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四日市市立図書館を、現在の場所で守り、育て、慈しもう

00.ご挨拶

皆さん、こんにちは。四日市市に住む 黒田 健一 と申します。60歳代男性、ITは不慣れですが、よろしくお願いいたします。

01.図書館にかける四日市市長の思い

四日市市立図書館は、明治41年(1908年)10月1日に開館し、間もなく開館116周年を迎える、歴史ある図書館です。
篤志家の寄付や、各時代にあっての行政のテコ入れ等により、日本国憲法風に言うなら、四日市市立図書館は四日市市や日本の図書館界において「名誉ある地位」を占めてきました。

それゆえ、図書館に対して熱くなる市長が現れます。田中俊行 前四日市市長と、森智広 現四日市市長です。
田中俊行 前四日市市長は、四日市市役所の敷地内に図書館を移転する計画を打ち上げ、それに対して当時市議会議員であった森智広 現四日市市長は、反対の弁舌を振るいます。結局、この計画は実現しませんでした。
森智広氏が市議会議員から市長になり、近鉄四日市駅前のスターアイランド(近鉄系の商業ビル)跡に図書館を移転する計画を打ち上げました。地権者である近鉄との協議が進み、各階の構成図や外観パースまで出来上がったのですが、建築費の高騰と着工時期の未定により、今年5月、この計画を断念しました。
田中俊行 前四日市市長と、森智広 現四日市市長の図書館にかける熱い思いは理解します。ですが、なぜいきなり図書館移転なのでしょうか。

02.まずはリフォーム・増築、次に建て替え、移転はよほどの場合のみ

皆さんも自宅が古くなったら、まずはリフォームや増築を考えると思います。リフォームや増築では不十分なら、建て替えを考えるでしょう。
引っ越しを選ぶ時は、家が駅から遠い、敷地が狭い、周りの環境が悪い、転勤、親や子との同居を始める等に限られます。

現在の図書館は、昭和48年(1973年)に建ちました。建築後51年経ちます。
鉄筋コンクリート造の頑丈な建物なので、建て替えはまだ不要ですが、リフォームは必要でしょう。
来館者用エレベータがない、開架書棚や閲覧席が狭いなど、改善してほしい点はあります。しかし、いきなり移転ではなく、まずはリフォーム・増築・建て替えが検討されるべきです。

しかし、四日市市立図書館の職員に聞くと、「リフォームも増築も建て替えも検討していません。移転あるのみです。」という答え。
個人のお屋敷を個人のお金でどうにかするなら、引越どうぞご自由にです。
でも公共施設は、私達が納めた税金で運営されているのです。
いくら図書館に入れ込んでいるからと言って、リフォームも増築も建て替えもすっ飛ばして、一番費用がかかる「移転だ、移転!!!」は変です。
税金は市長のポケットマネーではありません。安価な問題解決方法を、なぜ採用しないのでしょうか

03.図書館移転先は民有地

田中俊行 前四日市市長の、四日市市役所の敷地内への図書館移転計画は、市有地から市有地への移転なので、まだ良かった。
しかし、森智広 現四日市市長の、近鉄四日市駅前への図書館移転計画は、近鉄所有地への移転。
近鉄が建てるビルの中に図書館が入居する計画だったから、市内最高の地価の借地代や、駅前で見栄を張る高価な建物の借家代を払い続けなきゃいけない。しかも近鉄の建物なので、建築後70年経ったら出て行かねばならない。
四日市市政には様々な政策課題があって、各政策分野でこれからどんどんお金が必要となってくるのに、図書館に関して長期間、高い費用を払い続ける決断をしてよいのか、子ども達にどう説明し、子ども達にどう負担をお願いしていくのか、という思いがありました。
そうしたら今度は、市役所北側の民有地に図書館を移転すると、森智広 現四日市市長は言い出したのです。
民有地を買収したり借地したりするそうですが、おいおい、ちょっと待ってくださいよ、です。

04.現図書館が建つ市有地のポテンシャル

四日市市に今までに無かったものを造るなら、民有地の買収も時には必要でしょう。また道路のように、その民有地をどうしても買収しなければ、9割完成した道路が開通しないのであれば、拝み倒してでも民有地を買収すべきでしょう。

