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城崎温泉・豊岡旅行記 その3 出石編−1

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旅行3日目である。

この日は、昼に観光して夜からは演劇祭という予定だ。

さて、前日までは城崎温泉を楽しんでいたが、今日はどうしたものかと旅行に出る前に豊岡のことを色々調べてみた。現在いるのは豊岡市の中心となる地区だが、観光するところはあまりない。
観光となると、車やバスなどで大きく移動しなければならない。
玄武洞やコウノトリの郷公園、竹野の海と見どころは色々ある。
豊岡を観光できるのはこの日しかない。
迷った末に選択した場所は

出石(いずし)

だった。

出石は、「古事記」「日本書紀」にも名前の見える古い町。室町時代には守護大名・山名一族の拠点となり、但馬地方の中心として繁栄しました。山名氏が滅びた後には小出氏が領主となり、出石城の築城とともに城下町が整備されます。出石藩は五万八千石の雄藩として栄え、小出氏、松平氏、仙石氏と領主を変えながら、270年の歴史を経て明治に至りました。
但馬開発の祖神を祀る出石神社、江戸時代の出石を見守ってきた出石城跡、近畿最古の芝居小屋である出石永楽館など、史跡を巡りながら、古代から中世、近世と、さまざまな時代を行き来できるのが出石の魅力。出石の深い歴史と文化に触れながら、ゆっくりと散策をお楽しみください。

出石まちづくり公社.HPより

選んだポイントとしては、まず歴史的な街。その土地の成り立ちを知りながら散策するのは面白い。地元の歴史すら調べてみると面白かったりするからだ。
そして、車のない筆者にとっては、バスで行けることは大きい。玄武洞は駅自体があるが、調べると大きな川で駅と玄武洞が隔たれていて、橋はずっと先にある。橋を渡っていたら移動だけでかなりの時間を要するようだ。興味は湧いたものの、その利便性から今回は玄武洞を諦めた。
しかし、出石という選択肢は実に正解であった。それをこの記事で紹介していこう。

◯豊岡市内の街並み

出石に向かうその前に、ホテルを発ってバスの時間まで少し時間があったので、駅周辺を円山川に向かって散策してみた。

スナックが集合した建物
コウノトリのステンドグラス?
豊岡劇場

豊岡駅周辺は住宅地となっている。歩いた時間帯が平日午前中だったためか人気はほとんどなかった。
街の印象としては、どこにでもありそうな住宅街である。
豊岡ならではの光景は目につかなかった。
とはいえ、上記写真にあるスナックの集合体は独特な空気が見られるし、コウノトリらしきステンドグラスもまたこの土地ならではだ。


カバンストリート


豊岡の街はカバンの街でも売り出している。
豊岡はカバンの生産量が日本一だとか。

そのため、カバンを扱ったお店が並ぶストリートが街中には存在する。それがカバンストリートだ。

時間が早かったからか、残念ながら通りはほとんどの店が開いていなかった。そのため、カバンそのものはあまり見られず。残念であった。

◯バスでいざ出石へ!

さて、カバンストリートを眺めると、そのまま豊岡駅へ。駅目の前がバスロータリーとなっている。交番の目の前が乗り場だ。ここで出石をはじめとした豊岡市内の各方面に発つことができる。

豊岡駅前のバス停
画面右側の建物は交番

勘違いして出石行きを一本見逃したものの、意外と本数はあり30分程度待つとまた出石方面のバスがきた。
今度は間違えずに乗り込む。

駅から出石までは30分ちょい。最初は市内の商店街を通っているので目新しくない光景だったが、しばらくすると景観がガラリと変わる。田畑や川や遠くに山が見えてくる。
とにかく自然が広がる景観。こういう景観もまた、都心やその近郊に住んでいる人間にとっては新鮮味があり旅の醍醐味と感じられる。
地元民にとっては何が面白いのかと思うかもしれないが、旅というのは非日常を味わうものだ。都心部やその近郊の人間にとっては、田園風景は非日常なのだ。だからこそ、そんなゆったりとした景観を眺められることに喜びを感じられる。
これだけでも出石へのバスに乗り込んだことに価値はある。

◯関西最古の芝居小屋 永楽館

バスが出石へと到着すると、とりあえず近場の観光ポイントに向かう。
まず最初に訪れたのが、永楽館だ。

永楽館正面
2階席真後ろから舞台を眺める
舞台真後ろにある化粧部屋にまで
上がれる
これが舞台の下、奈落
奈落から正面入り口まで通じる
地下通路が伸びている

明治期に建設された近畿地方に現存する最古の芝居小屋
出石永楽館は、明治34年に開館し、歌舞伎をはじめ新派劇や寄席などが上演され、但馬の大衆文化の中心として大変栄えました。時代と共に映画上映が中心となり、やがてテレビの普及や娯楽の多様化などにより昭和39年に閉館しました。その後、時は流れ、往時の永楽館を懐かしむ声があがるようになり、約20年の復元に向けた活動により、平成20年に大改修なされ、44年の時を経て永楽館は蘇りました。
現在は一般公開(有料)されています。
*豊岡市指定文化財(H10.4.28指定)

