TRPGシナリオ創作論 -6- よいNPCとはどんなものか
はじめに
こんにちは。黒崎江治です。最近公開した自作シナリオがプレイされていないか気になりすぎて、エゴサの鬼と化しています。
今回はNPCについて書きたいと思います。私はキャラクター造形が苦手&物語のプロットに重点を置くので、シナリオに登場するNPCは薄味になってしまうんですが、そういう部分への自戒も込めて。
表題の「よいNPC」。必ずしも「魅力的なNPC」ではないのと、プレイヤーの体験に資するNPC、という観点で語りたかったので、こういう言葉になりました。
プレイヤーの体験に資するってどういうこと?
要はプレイヤーが楽しむってことなんですが、私はその中でも、プレイヤーキャラクターが、そのキャラクターらしく振舞えたということが重要なのではないかと思ってます。
そのキャラクターらしい選択をした、そのキャラクターらしいセリフを言った。そういう行動のきっかけを作ることのできるNPCが、プレイヤーの体験に資するNPCなのだと考えます。
具体的なNPC像
プレイヤーキャラクターを持ちあげるようなNPC
「あんたがあの有名な……!」みたいなのはあまりに露骨ですが、プレイヤーキャラクターを慕うお助けNPCとか、冒険者たちに個人的な好意から便宜を図ってくれるギルドの受付嬢とか。
もっとさりげない方法として、やられること前提の嚙ませ犬的なNPCとか、手助けなしには破滅してしまいそうなNPCとかを出してもいいですね。プレイヤーキャラクターが状況に介入することで、自己効力感(この場合、環境や他者に影響を与えられるという感覚)を得られる。こうすることで、間接的にプレイヤーキャラクターを持ちあげることに繋がります。
個性的な(でも押しつけがましくない)NPC
特殊なスキルなり専門知識なりを持っている癖の強いNPC、精神的に倒錯していたり、強力な執着を持っているNPC、相反する考えや価値観の間で揺れ動いているNPC、等々。色々な個性の付け方があると思いますが、重要なのは、それによってプレイヤーキャラクターの反応を引き出すこと。
「私はこうだ!」と主張するNPCに対して、プレイヤーキャラクターはなんらかの反応を示すはずです。それが自らの信念や思想の発露かもしれませんし、怒りや嫌悪といった感情かもしれませんし、もっと直接的な行動かもしれません。この場合、NPCの言動がユニークで、物語のテーマと響きあっているものであるほどよい。「私はカレーが好きです」と言わせてみたところであんまり意味がないですよね。
ここで注意したいのが小見出しの()の中で、「こういう反応をしてください」というシナリオ/GMの圧が強いと、プレイヤーキャラクターが、そのキャラクターらしく振舞えた、という体験にはならない可能性が高い。
可哀そうな少女とかは割と取り扱い注意な部類かなと思います。ただ悲劇のヒロインというのは物語を作るうえでとても便利なので、さじ加減が難しいところですね。
個人的な体験ですが、同情すべき元凶・敵役に対してプレイヤーキャラクターがドライな反応を取ったときにGMが不機嫌になっちゃう、みたいな場ことがあって、これも圧が強い例ですね。プレイヤーはGMに忖度して望まれる行動を取るんですけど、それによって満足感が高まるかというと……。
私がドライな反応をしたことで、激怒したGMに卓を追い出されたこともありました。ほかのプレイヤーも大概ドライでしたけど、結局どうなったんだろうかあの卓は。懐かしい思い出。
手前味噌ですが、敵役の扱いについてはこちらの記事も参考にしてください。
継続的な人間関係が築けるNPC
プレイヤーキャラクターたちと継続的に顔を合わせるNPC。その場でのやりとりだけではなくて、人間関係の対象となるNPCです。ルールブックやサプリメントに載ってるキャラクターを出すケースもあれば、オリジナルで作るケースもあると思います。
何度も顔を合わせると愛着が湧くというのが人情。そういうNPCに対しては、プレイヤーキャラクターも自分らしく振舞えることでしょう。
継続的に登場するNPCに対しては、GMとしても愛着が湧くと思います。しかし注意すべきなのは、そんなNPCがプレイヤーキャラクターを食わないようにすることです。もちろんこれは役割的な意味で。物理的に食おうとするキャラクターはむしろ面白いかもしれない。
仮に、GMの愛を一身に受けたNPCがプレイヤーキャラクターの活躍機会を奪いつつ、肯定的な反応を求めてくるし、シナリオ的にもそうしないといけない、みたいなセッションがあったらどうなるか。プレイヤーもそのNPCを愛せればまだいいですが、愛せなければ端的に言って地獄。気をつけたいですね。
おわりに&宣伝
プレイヤーキャラクターを持ちあげる
個性的(でも押しつけがましくない)
人間関係が築ける(継続的に登場する)
という3点を「よいNPC」の具体像として挙げました。これ以外にも方法はあると思いますし、そもそもNPCがシナリオに占めるウェイトが大きくない場合もあるので、必ずこうしなければいけない、というものではないことをご承知おきください。
以下新作シナリオと小説の宣伝。
2月22日に公開したばかりの新クトゥルフ神話TRPGシナリオ『頭は最後まで残しておけ』 1921年のマサチューセッツ州が舞台。原作の雰囲気を味わえるはずです。無料。
こちらはクトゥルフ神話の世界観を下敷きにした小説。