【読むミニドラマ】ヨシコトヨヒコ その8
第8話「ヨシコの撹乱」
風邪をひいた。酷いやつだ。
インフルエンザの検査もしたけど陰性。
鼻に何かツッコまれて辛かったのに損した気分。職場が職場なので一週間の自宅安静を余儀なくされた。
「まだ熱高いな」
トヨヒコが額と首筋に触れる。ついでに脈もとる。
「冷やすか」
氷枕だけでなく両脇にタオルで巻いた保冷剤を挟んでくれる。
冷たいけど気持ちいい。3点クーリングというらしい。
「何か食えそう?とりあえず脱水はまずいから飲んどけ」
経口補水液のドリンクとゼリーを見せてくれる。
「ゼリーがいい…」
「じゃあ少し体起こしな。むせるから」
私の背中に手を添えてゆっくり起こしてくれる。
彼は看護師だ。今は塾講師だけど。
たまにバイトしてるから現役と言ってもいいのかも。
喉をゼリーが流れていく。
少しだけ冷たくしてある。キンキンに冷やすとその刺激で吐き気を催すからとトヨヒコがこうしたのだ。
「おうちに看護師さんがいるのって頼もしいね」
か細い声で呟く。
「頼れ頼れ。今はヨシコだけの看護師だからな。大サービス」
安心して眠くなってきた。
枕元でトヨヒコが自作の子守唄を歌ってくれる。へんな歌。