でも待遇でもなく、人間関係なんです。だから、会社選びは一緒に働く仲間選びだと思います。」
これは当時の私にとってかなり盲点だった。
小嶋さんの言う通り、自分がやってみたい業務ができそうな会社、という部分ばかりに重きをおいていたが、それだけでは自分にあった会社を絞り込むことはできない。
その会社の風土が自分にあっているかどうか、は就活していく中で必ず確認すべき項目の一つなのだ。
そして、会社の風土、雰囲気はそこで働いている人々のカラーによって作り上げられている。
つまり、一緒に働く人との相性が良ければその会社とも相性が良いことを意味しており、逆も然りなのだ。
この小嶋さんの話はかなり自分の中で腑に落ちた。
「一緒に働く人選び……今まであまり意識してなかったんですが、言われてみるとそれが一番大事ですね。どんなにやりたい仕事ができる会社に入社できても、尊敬できない上司だったり仕事への熱量があまりにも違う同僚がいる環境だとモチベーションを維持することは難しそうですしね」
「だから、もしこれから会社を見る機会があるなら、積極的にその会社で働く社員さんとお話してみるのが良いと思うよ。人事の人だけ見て判断するのはあんまりオススメしないけどね(笑)」
と、小嶋さんに勧められた。
「ありがとうございます。自分一人では絶対に気づけないことがたくさんあって、かなり就活の道筋が見えてきた気がします。貴重なお時間を割いていただきありがとうございます」
「いえいえ、また相談したいことがあったらいつでも連絡してくださいね」
こうして私は晴れやかな気持ちで超高層ビルから去ったのだ。
「会社の中身」をじっくり吟味して比較すべし。健闘を祈る!
さて、このOB訪問を通して得られたことを最後にまとめよう。
・「大手」か「ベンチャー」か、という考え方自体がナンセンス
・業務内容や待遇、働き方は「会社の成長フェーズ」によって決定される
・協調性か実力か。得られるスキルは両者でやや異なる
・実際に会社に入ってから一番重要なのは「一緒に働く人との人間関係」。ここを重視して会社選びをしないと思わぬ失敗を招くことも
ちなみに、私は小嶋さんと一問一答形式の自己分析を行なった結果、「業務スタイルはベンチャー傾向、待遇・福利厚生は大手傾向」というよくばり志向であることが判明した。
そのため、元から興味のあったweb業界を志望し、中でも「成長〜安定フェーズ」にあたる会社で、真面目な人が働いていそうな印象を受けた会社を第一志望にし、無事そこへの入社が決まった。ありがたい話である。
※2021年1月補足:満足のいく就活だったにも関わらず、くろぎは新卒入社した会社を10ヶ月で退職している。詳細は以下の記事を参照してほしい。
最後になるが、この記事で紹介した見解はあくまで小嶋さん、そして私個人のものであるため、全ての会社・人に当てはまるわけではない。
ただ、こんな就活の考え方、指針もあるんだなという一つの参考として役に立ててくれれば幸いである。
ここまで読んでくれたあなたが納得のいく就活ライフを送れることを陰ながら応援している。
【補足】2021年現在のくろぎの職歴とは
この記事を公開した後、くろぎはどのような社会人生活を送ってきたのか。
現在、新卒2年め、春から3年めに差し掛かるがWeb業界の片隅で元気に過ごしている。今やっている仕事の詳細は以下の記事を読んでいただくのが良いだろう。
新卒入社した会社を1年足らずで転職したことはすでに触れているが、その後も2度転職し、現在は4社めの会社に在籍している。企業規模も社員数千人単位のところから10人規模のところまで、いわゆる大手企業からスタートアップに近いベンチャーまで流浪の民のごとく渡り歩いている。
1社目:2019年4月〜2020年1月末
デジタルマーケティングを手がけるWeb制作・運用会社
Webディレクター職
2社目:2020年2月〜2020年3月
オウンドメディア支援のベンチャー企業
コンテンツディレクター職
3社目:2020年4月〜2020年11月半ば
Webマーケティング支援のベンチャー企業
コンテンツディレクター職
4社目:2020年11月〜現在
Web集客コンサルのベンチャー企業
取締役兼コンテンツディレクター職
2社め、3社めの転職理由は主に「激務による体調不良・ストレス」起因のものとなっている。特に3社めの転職に関する詳細は過去記事をどうぞ。全人類健やかに働いてほしい。
4社目に突然現れた取締役については以下の記事をどうぞ。
「ちょっと面白いじゃん」「いい暇つぶしになったわ」と思っていただけたらスキ❤️お待ちしております😘 もし「スキじゃ足りねぇ…結構好きだわ…これが恋?」ってなった時はポテトSサイズを奢るつもりでサポートをお願いします。ポテト御殿の建立費として活用します。