そこは静かでみちている〜美術館さんぽ8/25〜
「茶の湯の陶磁器 "景色"を愛でる」三井記念美術館
平日ひとりでふらりと出かけるのが好きだ。 もとの仕事が平日休みだったせいもあるかもしれない。
好きなときに行きたい場所へ。
今週も美術館を訪れた。
リニューアル後、初めてかもしれない。
日本橋室町。
三井本館の7階にある美術館。
千疋屋やマンダリンホテルも入っている高級感漂う建物。
1階から直通エレベーターに乗り、入館した。
外観は変わらないが、高度LED照明技術を取り入れ「ムラのない滑らかなグラデーションの光」を実現したらしい。
私はここの展示室が好きだ。
特に展示室1は、進行方向縦にケースが配置されている。
まるで観音開きの、見えないドアが次々開くようにして作品が現れる。
ケースの周りをぐるりと見ることが出来るので、表も裏もくまなく鑑賞。
お屋敷の一部屋を贅沢に使っているイメージ。
通路はかなり広く取ってあり、ひしめき合うことがない。
今回の展示は茶の湯の陶磁器。
茶道経験もない私には縁のない世界なのだけど。
歳を重ねたせいなのか…ここ数年やきものに惹かれています。
今年もいくつか展覧会に足を運んでいる。
うつわには何も入っていない。
空っぽなんだけど、眺めていると何かが満ちてくる感じがする。
仏像を見ているときと似ているかもしれない。
タイトルにある「景色」とは。
釉薬の変化や、器の姿に感じた印象のことだという。
炎に焼かれて出来る、偶然の為せる技。
狙ったわけではない。
作者が予想もしていなかった完成形になることもある。
偶然のかたちなのだ。
作品には「銘」も付けられる。
作品を自然の風物や現象になぞらえたものだ。雨や雪などが挙げられる。
和歌に因んだものは「歌銘」と呼ばれる。
百人一首が添えられた作品も展示されていた。
くわしくないけど、好みのうつわがいくつか。
ゴツゴツしたもの。
粉引茶碗や黒くてどっしりしたもの。
これを残雪や雨雲に見立てたんだな…と頷きながら見入る。
作品がそうさせるのか皆、黙って見つめている。前から横から斜めから。
心のなかできっと見立てている。
自分だけの「銘」を。
展示室は全部で7つ。
茶碗や花器のほかに、小さいサイズの香合のコーナーも。
炭の中に入れるお香をしまう器のなのだけど、形が可愛らしい。
小鳥や獅子の動物はもちろん、ふきのとうを模したものや、根太(おでき!)まで。
「わたしの芸術劇場」で片桐さんが鑑賞した《志野重餅香合》もちゃんとあった。
確かに餅…。
意外とユーモアに溢れている。
質感や色、奥深い器の世界に1時間近く浸っていた私。
先人が大事に箱にしまって、たまに取り出して眺めてニヤニヤする気持ち…が少しだけ分かった気がした。
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