城崎温泉・豊岡旅行記 その3 出石編−1
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旅行3日目である。
この日は、昼に観光して夜からは演劇祭という予定だ。
さて、前日までは城崎温泉を楽しんでいたが、今日はどうしたものかと旅行に出る前に豊岡のことを色々調べてみた。現在いるのは豊岡市の中心となる地区だが、観光するところはあまりない。
観光となると、車やバスなどで大きく移動しなければならない。
玄武洞やコウノトリの郷公園、竹野の海と見どころは色々ある。
豊岡を観光できるのはこの日しかない。
迷った末に選択した場所は
出石(いずし)
だった。
選んだポイントとしては、まず歴史的な街。その土地の成り立ちを知りながら散策するのは面白い。地元の歴史すら調べてみると面白かったりするからだ。
そして、車のない筆者にとっては、バスで行けることは大きい。玄武洞は駅自体があるが、調べると大きな川で駅と玄武洞が隔たれていて、橋はずっと先にある。橋を渡っていたら移動だけでかなりの時間を要するようだ。興味は湧いたものの、その利便性から今回は玄武洞を諦めた。
しかし、出石という選択肢は実に正解であった。それをこの記事で紹介していこう。
◯豊岡市内の街並み
出石に向かうその前に、ホテルを発ってバスの時間まで少し時間があったので、駅周辺を円山川に向かって散策してみた。
豊岡駅周辺は住宅地となっている。歩いた時間帯が平日午前中だったためか人気はほとんどなかった。
街の印象としては、どこにでもありそうな住宅街である。
豊岡ならではの光景は目につかなかった。
とはいえ、上記写真にあるスナックの集合体は独特な空気が見られるし、コウノトリらしきステンドグラスもまたこの土地ならではだ。
豊岡の街はカバンの街でも売り出している。
豊岡はカバンの生産量が日本一だとか。
そのため、カバンを扱ったお店が並ぶストリートが街中には存在する。それがカバンストリートだ。
時間が早かったからか、残念ながら通りはほとんどの店が開いていなかった。そのため、カバンそのものはあまり見られず。残念であった。
◯バスでいざ出石へ!
さて、カバンストリートを眺めると、そのまま豊岡駅へ。駅目の前がバスロータリーとなっている。交番の目の前が乗り場だ。ここで出石をはじめとした豊岡市内の各方面に発つことができる。
勘違いして出石行きを一本見逃したものの、意外と本数はあり30分程度待つとまた出石方面のバスがきた。
今度は間違えずに乗り込む。
駅から出石までは30分ちょい。最初は市内の商店街を通っているので目新しくない光景だったが、しばらくすると景観がガラリと変わる。田畑や川や遠くに山が見えてくる。
とにかく自然が広がる景観。こういう景観もまた、都心やその近郊に住んでいる人間にとっては新鮮味があり旅の醍醐味と感じられる。
地元民にとっては何が面白いのかと思うかもしれないが、旅というのは非日常を味わうものだ。都心部やその近郊の人間にとっては、田園風景は非日常なのだ。だからこそ、そんなゆったりとした景観を眺められることに喜びを感じられる。
これだけでも出石へのバスに乗り込んだことに価値はある。
◯関西最古の芝居小屋 永楽館
バスが出石へと到着すると、とりあえず近場の観光ポイントに向かう。
まず最初に訪れたのが、永楽館だ。
客が全くいない芝居小屋に入るのは非常に新鮮な気持ちになる。不思議な感覚すらある。舞台設営のバイトで何度か客入り前の劇場に入ったことはあるが、全くいないというのは初めてだ。
平日昼間ということもあり、見学客が自分しかいなかったのだ。
おかげで、ゆったりと館内を眺め回り、細部をしっかりと確認できた。
いやはや、出だしから本当に当たりの出石だ。
特に気に入ったのが、やはり奈落。
奈落は舞台下にある空間。横須賀芸術劇場の奈落も見たことあるし、装置に乗って奈落から舞台に上がる経験もしたことあるが、ここはそことは違う雰囲気だ。
天井が狭く、回転させる仕掛けが空間を占拠している。そのために、圧迫感があり、特殊な空間に入り込んだ気分にさせる。地上と地下で別々の世界、言うなら、地下の異世界に迷い込んだ気分にさえさせられるのだ。巨大な舞台装置が、まるでそこの主人であり、紛れ込んだものを捕まえようかと待ち構えているようにも見える。その巨大に伸びる棒は、まさに支配者の強大な腕である。
そして、何よりも、その脇に伸びている細い地下通路がまた不気味な雰囲気を醸し出している。その先に進めばどこに通じるのかわからない。更なる恐怖が待ち受けているのではなかろうか? そんな不安感すら掻き立てる。また、それとは相反する冒険心すら掻き立てられもする。まるで、昔やったゲームの地下通路を進む感覚だ。実際は、通路を抜けると表入口脇に通じているだけなのだが。
◯豊岡市立美術館-伊藤清永記念館- ならびに 出石家老屋敷
永楽館を出ると、次に美術館と家老屋敷に向かった。同じ敷地に二つの施設がある。
まずは美術館の方を訪れてみる。
この日は、『渡辺おさむ お菓子の神様展Ⅱ』が催されていた。
美術館は、伊藤清永の常設展と企画展の二つに分かれている。
伊藤清永は、出石出身、昭和から平成にかけて活躍した日本画家であり、代表作に「曙光」「椅子に臥る裸婦」がある。
リンク先にバーチャル美術館があり、そちらを辿れば伊藤清永の作品が見られるので、気になる方は覗いてほしい。その温かみのある色彩を堪能できる。
また、企画展では、渡辺おさむ氏の企画展が催されていた。
上記に幾つかの写真を載せたが、ご覧の通りで非常にカラフルでかわいらしい。
現代的な表現で、歴史的な街の中で、ましてや隣に家老のお屋敷が建つ中で見るその艶やかさはまさに幻想的で御伽話の中に紛れ込んだかのような錯覚を覚えた。作品自体もケーキをデコレーションするかの如く仏や猫やお城の中のディナーを作り出されている。その技術とポップな感覚には脱帽さえしてしまう。
旅先で思わぬアートに出会えてしまった。
美術館を出ると、すぐお隣の家老屋敷へ。
家老級の高級武士が住んでいたと言われる屋敷。歴史的な土地なだけに、この手の施設見学は外せない。
筆者は平屋の日本家屋に住んだことなく、この手の純和風で畳部屋のみで構成されている家には住んだこともないし、友達の家にもなかった。それだけに、日本人なのにその空間が珍しくて仕方なく、新鮮な気持ちで眺めていられる。
しかも、家屋には隠し階段もあるとくれば心浮立つだろう。
展示物には大名行列に使用した道具もあり、毎年文化の日になると街中でその大名行列を再現した祭りも行われているようだ。館内にはその時のVTRも流れていた。
江戸の屋敷を堪能した筆者は、次なる目的地へと移動する。
しかし、この記事も長くなってきたので、今回はこの辺でやめておこう。
次回は出石観光の後編である。