見出し画像

「ほわっとちやんと黒ガトちゃん」

「今日は誰が連れて帰ってくれると思う?」

黒ガトちゃんは唇を尖らせながら聞いてきた。

ここはお店の中。私達はひそひそとお喋りする。

「この時間だと学校帰りのあの子かな」

あの子はチョコが好き。だから黒ガトちゃんを選ぶはず。

私も香りなら自信があるんだけどな。

ふんわりバター。きっと幸せな気分になると思うんだけど。


「でも続けては来ないかも」

そっぽを向いた黒ガトちゃんは寂しそうに呟いた。

「なんかダイエットの話してたし」


私達は待つことしかできない。

精一杯のオシャレをして籠の中で待っている。ドアベルが鳴って、誰かが選んでくれるのを心待ちにしているのだけど。

選ばれない日もあるんだよね。

「ほわっとちゃんはさ」

黒ガトちゃんがこっちを向いた。

「寂しくならない?」

大きな黒い瞳が揺れている。


「平気。黒ガトちゃんが一緒だから」

隣に並んだ私達は、最強だからね。(367文字)


マスク文庫のコンペ参加作品です。

商品説明を読んだだけで良い香りが!

どんな味わいなのか気になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?