しかし現図書館は、すでに十分な広さの市有地に建っています。
市有地の敷地面積は 4,738.01㎡。都市計画で指定された容積率は 300%なので、14,214.03㎡の床面積まで建築可能。現図書館の床面積は 4,147.42㎡なので、現在の3倍もの規模の図書館を建てることができます。

十分な規模の公共施設を建てることができる、無料の市有地がありながら、なぜ高いお金を出して新しい民有地を買うのですか?
家に十分なおもちゃがあるのに、新しいおもちゃを買って!とねだる子どもと同じではありませんか。
何千円のおもちゃならまだしも、何十億円という民有地です。
床を転げ回って泣きわめいても、そんな贅沢、認めるわけにはいきません。
私達、市民が苦労して納めたお金です。無駄遣いしないでください。

05.四日市市民の中心に位置する現図書館

言うまでもなく、四日市市立図書館はすべての四日市市民のための図書館であり、すべての四日市市民が利用しやすい場所に建てる必要があります。
四日市市民一人ひとりが同じ体重であると仮定した場合、四日市市の人口重心は生桑町神田に位置します。(下図の緑丸)

四日市市の人口重心と図書館の位置 (図は「図書館概要」の掲載図に加筆)

現図書館は、人口重心に近い場所に建っています。(上図の赤丸)
これは、図書館へ徒歩や車で来館する場合、人口重心に近い現図書館は、市民の移動距離の合計が最小に近いことを意味します。

図書館移転候補地は、人口重心から遠くなります。(上図の青丸)
その結果、図書館利用者の移動距離の合計は、現在より長くなります。
諏訪町に図書館が移転することで、図書館が近くなる市民もいるでしょう。
しかし、すべての四日市市民を集計したら、図書館への移動距離は長くなるのです。

図書館利用者の目線で考えたら、この図書館移転は、不便になる利用者の方が多いのです。
それでも、民有地をわざわざ買収して移転するのですか。
図書館利用者にとって、この移転は、どんなメリットがあるのですか。

06.歩くことを推奨している四日市市

駅から遠いから移転するのでしょうか? 
近鉄四日市駅から現図書館まで徒歩12分。この途中には、近鉄四日市駅から徒歩3分の四日市市立博物館や、徒歩10分の四日市市立文化会館もあり、徒歩12分の場所に図書館だけがポツンとあるのではありません。
博物館や文化会館を横目に見ながら、帰りに寄ろうかなと思いつつ、図書館まで歩いて行けるのです。まったく退屈しません。

しかも四日市市は、健康情報冊子「ARUKU」を発行したり、近鉄四日市駅からJR四日市駅までの中央通りを大改造して、歩いて回遊する都市:ウォーカブルシティを目指しています。
近鉄四日市駅からJR四日市駅までは、徒歩15分。
「15分くらい歩こう」と呼び掛けて大掛かりな工事も行っている四日市市が、なぜ、近鉄四日市駅から徒歩12分の現図書館を、駅から遠いことを理由に移転するのでしょうか。

07.歩く時間は変わらない移転候補地

しかも、諏訪町民有地の新図書館候補地は、四日市市が歩くことを推奨している中央通りを歩くと、近鉄四日市駅から徒歩12分。
現図書館と変わらない所要時間。

「近鉄四日市駅から徒歩12分の無料の市有地に建つ現図書館を、近鉄四日市駅から徒歩12分の新しい民有地に移転します。民有地は買収したり賃貸借します。」

駅からの所要時間は変わらないのに、市有地から民有地へ移転することで、本来不要な土地買収費・土地賃貸費・建物補償費等が必要になる、理解不能な図書館移転計画です。
「駅からの所要時間は同じなのに、コストの高い土地へわざわざ移転する、不思議な珍政策」として、全国から視察に来るかもしれません。

08.周りに飲食店が充実している現図書館

周りの環境が悪いから移転するのでしょうか?
現図書館の南側に隣接して、コンビニから改装された飲食店や、名物の定食屋があります。もう少し南には、マクドナルドやコンビニが新たに移転してきました。
そのため、食べる場所には困らず、昼食を挟んで一日、図書館で過ごすこともできます。単身者や学生等は、夜もこの界隈で食べそうです。

だからと言って、騒がしいわけではありません。
近鉄湯の山線が横を走っていますが、図書館の中では音は聞こえません。
せっかくなので、図書館前の近鉄湯の山線に駅を造れば、図書館だけでなく市立四日市病院の利用者も乗降が見込めて、良いのではないでしょうか。

