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【曲からショート】DOG'S LIFE

今朝もバタバタと出かけて行った。

あのカーディガン、昨日昼寝に使ったから毛だらけだと思うんだけど。ちゃんとブラシで払ったのかな。

出かけるときは僕の額にキスをくれる。軽く。それから手を振ってドアから出て行くんだ。


僕はアトラスと呼ばれている。ここに来てどれくらいなのかな。時間の数え方はよくわからない。

一緒に暮らしているのはマユだ。お母さんがそう呼んでた。

ここにはマユとお母さんとお父さんとおじいさんが住んでいる。

マユは毎日同じ時間に出かけて、バラバラの時間に帰ってくる。僕と比べると不規則な生活だ。

この前外に繋がれてる時、こっそり首輪を抜けた。頭をブンブン振ってたら外れたんだ。怒られるからそーっと、脚を忍ばせて裏の河原に行ってみた。

マユがよく連れてってくれる河原。何もないけど草がたくさんあって、風が気持ちいいとこ。昼寝したかったけど怒られるから戻った。首輪が外れた僕を見たお母さんに結局怒られたな。だって自分じゃ付けられない。


マユは毎日楽しそうだ。

この前は四角い紙切れをヒラヒラ僕に見せびらかして来た。遊んでるのかと思って噛みちぎったらすごーく怒られた。半泣きになったので近づいてほっぺた舐めたら

「大丈夫。端っこだけだから使えるはず」

とか言って頭を撫でてくれた。結構気分屋だ。笑ったり泣いたり怒ったり忙しいんだ。


みんなよくしてくれるけど僕がいちばん好きなのはマユだ。だから一緒に眠る。寝相が悪いからたまに蹴飛ばされるけど慣れた。

マユの体はあたたかい。ほわほわした気持ちになる。マユは僕の気持ちに気づいてるのかな。


「犬は気楽でいいよね」

マユはそんなことを僕に言う。気楽なもんか。結構忙しいんだよ。

マユより早く起きて、ほっぺた何度もつついて起こして、ごはん食べて、朝はお母さんと散歩に行って、少し昼寝してマユが帰ってくるのを待つ。

バラバラの時間に帰ってくるマユをおかえりって出迎えて、マユの気が向いたら夜の散歩に出かける。月のきれいな夜はあの河原でしばらく過ごすんだ。

ごはんは待てないからマユより先に食べちゃうけどマユが家で食べるときは足元でじっとする。ごはんをのぞき込むと怒られる。


今日は何時に帰ってくるのかな。

マユの部屋の窓からは外が見える。マユが角を曲がって歩いてくるのが見えることもある。

早く帰って来ないかな。

僕はマユの笑顔が大好きだ。

おかえりって何度も言ってあげたい。思いきり、しっぽを振ってさ。 



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