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【詩】原初の故郷

ゆらぐ水面が

ゆっくりと遠くなっていく。

濃紺の海底から

数えきれない程の手が伸びてきて

優しく私を誘う。

終わりなき眠り

源への帰省

自我からの解放。

そこへいけば私は

私でない私に

還ることができる。

深いまっくらの底から

瞳のない目で

私を優しくみつめてくる

人間たちの母。

海藻がおだやかにゆらぎ

魚たちが舞い

潮がゆったりとうねる。

体の中の空気が

すべて二酸化炭素に変換され

息ができなくなる。

海の底からは

暗闇の母。

心の奥からは

原初への誘い。

このまま我を任せよう

終わりなき眠り

始まりなき旅に。



そこにはみんながいた。

お盆の烈しい陽光の元

チリチリと熱せられた

心地よい砂浜での目覚め。

冷え切った体を

空から

地から

暖めてくれる。

私は

もう少しでたどりつけた。

…母が泣いている…

光の終わる場所へ

まっくらの底へ。

…父が微笑んでいる…


闇の底から

瞳なき目で

優しくみつめてきた

女王。

今は、さようなら。

またいつか会えるときまで

私は

私の世界を生きる。

私を求めて

そして

手放すために。

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