この場所に図書館が建ってから51年経ちますが、環境は悪くなっていません。むしろ、図書館の存在を前提として街が成熟してきて、図書館に長時間滞在しやすくなりました。滞在型図書館の実現は、周辺環境も大事です。

09.まずは現在の図書館をリフォーム・増築しよう

現在の市有地は図書館に適しています。今後も図書館として利用し続けるべきです。
まずは現図書館をリフォーム・増築しましょう。来館者用エレベータを造り、開架書棚や閲覧席を広げましょう。
図書館ホームページに掲載された案内図や利用者が見られる範囲の図書館建物を見る限り、以下のリフォームが可能と考えます。

エレベータ増築の提案箇所

図書館建物北側面に、1階~3階まで床から立ち上がる大きな窓が並んでいる箇所があります。(上記写真)
この個所には柱や耐力壁は入っていないため、建具を取り外して、エレベータを増築できます。(提案図面に赤色でEVと書いた箇所)
そして2階のほぼ使われていない視聴覚ホールや、開架書棚である郷土作家コーナーを、他の作家の本も配架して、言語や文学に関する本が並ぶ開架書棚や閲覧室にリフォームします。[日本十進分類表の、8:言語、9:文学 に該当する本を並べる。]

この場所には現在でも図書館職員が常駐していますので、視聴覚ホールや郷土作家コーナーを開架書棚や閲覧室にリフォームして貸出業務が増えても、職員数は増やさなくてよいはずです。

増築するエレベータは、リフォームする2階の開架書棚・閲覧室や、3階の従前からある学習室・スナックコーナー(飲食可)等に直結するため、多くの来館者の利用が見込まれ、費用対効果は大きいと考えます。

1階:エレベータ増設提案
2階:エレベータ増設提案、開架書架・閲覧室への改装提案
3階:エレベータ増設提案

10.数十年後には、現在の敷地で図書館を建て替えよう

諏訪公園に建つ「こどもの家」は、旧図書館です。
昭和4年(1929年)に建築された鉄筋コンクリート造のこの建物は、間もなく建築後100年を迎えます。建ってから100年近く経つこの建物を、四日市市は大切に守り、使い続けているのです。
そうであれば、建築後51年経った現在の図書館の建物も、メンテナンスをしっかり行えば、あと50年使い続けることができるはずです。

それくらい現在の建物を大切に使ってほしいと、私は思っています。
ただ、リフォームや増築では対応しきれない状態になるかもしれません。
その時には、現在の敷地で図書館を建て替えましょう。

11.遷宮方式により、建て替え期間中も開館できる

「図書館を現在地で建て替えると、工事期間中に閉館することになり、利用者に迷惑がかかるから、図書館を移転しないといけない。」という説明がされることがあります。
これは大切な政策判断を誤らせる、誤った説明です。
建て替え期間中でも図書館は開館できます。それが「遷宮方式」です。

現在の図書館の西隣には面積 2,283㎡の久保田公園(市有地)があります。
図書館と久保田公園の敷地を一体的に活用して、遷宮方式を実行します。
数十年後に、久保田公園に新図書館を建て、現図書館を取り壊した跡に新しい久保田公園を造る。建て替え後、さらに数十年後、現在からカウントすると百年以上のちの建て替えでは、逆を行って敷地を入れ替える。
このような遷宮方式を繰り返すことで、建て替え工事期間中も図書館を開館し続けることができます。
小中学校では、校舎建て替えの際に、校舎と運動場を入れ替える遷宮方式が広く行われています。それを図書館にも応用するのです。

現在の図書館と久保田公園
久保田公園に新図書館A(現図書館とほぼ同規模)を建設
現図書館を取り壊した跡に、新図書館Bと駐車場・久保田公園を建設

上記図でおわかりいただけるように、「移転しないと図書館を長期間、閉館することになる。」という説明は間違っています。
工夫次第で、工事期間中も図書館を開館し続けることができるのです。
公園に隣接した図書館であることを最大限に活かして、工事期間中に閉館せずに、図書館を建て替えましょう。

