TRPGシナリオ創作論 -2- テストプレイ後の感想、どう尋ねるか
はじめに
こんにちは。黒崎江治です。今回は新クトゥルフ神話TRPGのシナリオに関して、Role&Roll(新紀元社)で例年おこなわれているシナリオコンテストを念頭にしつつ、テストプレイ後の感想戦(?)について書いていきます。
2021年のシナリオコンテスト締め切りが11月10日に迫り、そろそろシナリオ本文を書きあげて、テストプレイ&ブラッシュアップ作業をしている人も多いのではないのでしょうか。
私自身は2018年と2020年のシナリオコンテストに参加し、それぞれ佳作とアイデア賞を頂きました。2020年のエントリー作である『外から訪れたもの』は改稿を経てRole&Roll Vol.203に掲載されました。
2018年の『黒い葛の家』も、そのうち紙媒体で世に出るかもしれません。運がよければ。
さて本題。身内のプレイグループでさくっと遊ぶのであれば、自作シナリオの推敲やテストプレイなんかは必要ないと思いますが、ほかの人にキーパーしてもらうことを前提にした場合、テストプレイは必須の作業となるでしょう。
私もつい先日テストプレイに参加しました。とはいえ私はあまりテストみたいなことを考えずに遊ぶので、いつも通りな感じではありますが。ただ、そこでちょっと思うところ(悪い意味ではなく)があったので、この記事を書いています。
大抵のシナリオ作者はテストプレイをしたあと、プレイヤーにこう聞くはずです。「どうでした?」「気になるところありました?」「なにか改善点とかありますか?」
テストプレイヤーとしての強い自覚を持ってセッションに臨んでいるプレイヤーは、このような質問でも充分な感想やアドバイスを授けてくれるでしょう。でもせっかくの貴重なテストプレイ。できることならもっと具体的かつ豊富なコメントをもらいたい!
具体的なコメントを貰うためには、具体的に質問をすることが必要です。「どう?」と抽象的に尋ねられた場合、批判的なコメントをするのは若干気が引けるものですが、具体的に尋ねられれば幾分か答えやすくなります。
以下で、具体的な質問のアイデアをいくつか挙げてみます。プレイヤーに問いかける言葉としてではなく、単なる観点として参考にしてもよいでしょう。
具体的なコメントを貰うための質問について、いくつかのアイデア
1)「次になにをするか困った、戸惑った部分はあったか(どこか)?」
この質問をして、プレイヤーが言及した部分は、シナリオとしての導線が明確でない(誘導が弱い)、小目的がしっかりと設定されていない可能性があります。探索者が得られる情報を増やしたり、より明確(露骨)にしたりするのがよいかもしれません。
2)「探索者たちはうまく動機を持てたか?」
探索者は基本的に謎があれば挑んでいくよう運命づけられていますが、現実的な動機が持てるに越したことはありません。金銭的な報酬、人間関係、身に降りかかる火の粉、脱出不可能な状況などがあれば、探索者たちはより積極的に動き、シナリオをぐいぐいと進めてくれるはず。
3)「盛りあがった(怖かった)部分はあったか(どこか)?」
シナリオで意図した演出がうまく効果を発揮したかを確かめる質問。もしセッションで偶発的に発生したイベントが盛りあがった、ということであれば、それをシナリオに取り込んでしまうのもひとつです。盛りあがりや恐怖は、緊張感と言い換えてもよいでしょう。
4)「事件の全体像を理解(納得)できたか? 真相を察したのはどの時点か?」
探索者が「結局どういうことだったんだ……」というもやっと感を残してセッションを終えるのか(あとあとのネタバレはすると思いますが)、「こういうことだったのか……!」と戦慄しつつクライマックスに突入するのか。言い換えると、怪異譚(怪談)っぽさを追求するのか、ミステリーっぽさを追求するのか。作者はうまく情報の量や解像度を見直しましょう。個人的には、真相を類推することはできるが実際は分からない、ぐらいが好みです。
真相や全体像への納得感は高いほどよいと思います。納得感が高いというのはつまり、脚本としてきちんと成立し、考察にも耐えうる、ということを意味します。
あとは、プレイヤーがどの時点で真相に辿り着くかも、探索中に出る情報をいじることで調整可能です。熟練者はちょっとした情報から登場する神話生物を類推したりするので、ミスリードするとか、あまり直接的ではないひねった情報で攪乱してみると、あとで結構感心してくれます。例えば、「テケリ・リ! という鳴き声が聞こえた」という露骨な証言を、「ホイッスル/甲高い鳥の鳴き声に似た音が聞こえた」に変えてみるとか。
5)「(特定の)NPCにどのような印象を持ったか?」
NPC(ノンプレイヤーキャラクター)への態度はシナリオの方向性に少なからず影響を及ぼします。味方NPCは探索者たちから信頼を得られたか? 黒幕はあまりに早く疑われていないか? 場合によっては、属性や外見情報をがらっと変える必要があるかもしれません。もちろん、敵でも味方でもない(探索者たちの行動によって変わる)NPCが居てもよいと思います。
6)「これをやったらどうなる? と思った部分はあるか?」
プレイヤーが探索者に取らせることを考えたが、結果としては取らせなかった行動を尋ねる質問。実際のセッションでは、シナリオ作者が想定した通りの展開になったとしても、少しの行動の違いで展開が大きく変わっていたかもしれません。「その行動を取られていたら大変だったな……」というものがあった場合は、くどくならない範囲で、その対策なり方針なりをシナリオに盛り込むべきでしょう。
上記6つの質問はただのアイデアなので、こういう聞き方もあるよ、と参考にする程度でよいと思います。もっと大事なのは下記。
アドバイスに振り回されすぎない
プレイヤーも人間なので、アドバイスが的を射ていることもあれば、ズレていることもあります。わざわざ言うまでもないとは思いますが、作者はすべてのアドバイスをシナリオに反映させる必要はありません。たとえ腑に落ちるアドバイスであっても、シナリオに反映されると損なわれるものがあるときは、慎重になりましょう。
また色々なアドバイスを同時に取り入れると、シナリオの一貫性・整合性が保てなくなるときがあります。部分部分では的確なアドバイスでも、それらを取り入れた結果シナリオ全体がよいものになるかどうかは分かりません。ブラッシュアップの最終段階に再度見直しましょう。
うるせえ! 俺のシナリオをくらえ!
ここまで書いたのは割と一般的な意味でよいシナリオを作るための方策です。なのでノンホモジナイズドな自分の趣味なり性癖なりを表明することが大事で、それ以外は大事でないというときは、全部無視しても問題ないと思います。あとは狭い界隈の好みに合わせる場合とか。
そんな感じです。シナリオ作り頑張りましょう。私も頑張ります。
以下は宣伝です。
クトゥルフ神話をベースにした小説。興味がある方はぜひどうぞ。
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