ノルウェー政府年金基金、日本の上場企業の半数弱に投資
来週には四季報の夏号が発売されますが、過去2号ぐらいで特に気になってきたのはノルウェー政府年金基金を大株主上位10位に持つ日本企業が多いことです。同基金の公開情報を基に日本株投資の現状について確認してみました。
ノルウェー政府年金基金は運用資産総額では日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に次いで公的年金としては世界で2位の規模を誇っています。資産別投資額の割合は2017年末時点では株式66.6%、債券30.8%、不動産2.6%と過半は株式が占めます。大規模な公的年金で株式への投資割合が多いのだから、多くの日本企業の大株主となっていても不思議はないと思われるかも知れません。しかし国別の保有株式時価総額割合をみると1位は米国で全体の36.0%を占める一方、日本は英国に次ぐ3位で9.1%、すなわち米国株投資の約4分の1程度の投資額に過ぎません。しかし国別保有銘柄数でみると、日本株は1,507銘柄と米国の1,946銘柄に次ぐ2位となっています。東京証券取引所の上場企業数が約3,600社であることを考慮すると、その半数弱に同基金が投資していることになります。
一方、同基金はESG投資の実践でも著名です。時価総額上位かつ、それぞれのESG要因で高リスクと判断される企業に対してのみですが、児童の権利、水使用、気候変動等で好取組の企業を選定、投資しています。もちろん全ての投資対象に対してESG投資を適用しているわけではないので、取組が不十分だと感じるかもしれません。しかし世界的な大企業1社による不祥事による社会的影響は中小企業のそれよりはるかに大きいことを考慮すれば、合理性が認められます。
ただし大企業以外でも保有銘柄をみてみると、いわゆるESGのテーマに沿うものが多く見受けられます。企業の発行済総株式数に対する同基金の保有割合でみた日本企業の上位100社は1)電気自動車・車両軽量化、2)AI/IoT、3)安心・安全、4)金融サービスの多様化、5)公正な市場、6)ヘルスケア、7)再生可能エネルギー、8)省エネルギー、9)省資源、10)省力化等のテーマでほとんどの銘柄を分類できます。
その資産規模から同基金の今後の動向が気になるところですが、ESG要因を何らかの形で投資行動に反映させていく姿勢は継続することが期待されます。