12.都市計画公園は動かせる

この提案に対して「久保田公園は都市計画決定された公園だから、位置を変更できない。」という反論も予想されます。
これは間違いです。都市計画決定は変更できます。
近鉄名古屋線の霞ヶ浦駅の西側には、羽津公園という都市計画決定された公園がありました。しかし現在はありません。都市計画を変更して、過去に決定した公園を無くしたのです。
この変更に比べれば、久保田公園の位置を動かして、隣接場所にほぼ同面積の公園を確保することは、都市の環境を悪化させるものではないため、都市計画を変更することができます。
市民が素人だと思って、「都市計画で決められているから変更できない。」と、もっともらしいことを言って、市民からの前向きな提案を葬り去ることは、本当にやめてほしいと思います。

13.現図書館は中心市街地に建っている

さらに「現図書館は中心市街地ではない。」という、市街地の実態を無視した説明が存在します。
現図書館は市道堀木日永線に面して西側に建っていますが、「市道堀木日永線より東側が中心市街地であり、市道堀木日永線より西側は中心市街地ではない。よって、現図書館は中心市街地ではなく、図書館を中心市街地の中へ移転する必要がある。」と四日市市は説明しています。

図書館の本来の役割は、生涯学習や学校教育です。中心市街地境界線の西側に建っているから、生涯学習や学校教育の役割を果たせないのでしょうか。
市道堀木日永線の道路幅は16mです。20m東の道向かいに建っていたら、中心市街地境界線の内側なので、図書館を移転する必要はないのでしょうか。
失礼ですが、大の大人がなんて意味のない議論をしているのかと呆れます。

そんなに中心市街地にこだわりたいなら、中心市街地境界線をあと70m西へずらして、現在の図書館も中心市街地の範囲に入れるべきです。
中心市街地は都市計画と同じで、一度決めたら永久に変更しないものではなく、市街地の変化に応じて区域指定を変えていくべきものです。
現在の図書館周辺は飲食店が増えつつあります。中心拠点駅から徒歩12分の便利な場所に位置し、飲食店が増えています。しかも遠方からの集客力がある飲食店が立地しており、中心市街地としての要件を十分満たしています。

四日市市は、図書館が建ち飲食店が増えている市道堀木日永線の西側は中心市街地から除外する一方で、飲食店がほとんど無い国道23号線沿いや納屋運河等は中心市街地に含めており、中心市街地の範囲指定が市街地の実態と合っていないことは明らかです。
実態と合っていない中心市街地の範囲を持ち出して、「現在の図書館は中心市街地ではない。」と言い張るのは、あまりにも滑稽です。
市街地の実態に合わせて、現図書館も中心市街地の範囲に組み込み、現在地での図書館のリフォーム・増築・建て替えも、中心市街地活性化に寄与する政策として位置づけるべきです

14.まとめ ~地方自治法に立ち返ろう~

四日市市立図書館は、以前は時代の最先端を走る図書館でしたが、現在では同格都市の図書館の後塵を拝しています。至急、改善が必要です。
しかし、「改善が必要だから図書館移転が必要だ。」という論理の飛躍を、田中俊行 前四日市市長と、森智広 現四日市市長が行ったために、結局、図書館が改善されないまま、何十年と経ってしまいました。

これは、四日市市の図書館にとって、大変な不幸です。
リフォームや増築や建て替えをすっ飛ばして、いきなり移転という高いハードルを掲げて二転三転したために、現実の図書館は何も改善されず、問題を抱えたまま凍結されてしまったのです。
そのしわ寄せは、図書館利用者が被っています。

現在の図書館は、すべての四日市市民にとって移動距離が一番短くなる便利な場所にあり、実質的に中心市街地に建っているのですから、現在の敷地でリフォームや増築を行い、それでも足らない場合、隣接する久保田公園と一体で建て替えを行うべきです。
諏訪町で新たな民有地を買収することに比べたら、実に安上がりで、確実で、地に足のついた政策ではないでしょうか。

地方自治法 第2条 第14項
地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。

図書館利用者が求めてもいないのに、駅からの距離がほぼ同じ場所の民有地を買収等して、市有地から図書館を移転させる。
このことは、「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求めた地方自治法の趣旨に反しています。
民有地を新たに買収するのではなく、駅からの所要時間が同じである現在の市有地を活用すべきです。

四日市市立図書館を改善するために何が必要なのか、多くの皆様にお考えいただければ幸いです。
長文、失礼いたしました。

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