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魔女たちの子守唄

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囁きが聞こえてくる

誘いの声が浮遊する

竦み上がる体

救いのない夜が ふけていく


歩き始めれば、いつの間にか、森の中に紛れ込んでいた。
虫や鳥、風のざわめきが鳴り止むことのない森。

リリリン・ロロロン・ヒュルリー

それらには決して、私を歓迎している意味はない。
むしろ、異物が紛れ込んだかのような不快感を表すうめきなのかもしれない。
それとも、私への警告か? そんな善意が、この森に存在するのだろうか。

後ろを振り向けど、来た道はそこになく、前を見返しても先に進むべき道は見当たらない。
森というよりも、そこは巨大な迷宮なのかもしれない。
案内板もなければ、誘導する印もない。
道を尋ねる相手もいないのに、私は何度も何度もこっちでいいのかと誰かに問う。
答えは、風のささやきだけだ。
風はなにも教えてはくれない。

風は道を示さないが、私になにかを囁きかけてくる。
それは、ヒュルリーヒュルリーと空気を裂くような音にしか聞こえないはずなのだが、なぜか私の心の中まで吹き込んで、まどろみの世界へと誘おうとするのだ。

森の中で風を感じてはいけない。
森の中で囁きを受け入れてはいけない。
囁きを受け入れれば、私は永遠の眠りにつき、森の中の屍人として彷徨うことになるのだろう。
魔女が使役する屍。

ここは、屍たちが這い寄る森。
ただの腐った肉塊が彷徨う森。
かつて人であった、今は名もなき屍。

焦りだけが、嵩んでいく。
焦れた心が、叫んでいる。
早くこの森から抜け出せと。

しかし、森から抜け出す道は見つからない。
魔女の囁きから逃れる術を私は知らない。
ただ、哀しき屍として、森の中を永遠と這いつくばるしかないのだろうか。

風が、ヒュルリーヒュルリーと囁きかけてくる。

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我々は、どこから来たのかも分からない。
そして、どこへ行けるのかも分からない。
永遠と森の中をさまようしかない。

写真からイメージした世界を文章化するシリーズです。

写真は、ただの近所の茂みを夜に撮影したモノですが、それを赤く加工すると不気味な森の中に見えたのでこのようなイメージが出来上がりました。

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