ふたたび開ける玉手箱〜美術館さんぽ 8/12・9/9〜
「特別展 日本美術をひも解く 皇室、美の玉手箱」東京藝術大学大学美術館
会期中に展示替えがあり、
両方とも見たくて2回足を運んだ。
前期 狩野永徳《唐獅子図屏風》
後期 伊藤若冲《動植綵絵》
8月は並ばずに入れたものの、
9月は会期終了も迫っているとあり長蛇の列! 若冲人気も思い知る。
2006「若冲と江戸絵画」東京国立博物館
2016「生誕300年記念 若冲」東京都美術館
いずれもすごかったもの。
特に2016年は行列が長すぎて日にちを改めたほど。リベンジ当日は開館2時間以上前に列に並んだ(徹夜組もいたとかいないとか…)。
8月に貰った出品目録を9月にも持参。
心に残った作品にチェックを入れているが、
Wチェックがついたのがこちら。
《菊蒔絵螺鈿棚》
明治天皇のご裁可のもと、制作されたもの。
デザインを東京美術学校(現・東京藝術大学)の学生が手掛けた。
いわば宮内庁と藝大のコラボ作品。
目に馴染むきらびやかさには品がある。
菊の花と小鳥の総柄。
裏側も見ることができるので、展示ケースを一周した。細やかさに圧倒される。
この作品が展示されている「序章・美の玉手箱を開けましょう」から始まる4章構成。
2章に《小野道風像》がある。
彼は平安時代に字が巧みと評された「三跡」の一人。
片膝を立てて前屈み、口は半開き。
正座して背筋を伸ばして、ではないんだな。
こんなスタイルで筆を持っていたのかな…と想像を膨らませながら彼の書《屏風土代》に戻ると味わい深い。
石川光明《古代鷹狩置物》
まさに鷹を空へ放とうとしている瞬間。
身を低くして構える鷹の姿が美しい。
展示フロアは3階と地下2階に分かれている。
地下の「生き物わくわく」
ここに長居した。
だって動物だらけ!たまらないフロアだ。
《羽箒と子犬》は手放しでかわいい。
羽箒にじゃれつく子犬のあどけない表情は悶絶レベル。
山口素絢《朝顔狗子図》も「犬ころ」「ころころ」と子犬のかわいさ全開。
犬派なので、ついつい犬びいきで見てしまう…。
高橋由一《鮭》は安定の存在感。
作品から鮭の匂いが漂ってきそう。
この章は一番チェックがついていて、動物好きにはたまらない。
なじみのある動物たちの競演だ。
現代のように何枚も写真を撮り、それを参考にして…という方法はない。
ひたすら対象を見つめて、写生を重ねて、生み出されたもの。
特徴や質感をとらえた観察力の鋭さが作品にあらわれている。
《唐獅子図屏風》
右隻 狩野永徳(祖父)
左隻 狩野常信(孫)
眼力、波打つようなたてがみ、大迫力だ。
左右の獅子を見比べる楽しみもある。
《動植綵絵》伊藤若冲
本展では30幅のうち10幅を展示。
相国寺から皇室に献上されたものだ。
10年の歳月をかけ、生命の喜びを伝えようと描かれたという。
表現・構図ともに、隅々まで見逃したくない作品。
「裏彩色(うらさいじき)」という技法が使われた。
裏面に施した色が、表面に和らいで見える効果。中国絵画にも使用されている。
これによって色彩の幅が広がるそうだ。
たとえば鶏の羽根。
同じ色を使っているのに部分的に見え方が違い、質感の変化が生まれるようだった。
美術館を出て、右に行くと上野駅。
なんかお散歩気分になったので左に行ってみる。
検索したら徒歩15分ほどだったので、
地図アプリを眺めつつ、ぶらぶらと。
たいやきを買ってから、近くのお米屋さんでおにぎりを買い、境内で緑を眺めつつランチにした。
そこから谷中ぎんざまで更に歩く。
お土産に谷中メンチも買いたくて。
数年ぶりの谷根千さんぽ。
お店もだいぶ変わっていた。
メンチとたいやきをお土産にして、帰りは西日暮里駅から電車に乗る。
2度も玉手箱を開けられるなんて、贅沢な経験だった。
先人たちが紡いできた美の文化。
また出会えるといい。
心とお腹をいっぱいにした夏の収穫だった。