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読書録 2023の夏

ここ最近読んだ本の記録をつける。

自身の備忘録としての側面と、多くの人が興味を引くきっかけになってくれればの思いもある。
私の性格上、一般的なモノから一部偏ったもの(厨二病の成れの果てと思っていただければ)まであるが、この記録がみなさんの読書の幅を広げる一助となれば面白いと思う。


1.怪談徒然草 加門七海/著

あらすじの頭で ー 平家がまだピチピチしていて、とてもよろしゅうございました ー などと書ける作家は、おそらく彼女しかいないだろう。
そして、私はこの文言でがっつり心を掴まれた次第。
おそらく、これで興味を惹かれる方は、この話を楽しめるだろう。
界隈では有名な著者が繰り広げる、夏の夜長に是非、お供にしてほしい短編集。

2.猫怪々 加門七海/著

間違いなく、猫好きによる猫好きの本。
一点違うとすれば、それが加門七海さんの拾われた猫だったということ。
猫白血病に関しては、猫エイズと同じく、拾い猫をした人々には大変身近な問題だ。縁あって出会ったのだから、自分ができることなら助けたい。その思いにつき動いていく話。ただ、その方法が一般とはちょっと異なっているだけのこと。

3.大江山幻想紀行 加門七海/著

この一冊に関しては、作者殿の癖のある言葉遣いに慣れなかった。
だが、これくらいの気風きっぷで居らねば、日々の苦難に打ち勝つのも難しいだろうことも伺える。
内容の方は、鬼や龍への解釈、そして鬼車アゲハ蝶というキーワードがとても興味深く、面白くもあった。

4.生きるぼくら 原田マハ/著

白い、梅干しの握り飯が食べたくなる。
作品を通して感じたあたたかい想いから、自分で行動を起こす力を分けてもらえる。昔、学校で読んだ国語の物語を読んでいるような、安定した心地良さがある作品だ。
ただ、登場してくる若者たちの言葉遣いが少々…。若者言葉とはいえ、みんながみんなそうではないと思うのだが。

5.星がひとつ、ほしいとの祈り 原田マハ/著

苦手だ。
登場人物の女性たちが、苦手だ。
キャリアウーマン。報われない恋を続ける女性たち。
私自身がそういった生き方をしてこなかったから、彼女たちへの共感が難しかったのだと思う。身勝手に感じてしまう描写が多く感じられた。もう少し、歳を重ねたら違うのかもしれない。
「キネマの神様」然り、「本日はお日柄もよく」然り。原田さんの女性は、彼女の経験を生かし描かれているのだろうと思う。

6.池上彰と考える「死とは」とは何だろう 池上彰/著

曖昧な死。という事象、運命は後付けである。という考えが新鮮だった。
著者の博識さに感服しつつ、その著数のため、重複する内容も垣間見える。
それがいけないとは、思わない。むしろ、池上さんが読者に伝えたい、知ってほしいことなのだと思う。
ここで書かれる幽霊の話。人間は未知が怖いのであって、それが既知であれば恐怖の対象では無くなるのだと私は常々思う。さて、「死」とは私にとって何だろうか。

7.捜し物屋まやま1 木原音瀬/著

木原音瀬さんの兼ねてより気になっていた本。
愉快な仲間たちと解決していく、ちょっと不思議な事件簿なのだが、テンポよく読ませる力があり、流石だと思う。一方で、良くも悪くも人を選ぶ木原節がちらほらと伺える。ファンとしては嬉しくもあり。
個人的には、人物描写に気になったところがあったが、尺やライトノベルだという事を考えればそんなものかも知れない。
一話では、先に紹介した原田マハさんの「生きるぼくら」の主人公を思い出すキャラクターが出てくる。みんなそれぞれの葛藤を抱きながら、頑張って生きているなと思う。

8.平山夢名 恐怖大全 平山夢名/著

著者のDinerが好きで手に取った。元となったであろう見聞も何点かありそうだ。
このシリーズは、人を驚かせたがる幽霊とすぐに失神する人物が多いので、ホラーでも比較的安心して読める。
先日、面白いことに、人からこの本の話ととてもよく似たものを聞いた。この本が元となったというより、ここで書かれていた見聞の“怪”が今も続いているのだろうなという感じだ。不思議なことはあるものだ。

一点、
会社様に、もっと校閲を頑張っていただきたい。
秋田県→秋田犬や、ですます調とである調が混ざっていたりで、気になってしまう。折角、恐怖大全と銘打っているのだから、その雰囲気を一瞬で溶かす、誤字誤植は勿体無い。

9.その昔、N市では 加門七海/著

ドイツ文学に親しむ機会があまりなかったので、面白かった。どの物語も現実が入り混じった奇妙な世界が繰り広げられる。どれも絶妙な匙加減で作られた作品だ。あともうひと押しでもすれば、メルヘンに転じてしまいかねない所で踏みとどまっている。かといえ、SFでもならない。
強いて言うのならば、白昼夢を見たような作品だった。

10.聖書がわかれば世界が見える 池上彰/著

新約聖書を開くと、まずマタイによる福音書のイエスの系図から始まる。これがとっつきにくく、あまり読まなかったのだが、この本の解説は大変わかりやすい。
そも、旧約と新約の違いも理解していなかった身なので、断片的に得ていた知識のなぜ?が解消された。
同じ神を信仰している他宗教との関わりや、歴史や政治に関わる宗教といった観点を一冊で学べるのはとても良かった。
池上さんの本はどれも、合間にコメントが挟まるため、目の前で講談を聞いている気持ちになる。それも、学生に返ったようで面白いのだ。

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