永楽館公式HPより

客が全くいない芝居小屋に入るのは非常に新鮮な気持ちになる。不思議な感覚すらある。舞台設営のバイトで何度か客入り前の劇場に入ったことはあるが、全くいないというのは初めてだ。
平日昼間ということもあり、見学客が自分しかいなかったのだ。
おかげで、ゆったりと館内を眺め回り、細部をしっかりと確認できた。
いやはや、出だしから本当に当たりの出石だ。
特に気に入ったのが、やはり奈落。
奈落は舞台下にある空間。横須賀芸術劇場の奈落も見たことあるし、装置に乗って奈落から舞台に上がる経験もしたことあるが、ここはそことは違う雰囲気だ。
天井が狭く、回転させる仕掛けが空間を占拠している。そのために、圧迫感があり、特殊な空間に入り込んだ気分にさせる。地上と地下で別々の世界、言うなら、地下の異世界に迷い込んだ気分にさえさせられるのだ。巨大な舞台装置が、まるでそこの主人であり、紛れ込んだものを捕まえようかと待ち構えているようにも見える。その巨大に伸びる棒は、まさに支配者の強大な腕である。
そして、何よりも、その脇に伸びている細い地下通路がまた不気味な雰囲気を醸し出している。その先に進めばどこに通じるのかわからない。更なる恐怖が待ち受けているのではなかろうか? そんな不安感すら掻き立てる。また、それとは相反する冒険心すら掻き立てられもする。まるで、昔やったゲームの地下通路を進む感覚だ。実際は、通路を抜けると表入口脇に通じているだけなのだが。


◯豊岡市立美術館-伊藤清永記念館- ならびに 出石家老屋敷

永楽館を出ると、次に美術館と家老屋敷に向かった。同じ敷地に二つの施設がある。

出石家老屋敷前

まずは美術館の方を訪れてみる。
この日は、『渡辺おさむ お菓子の神様展Ⅱ』が催されていた。

渡辺おさむ氏作品1
渡辺おさむ氏作品2
渡辺おさむ氏作品3
渡辺おさむ氏作品4


お菓子の動物たちが住む森、お菓子の家が集まる街…現代美術作家・渡辺おさむさんは、樹脂でできた本物そっくりのお菓子で、甘くて不思議な世界観の「スイーツデコアート」を作り出します。
2013年に開催した兵庫県立円山川公苑美術館での展覧会から、豊岡市では10年ぶりの個展です。お菓子の神話と歴史をテーマにしたコーナーや、玄武洞を観光するクリームたちの旅行写真など、お菓子の神様「田道間守(たじまもり)」のふるさと・豊岡ならではの作品をお見逃しなく。

豊岡市HPより


渡辺おさむ /現代美術作家
2003年東京造形大学デザイン学科卒
スイーツデコの技術をアートに昇華させた第一人者として「東京カワイイTV」(NHK)や「徹子の部屋スペシャル」(テレビ朝日)等にもとりあげられる。
本物そっくりのカラフルで精巧なクリームやキャンディ、フルーツなどを用いた作品は国内はもとより海外でも注目を集め、中国、インドネシア、イタリア、ベルギー、トルコ、アメリカ、韓国などでも個展が開催され話題を呼ぶ。
3冊の作品集や著書が出版されたほか、大原美術館や清須市はるひ美術館など5ヶ所の美術館に作品がコレクションされている。

渡辺おさむ公式HPより

美術館は、伊藤清永の常設展と企画展の二つに分かれている。
伊藤清永は、出石出身、昭和から平成にかけて活躍した日本画家であり、代表作に「曙光」「椅子に臥る裸婦」がある。

リンク先にバーチャル美術館があり、そちらを辿れば伊藤清永の作品が見られるので、気になる方は覗いてほしい。その温かみのある色彩を堪能できる。

また、企画展では、渡辺おさむ氏の企画展が催されていた。
上記に幾つかの写真を載せたが、ご覧の通りで非常にカラフルでかわいらしい。
現代的な表現で、歴史的な街の中で、ましてや隣に家老のお屋敷が建つ中で見るその艶やかさはまさに幻想的で御伽話の中に紛れ込んだかのような錯覚を覚えた。作品自体もケーキをデコレーションするかの如く仏や猫やお城の中のディナーを作り出されている。その技術とポップな感覚には脱帽さえしてしまう。

旅先で思わぬアートに出会えてしまった。

角度によっては
平屋にも二階建てにも見える
隠されていない隠し階段がある
隠し部屋の2階
お城まつりポスター
家老(?)が屋敷を睨んでいる

美術館を出ると、すぐお隣の家老屋敷へ。

白亜の土塀と長屋門のあるこの屋敷は、高級武士(家老級)の居宅として使われたものです。出石城の内堀の近くで、江戸時代後期の上級武士の居住区であった内町通りに面して建っています。建物の外観は、平屋建に見えますが、内部には隠し階段が仕組まれており二階建です。二階は刀を使い難くするためか天井は低く造られ、屋根上への通路も存在します。これらは、襲撃に備えて造られたものと推定されています。
江戸時代における三大お家騒動の一つに挙げられる仙石騒動(https://ja.wikipedia.org/wiki/仙石騒動)の中心人物である仙石左京の屋敷跡に建っているので、「左京屋敷」とも呼ばれています。
展示物には、仙石騒動の資料をはじめ無形文化財の大名行列諸道具など出石藩に関する資料を公開しています。

但馬國出石観光協会HPより

家老級の高級武士が住んでいたと言われる屋敷。歴史的な土地なだけに、この手の施設見学は外せない。
筆者は平屋の日本家屋に住んだことなく、この手の純和風で畳部屋のみで構成されている家には住んだこともないし、友達の家にもなかった。それだけに、日本人なのにその空間が珍しくて仕方なく、新鮮な気持ちで眺めていられる。
しかも、家屋には隠し階段もあるとくれば心浮立つだろう。

展示物には大名行列に使用した道具もあり、毎年文化の日になると街中でその大名行列を再現した祭りも行われているようだ。館内にはその時のVTRも流れていた。

江戸の屋敷を堪能した筆者は、次なる目的地へと移動する。

しかし、この記事も長くなってきたので、今回はこの辺でやめておこう。
次回は出石観光の後編である。


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クロフネ3世
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