【読むミニドラマ】ヨシコトヨヒコ その2
第2話「その胸の痛みは」
「先生ここがわかんないんですけど」
授業の後で講師室に俺を訪ねた女子高生がいた。
俺は塾講師だ。主に看護学校進学コースを担当している。
「ん?どこだ?」
これはヨシコと出逢った頃の話。
質問に答えた後で少しくだけた話をした。
多感な女子高生ゆえ、恋の悩みがあるようだ。俺はただただ聞いてやった。
「ありがとうございます。聞いてもらって楽になりました」
その一言で十分だ。
「で、先生は恋の悩みとかないんですか?聞きますけど」
悩み。ああ…。
数日前にパンを取り合いになった女が離れない。パン1つでムキになりやがって。
腹が立つのに忘れられない。モヤモヤする。
何でだろう。これは恋、なのか?
「その女のこと考えるとこの辺が痛いんだよ」
この辺、と指差す。
…先生、そこは胃だと思います。
悪い女に引っかかってストレスなんじゃないですか…?
心の中で女子高生は呟いた。